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子どもの個性や興味にあわせて選べる!ニューヨークシティの初等教育プログラム(後編)

子どもの個性や興味にあわせて選べる!ニューヨークシティの初等教育プログラム(後編)

「しっかりとお勉強をさせたい」「語学にも力を入れて欲しい」「のびのびとした環境の学校がいい」100人いれば100通りの教育方法があるように、親の学校選びの基準も100通りです。

世界中からさまざまなバックグラウンドを持つ人々がひしめきあうニューヨークシティでは、日本の公立学校にはない多様なオプションが存在します。

前編では公立と私立のハイブリットのようなチャータースクールについてご紹介しましたが、今回は2ヶ国語で授業を行う「Dual Languageプログラム」知能テストを受けて入る「Gifted and Talented プログラム」についてレポートします!

▼前編はこちら
選択肢がありすぎて逆に困る!?ニューヨークシティの初等教育プログラム(前編)

日経DUAL記事

授業を受けるだけで自然とバイリンガルになる!?「Dual Languageプログラム」

100ヶ国語以上の言語が話されているというニューヨークシティ。小さいころから2ヶ国語、3ヶ国語を操る子も多いのが特徴です。ニューヨークシティの公立校では、スペイン語、フランス語、中国語など2ヶ国語で普段の勉強を行う「Dual Language (デュアルランゲージ)プログラム」があります。

文部省の学習内容に沿って、月曜日はスペイン語、火曜日は英語、または午前と午後に分けて各言語で授業をしていきます。クラスの半分はその外国語を母国語とする生徒、その半分は英語を母国語とする生徒が集まり、最終的には2ヶ国語のバイリンガル教育を目指します。

このプログラムにはいるには、事前に言語能力テストが行われます。

さて、教室に座って教科書を読みながら勉強していた私たち親の世代からすると、どうやって2ヶ国語で同じ教材を勉強するの?と思いませんか?

実はアメリカでは教科書というものがなく、教師たちは指導要領に沿ってオリジナルの教材で指導に当たっているので、2ヶ国語での指導もフレキシブルに行えるそうです。

ニューヨークタイムズ紙によると、このデュアルランゲージプログラムは英語を母国語とする家庭からの人気も高まっているそうで、2016年度には38のDual Languageプログラムが新設されました。

また言語も多種多様でスペイン語、フランス語、中国語などメジャーな外国語のほかにも、ロシア語、ポーランド語、アラビア語、韓国語、ハイチ語も揃っています。

2015年よりニューヨークシティ初の日本語と英語のデュアルランゲージプログラムもブルックリンの公立学校Public School47で始まり、2016年には安部首相夫人も表敬訪問されています。

ほかにも英語以外の言語で育てられた子どものために、English as a second language (ESL)のプログラムやTransitional Bilingual Education(TBE)と呼ばれる2ヶ国語を話す先生が最初はその子どもが育った言語で授業を始め、だんだん英語の比重を増やしていくプログラムというのもあります。

年長からいきなり小学校一年生レベルの授業も。「Gifted and Talented プログラム (G&T)」

知能テストを受け、特別な学力がある子どもたちが通うGifted and Talented プログラム (G&T)。これは公立学校のなかに設けられた特別なクラスで、知能テストを受けて、ある点数以上をとった人のみ入学可能です。

90%以上のスコアで学区内のG&Tプログラム、97%以上のスコアで自分の学区域に関係なくニューヨークシティ内どこからでも応募できる特別なシティワイド プログラム校(5校)の2種類があります。

毎年、G&Tに当てられている人数枠よりもG&Tを希望する子どもが多いため、兄弟の優先枠、スコアの上から順番に合格通知がくるようになっています。

学校によっては年長からいきなり小学校一年生の国語と算数を勉強するところもあり(常に一学年上の勉強をするという意味)、同じ学力の子どもたちと一緒に深く学ぶことができる環境なのもこのプログラムのメリットです。

またこのクラスを教える先生たちはこういった特別な子どもたちを教える専門的なトレーニングを受けています

このプログラムに行くためには、通常の公立手続きとは別にテストの申し込みが必要で、スコアの通知が来た後に行きたい学校のランク付けをしてまた応募します。

2011年のデータでは公立校に通う70%が黒人やヒスパニックに対し、G&Tプログラムに在籍する生徒の70%以上が白人かアジア人とクラスの人種構成に偏りがあることから、批判も出ています。

また、このテストの準備をするためのお受験塾がニューヨークにはたくさん存在しているのも事実で、準備をした子どもたちがスコアをとりやすいと噂されていることから毎年インターネット上でたくさんの議論が交わされています。

アメリカ後編_2

それぞれに特色のある、チャータースクール、デュアルランゲージプログラム、G&T。私立のように高い学費を払わなくても、子どもの個性や能力を見極めながら学校を選べるのは、世界中から多様な人々が集まるニューヨークシティならではの環境といえるかもしれません

参考:
The New York Times「Dual-Language Programs Are on the Rise, Even for Native English Speakers」
New York City Department of Education「Chancellor Fariña Announces 38 New Bilingual Programs」
New York City Department of Education「Chancellor Fariña Announces Citywide Bilingual Expansion, Bringing 68 New Programs to Schools This Fall」
The New York Times「Eliminate Gifted Tracks and Expand to a Schoolwide Approach」
The New York Times「New York to Expand Gifted Offerings as Disparities Remain」
Williamsburg Dual Language Program「日本のファーストレディー、阿部昭恵夫人、PS147を訪問!First Lady of Japan, Mrs. Abe’s visit to PS147!」

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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