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わが子の非認知能力を育てる環境”3つのキーワード”【非認知能力シリーズ第1回】

わが子の非認知能力を育てる環境”3つのキーワード”【非認知能力シリーズ第1回】

「非認知能力」という言葉をご存知でしょうか。最近しばしば耳にするようになってきました。将来大人になってから、社会的、経済的に成功をもたらすのは、この非認知能力が大きく影響をしていると、外国で研究が進められ、今、日本でも注目されてきています。

ペーパー試験などで測りやすい能力を認知能力と呼ぶのに対し、我慢する力ややり抜く力など測ることが難しい能力を非認知能力と言います。今回は第一弾として、非認知能力のこと、育む環境作りのキーワードについてお伝えします。

非認知能力が低いと子どもの将来に影響する!?

この言葉が注目され出したのは、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・J・ヘックマン教授の研究からです。

アメリカに住む低所得者層家庭の3〜4歳児の子どもたちを2つのグループに分け、非認知能力の向上に重きをおいた就学前教育を施す子どもと施さない子どもを比較し、追跡調査をする実験を行いました。その結果、教育を受けた子どもと受けなかった子どもを比べると、基礎学力の到達度や、将来大人になってからの月収や持ち家率はいずれも、就学前教育を受けた者の方が優れているということが導き出されました。

このように非認知能力とは、子どもの将来に大きく影響すると言われています。では具体的にはどのような力なのでしょうか。

非認知能力ってどんな能力?

積み木を積む・文字を書く・跳び箱を飛ぶなど、ハッキリと成果が分かる認知能力に対し、

・積み木を高く積もうとする集中力、
・文字を覚え手紙を書けるようになりたいという意欲、
・跳び箱を何度も繰り返し練習する努力などを非認知能力と言います。

他にも、

・困難にぶつかった時の忍耐力や回復力
・最後までやり抜こうとする力
・人と上手にコミュニケーションを取ったり、協力し合う社会性や協調性
・規律やルールを守る自制心や制御力
・感情を上手にコントローㇽする力
・新しいモノを生み出す創造力や発想力

なども非認知能力です。測ることが困難でどれだけ身についたか分かりにくい力ですので、見落とされがちになることもあるでしょう。ですがこれらこそが、後に子どもの人生を豊かにしていく能力だと言われています。

ではどのようにすれば、子どもの非認知能力を育んでいけるのでしょうか。次に3つのキーワードより説明いたします。

非認知能力が育まれる環境作り3つのキーワード

非認知能力は教えて身についていくものではなく、子どもが自ら積極的に取り組むことで育まれていくのがほとんどでしょう。そこで取り上げられるのが「遊び」です。

遊びは「このように遊びなさい」と、指示や命令をするものではないでしょう。ですが単に遊ばせているだけでよい分けでもありません。親がすべきことは、子どもに非認知能力を育みやすい「遊びの環境」を整えることです。3つのキーワードから、その環境の整え方をご紹介します。

その1 安心・安全な環境

子どもが自由に、のびのび遊べる環境が大切です。危険なもの、例えばハサミなどは子どもの手の届かない場所に収納する。テーブルや棚に少々ぶつかっても物が落ちてこないような配置、花瓶や写真立てなども、置く場所を考えましょう。

また屋外で遊ぶ時は、交通事故や川への転落事故の心配がないように、公園や広場などで遊ばせるといいでしょう。子どもが安心感を持って、安全にのびのび遊ぶことのできる環境を与えてあげましょう。

その2 熱中する時間

子どもが遊びに熱中できる、また没頭して遊ぶことのできる環境も大切です。「早く片付けなさい」など、子どもが何かに夢中になって取り組んでいる時、いつも中断してしまうようなことはないでしょうか。子どもが何かに没頭している時は、声をかけず、納得いくまで続けさせましょう。

もちろんお風呂に入る時間や夕食の時間など、次の行動を促さなければならない時もあるでしょう。ですが子どもが夢中になって遊びに取り組んでいる時は、臨機応変に対応することを親は心がけるといいですね。

その3 自主的・能動的な取り組み

非認知能力を育む遊びは、子どもが自主的、能動的に取り組めるものであることが重要です。

例えば、ブロックや積み木、また絵画や粘土、これらは形を自由に変え、工夫次第でいろいろな遊び方ができるので、創造力や発想力なども養われます。

身の回りにあるものを使って、模倣遊び(ごっこあそび)をするのもよいでしょう。友達同士、ルールを決めて、屋外で身体を動かしながら自分たちの作ったルールで遊ぶのもいいですね。

スマホやTVゲームなどは、自主的に関わっているように見えますが、これはボタン操作一つで向こうから情報が次から次へ送られてきて、思考する間もないでしょう。ですので、熱中しすぎるのはよくありません。

親のサポートで子どもの「遊び」を深めよう

積み木やブロックを与えるだけでなく、「こうすればもっと高く積めるね」など親が声掛けをしてサポートすることも大切です。音楽に興味を持っていそうなら、子どもが扱える楽器を用意する。絵を描くことが好きなら、画用紙やさまざまな画材を準備する。乗り物や昆虫、草花が好きなら、その図鑑を部屋にディスプレイするのもよいでしょう。実際見に連れて行ってあげるのもいいですね。そうすることにより、更に興味を持ち、自分で更に知りたい、と思うでしょう。

また日頃から近所の図書館や児童館、公園などに親子で足を運び、やがて子どもが一人で自由に行くことができる練習をしておくのもよいでしょう。

私たち大人は、どうしても目に見える成果を優先しがちです。ですが子どもの将来を考えると、非認知能力を育む大切さをしっかり知っておきたいですね。

【非認知能力にまつわるこちらの過去記事も参考にしてみてください!】

ボーク重子さんが実践した“非認知能力”を育てる3つのルールとは? 「最高の子育て」セミナー 前編 
ワーキングペアレンツの教育フォーラム&合格報告会(前編)中室牧子先生による「幼児期に大切なこと」~教育の科学的根拠~

著者プロフィール
田宮 由美

公立幼稚園、小学校での勤務、幼児教室を7地域で展開、小児病棟への慰問、子どもの声を聴く電話相談など、多方面から多くの子どもに関わる。そのような中、子育てに熱心な
故に、その愛情が焦りとなり挫折、絶望感を抱いている親子が多いことに心を痛める。
「子どもの自立」「自己肯定感」「自己制御力」を柱とし、真に子どもの能力を開花させる子育て法を広める活動を2010年から始める。
現在、息子は大学病院で医師として、娘は母子支援の職場で相談員として勤務。実生活に落とし込んだ、親の心に寄り添う記事に定評がある。「難しいことを分かり易く、ストンと腑に落ちて行動に移せること」を理念とし、現在は執筆、講演、幼児教室を中心に幅広く活動中。
資格:小学校教諭・幼稚園教諭・保育士・日本交流分析協会 子育ち支援士
著書:『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(株)KADOKAWA

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