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子育て

自分の過ちや失敗を「人のせい」にする子どもの心理と対応法

自分の過ちや失敗を「人のせい」にする子どもの心理と対応法

「おもちゃを片づけようとしたんだけど、弟がもっと遊びたそうだったから片づけなかった」
「宿題をしようと思ったら、急にお友達が来てできなかった」

など、何かと「人のせい」にする子どもがいます。そのような場合、親としては悩んだり不安を感じたりすることでしょう。どうして人のせいにするのでしょうか?その心理と対応法について説明します。

子どもが「人のせい」にする主な心理

1、自分を守る気持ちが強い

「自分を守りたい」という保身の気持ちは誰にでもあるものです。親が厳しく叱りすぎたり、感情を露わにして怒鳴ったりすると、当然保身する気持ちが強くなり、自分を守るため、人のせいにすることがあります。

2、人の評価を気にする気持ちが強い

親や先生、また周りの友達から自分はどう思われているか、特に気にする子どもがいます。

日頃「いい子」と言われている子どもは、「いい子でなければ、親に認められない」「先生に褒められない」などの不安から、常にいい子でいなければならないと思い、叱られることや注意される状況になると、人のせいにすることがあるでしょう。

3、立場に対しての責任感が過度に強い

第一子、クラス委員長など特別な立場に、過度な責任を感じている子どもがいます。「私はお姉ちゃんだから」「自分はクラス委員長だから」と自分の置かれている立場に、プライドや過度な責任を感じ、自分に非があることを認められず、人のせいにしようとする場合があります。

子どもが「人のせい」にするのを改善する対応策

その1 事実だけを言って、促したい行動を一緒に行う

子どもが、人のせいにするのは、そうせざるを得ない叱り方をしているからとも言えます。

叱ったり注意する時、事実だけを告げ、次に促したい行動を親も一緒にしてみましょう。

例えば部屋におもちゃが散らかっている場合、「どうしておもちゃを片づけていないの!早く片づけなさい!」ではなく「お部屋におもちゃが散らかっているね。今から一緒に片づけよう!」

宿題が出来ていない場合は、「宿題がまだ出来ていないね。お母さんが見てあげるから、すぐに取りかかろう」

このように言葉をかければ、人のせいにする返答はないでしょう。そして最初は一緒に片づけたり、宿題を見てあげたりと次の行動を手伝ってあげてください。そうすることによって、叱ったり注意したりする原因となる行動も改善されていくでしょう。

その2 日頃の子どもにかける言葉を振り返ってみましょう

また子どもが人のせいにしたり、何かと責任を転嫁することが多い場合は、日頃の接し方や、親自身の言葉を振り返ってみてください。

・些細なことで、厳しすぎる叱り方をしていませんか?
・「宿題をしたあなたはエライ」と結果を褒めていませんか?
・置かれた立場に責任を感じる言葉を言い過ぎていませんか?

これらはすべて子どもを追い詰めている言動です。日頃からこのような言動が多いと、子どもは叱られたり注意されると「親に信用されていない」「親に嫌われる」と不安になり、それを認めようとしなくなります。

どのような時でも、受容してもらえると感じる日頃の親子関係を築いておくことで、子どもは失敗や過ちを指摘された時でも、それを素直に認めることができ、人のせいにすることは改善されるでしょう。

子どもが「人のせい」にした時、やってはいけないNG言動

よくないのが、人のせいにした子どもを更に厳しく叱る事です。

「どうして、あなたはいつも人のせいにするの!あなたが悪いんでしょ!」「人のせいにするあなたは卑怯よ」など、子どもは親からのもっと強烈な叱責を受けることで、気持ちは萎縮し、自分に自信が持てなくなります。

そして「どうせワタシは、何を言っても叱られる」「いつもボクばかり悪く思われる」と自己肯定感も低くなり、自主性や積極性も低下し、親子の間に溝が生じたりし、子育てが更に難しくなってくる恐れがあります。

「人のせい」にした時の言葉のかけ方

では、子どもが「人のせい」にした時、親はどのように声をかければよいのでしょうか。

例えば「弟がもっと遊びたそうだったから」と言った場合は、「そうなのね」と一旦は受け止め「夕食前になったらおもちゃを片づけることを弟にも教えてあげてね」と、弟を指導する立場になるように声をかけましょう。

また「宿題をしようと思っていたら、友達が来てできなかった」と言った場合は、「そうだったのね」「お友達は宿題済ませてきたのしから? 今度、いつ宿題をしているのか聞いてみるといいね」と声をかけるといいでしょう。

ポイントは、「人のせい」にしたことに深く触れないことです。子どもが明らかに責任を転嫁していることや、ウソを言っていることが分かっていても、その白黒はっきりさせることが問題解決につながるわけではないからです。

目的は子どもが「人のせい」にするのを止めさせることです。子ども自身、ウソや「人のせい」にしていることは分かっているはずです。ですので、一旦は子どもの言っていることを受け止め、次回からは子どもが「人のせい」にしない言葉をかけていくといいですね。

失敗を安心して認められる親子関係は、健やかな子どもの成長の基本

子どもが人のせいにするのは、親のちょっとした意識で、改善されていきます。そして日頃から、失敗や過ちを安心して、自分の責任として受け止めていけるような親子関係を築いていくことは、子どもの健やかな成長の基本です。

これを機会にぜひ、振り返ってみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール
田宮 由美

公立幼稚園、小学校での勤務、幼児教室を7地域で展開、小児病棟への慰問、子どもの声を聴く電話相談など、多方面から多くの子どもに関わる。そのような中、子育てに熱心な
故に、その愛情が焦りとなり挫折、絶望感を抱いている親子が多いことに心を痛める。
「子どもの自立」「自己肯定感」「自己制御力」を柱とし、真に子どもの能力を開花させる子育て法を広める活動を2010年から始める。
現在、息子は大学病院で医師として、娘は母子支援の職場で相談員として勤務。実生活に落とし込んだ、親の心に寄り添う記事に定評がある。「難しいことを分かり易く、ストンと腑に落ちて行動に移せること」を理念とし、現在は執筆、講演、幼児教室を中心に幅広く活動中。
資格:小学校教諭・幼稚園教諭・保育士・日本交流分析協会 子育ち支援士
著書:『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(株)KADOKAWA

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