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日本とこんなに違う!シリコンバレー流・理系に強い子どもの育て方【後編】

日本とこんなに違う!シリコンバレー流・理系に強い子どもの育て方【後編】

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日本とこんなに違う!シリコンバレー流・理系に強い子どもの育て方【前編】

「不完全であったとしても、いち早くマーケットに出すこと」。シリコンバレーで圧倒されるのは、テクノロジーを活用したプロダクトやサービスが驚くほどのスピードでトライアルとして市場に登場し、少々粗削りであっても市場が動いていくこと。最近では、スピーカー型の電子秘書『Amazon Echo(アマゾンエコー)』などが該当するでしょうか。

実は、教育にも同じことが当てはまります。つまり、新たな試みを「失敗」ではなくて「トライアル」として捉え、まずは手を動かしてみるところからはじめる、挑戦を促していく土壌があります。そして、できあがったプロダクトや成果物を家族や友人などと共有(シェア)し、フィードバックを通じて自己肯定感を高め、次なる挑戦への意欲を掻きたてる仕組みがあります。

それでは、実際の教育現場ではどのようなトライアルがあり、どのようにシェアされ、それがどう社会へとつながっているのでしょうか。日本とは大きく異なるSTEM教育の内容をお届けした前編に続き、現場からレポートします。

大きく失敗しよう!試行(トライ)と共有(シェア)のフィロソフィー

『MAKE BIG MISTAKES(大きく失敗しよう)』

シリコンバレー流・理系に強い子どもの育て方・02

ここは全米40カ所でテクノロジー系サマープログラムを展開する『Steve & Kate’s camp』の教室の一角。目に飛び込んできたのは、段ボールの衝立(ついたて)に書かれている大きな文字でした。

このスクールでは、小学校などの教室を貸し切り、夏休みの間、プログラムを展開しています。各教室は段ボールの衝立で仕切られ、『IN KIDS WE TRUST(子どもたちの可能性を信じる)』など、スクールの哲学を感じさせるさまざまなメッセージが書かれていました。

そう、アメリカのスクールやプログラムの根底に流れているのは「試行(トライ)」と「共有(シェア)」のフィロソフィー。自らが興味を持ったことに対して、自らの頭で考え、行動し、わからないなりに手を動かしながら、プロトタイプ(試作品)を作る。そして、作った作品や行動した結果を周りにいる家族や友人などにシェアし、認められる。そのプロセスを経るからこそ、自信が生まれ、次の発見や開発につながるという考え方です。

『Steve & Kate’s camp』では、2017年のサマープログラムの目玉企画として、このプロセスを仕組み化。プログラムに参加した子どもたちがデジタル編集した映画作品などをデータベースに保存し、友人や家族に共有(シェア)したりできるデジタル・クリエイティブ・プラットフォームを構築しました。このプラットフォームを通じて、不特定多数の人々から、オンライン上で称賛され、「承認」される機会を提供しています。

大人の期待などはわきに置いて、自らの興味と情熱の赴くままに没頭し、何かを作りあげ、発信していくこと。このプロセスこそが、子どもたちの可能性や理系脳を大きく育む大切な機会となるというのが『Steve & Kate’s camp』で感じたフィロソフィーでした。

中学生チームが企業にプレゼンテーション!環境プロダクト・コンテスト

続いて、こちらは中学校1年生(7th grade)の授業から。「環境にやさしいことをするために自分が何をできるか?」をお題に、子どもたちが1カ月かけてリサーチし、提案としてまとめます。

チーム対抗となっているこちらの授業。最後は企業に向けたプレゼンテーションを行い、No.1が決まります。判定するのは、学校の周辺企業から派遣されてきた現役社員たち。3名ずつ審査員として参加し、開発された作品のプレゼンテーションを聞いて「自分が買いたいか」どうか、などさまざまな観点から評点をつけます。

今回、見事No.1に輝いたのは、リュックサックに太陽光電池のモジュールが埋め込んであるチームの作品でした。自転車などに乗る際に、背中で太陽光を感知できるので、通学・通勤の合間で太陽光発電を使って携帯電話の充電をするなど、さまざまな使い方ができます。便利さと環境への配慮を兼ね備えたアイデアです。

シリコンバレー流・理系に強い子どもの育て方・03

まるで、スタンフォード大学のMBAコースに参加しているような感覚に陥りますが、これは中学校の授業です。審査員もプレゼンを聞くのに真剣そのもの。なお、No.1となったグループの開発アイデアは子どもたちからもらうこともできるそうです。「自分たちのアイデアが実現するかもしれない」。そんな期待感が、子どもたちの可能性を後押しします。

地域の人々や企業を巻き込みながら、社会を変革していく人材を育成

シリコンバレーで見聞きした、地域の施設や地域の人々、企業を巻き込み、子どもたちが試行錯誤していくプロセス。これらは、子どもたちの知的好奇心をあらゆる場所で刺激すると同時に、未来に果敢に挑戦し、自発的に社会を変革していく人材を送り出す、重要な役割を果たしていました。

子どもたちに理系教育をと意気込むと、ついプログラミング教室や科学実験教室などに目が行きがちです。しかし、子どもたちが可能性を信じてトライ&シェアを繰り返し、自信を育むことができる環境をどう整えたらよいのか?そんな視点が加わってこそ、真に理系に強い子どもを育む道が切り拓かれるのかもしれません。

著者プロフィール

世界32カ国に在住の150名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2016年11月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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