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日本の20年先を行く!シンガポールのSTEM教育とは?【前編】理数教育を重視してきたシンガポールの国家戦略!

日本の20年先を行く!シンガポールのSTEM教育とは?【前編】理数教育を重視してきたシンガポールの国家戦略!

1965年の独立後、高い経済成長を遂げたシンガポール。その急成長を支えたのが、国を挙げての理数教育です。近年は、体験学習をベースに問題解決力を育むSTEM教育(Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字を取った新しい理数教育)にもいちはやく取り組んでいます。

「日本の20年先を行く」とも言われるシンガポールの理数教育&STEM教育について、アジア圏を中心に活動するSTEM教育のプロフェッショナル・石原正雄さんと、シンガポールにおけるパートナー・ステムワイズ社のクリスさんにお話をうかがってみました!

石原正雄(いしはら・まさお)
米国・アジア圏を中心に、ブロック等を使ったハンズオンによるSTEM教育、LEGOシリアスプレイによる社会人研修などを展開する教育のプロフェッショナル。
米国タフツ大学のものづくり教育研究機関CEEO(Center for Engineering Education and Outreach)アドバイザリー(2012−2015年)。国際基督教大学、米国ボストン大学大学院卒。
Kris Tay(クリス・テイ)
シンガポールのSTEM教育専門企業STEMwise(ステムワイズ)の設立メンバー。シンガポール国内やASEAN圏内の学校やアフタースクール向けのSTEM教育導入のための支援、コンサルティングを専門としている。
国立シンガポール大学卒。

 

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国家戦略として理数教育を重視してきたシンガポール

「教育立国」として知られるシンガポールは、1965年の独立以降、一貫して理数教育や技術的スキルの向上を重視してきました。その背景には、もともと国土が小さく、人口も資源も限られている、という事情があります。

つまり、シンガポールにとっては「人材こそが最大の資源」であり、政府もそのような考えに基づき、国家戦略として「教育」に力を入れているのです。

シンガポールでは国家予算のおよそ18%(2015年度)が教育関連セクターに充てられています。国防費(約19%)とほぼ同じ規模の予算を投入するあたり、政府の教育に対する本気度が伝わってきますよね。

ちなみに日本の教育関連予算(文教及び科学振興費)の割合は全体の6%弱です。

こうした国を挙げての教育政策は、確実に国民の学力アップに貢献しています。例えば、15歳児の学習到達度を測るOECDの国際的な調査PISA(Programme for International Student Assessment)で、シンガポールは常にトップランクに位置。2012年の調査では、数学的リテラシーが2位、読解力、科学リテラシーでも3位にランクインしています。

STEM教育プログラムを全ての中学校で実施!?

そんなシンガポールの理数教育をさらに後押ししているのが、近年日本でも話題のSTEM教育です。今シンガポールでは、日本の中等教育にあたるセカンダリースクール全校でSTEMプログラムを実施(義務教育化)する動きが広まっています。

ちなみに、シンガポールでは一部のインターナショナル・スクール等を除き、プライマリー(小学校)とセカンダリー(中学校)はほぼ全て公立です。公立校とはいえ、言語は母語と英語を中心としたバイリンガル教育が徹底されていて、教育レベルは非常に高いです。

子どもたちはプライマリーに6年間通った後、学力レベルごとに進路を振り分けられ、各レベルに適したセカンダリーに進みます。通う年数は4~5年間で、学校によって異なります。

要するに、国民全員がそれぞれの能力に応じて学力や技術的スキルを伸ばせる教育システムになっているわけです。

シンガポールでは、数学が小学1年、サイエンス(理科)が小学3年からはじまります。小学校高学年からは、音楽や体育のように数学も理科も専門教員から学ぶそうです。

ちなみに、クリスさんによれば、シンガポールもかつては「座学」が中心だったそうですが、今は問題解決力を養う「ハンズオン」(体験学習)が重視されているそうです。

その背景には、知識詰め込み型の教育による学力偏重主義への反省があるといわれています。単に学力が高いだけでは、これからの時代を生き抜いていくのは難しい。そう考えたシンガポール政府は、日々変化する現代社会に適応できる「21世紀型の人材」を育成するため、ハンズオンをベースとした多様な学びの場の普及に取り組んでいるのです。

 

いかがでしたか? 前編では、シンガポールが理数教育に力を入れる理由とその具体的な方針についてお伝えしました。
後編では、いよいよシンガポールの STEM 教育の最新動向についてご紹介します。お楽しみに!

▼後編はこちら
日本の20年先を行く! シンガポールのSTEM教育とは?【後編】シンガポールのSTEM教育の実状

著者プロフィール

ライター/親子留学アドバイザー。インタビューを中心に雑誌、Web、書籍等で活躍後、フィリピン・セブ島へ移住。2012〜2015年まで3年間、親子留学を経験。現在はライター業の傍ら、早期英語教育プログラムの開発・研究にも携わる。明治大学サービス創新研究所・客員研究員。

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