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子どもの注意欠陥・多動性障害・うつ病を防ぐ!カナダの森で生きる力を学ぶ「フォーリストスクール」

子どもの注意欠陥・多動性障害・うつ病を防ぐ!カナダの森で生きる力を学ぶ「フォーリストスクール」

外の気温はマイナス10℃。スキー用のジャケットとズボンに身を包み、子どもたちが登校してきます。フォーリストスクールの一日の始まりです。

フォーリストは日本語で「森」という意味。その名の通り、子どもたちが一日の大半を森で過ごす学校です

それだけを聞くと「一日中外で遊んでいるだけなの?」と、親としてはちょっと不安になるかもしれません。しかし最近の研究では、自然のなかで学習することは、子どもの学習意欲を高めるだけでなく、コミュニケーション能力やチャレンジ精神といった「生きる力」を養うためにも重要であることがわかってきています。

2008年に開校したカナダのフォーリストスクールですが、その数は現在約30校にまで増えています。今回は、自然のなかで子どもを育てたいと、近年カナダで人気が高まっているフォーリストスクールについて紹介します。

フォーリストスクールが始まった背景、「自然欠損障害」にならないために

少し車を走らせると大自然にアクセスできるカナダですが、フォーリストスクールが注目され始めたのはここ5年ほどのことです。その背景には、テレビやコンピューターの使用により、子どもが外で遊ばなくなったことに対する大きな懸念がありました。

2000年に入り、北米のベストセラー作家リチャード・ルーブ氏が「子どもたちは自然欠損障害にかかっている」と述べ、社会に大きな反響を呼びました。

「自然欠損障害」とは、自然と触れ合う時間が減ることによって生じる体の不調のことをさし、子どもの注意欠陥・多動性障害やうつ病などはその代表として挙げられています。

一方で、仕事や家事で忙しい親としては、そう頻繁に子どもを森に連れて行くこともできません。このような事情から、フォーリストスクールにお金を払ってでも、子どもが自然のなかで学べる環境をつくりたいという親が増えているのです。

森が教室・自然が先生!フォーリストスクールのある一日

今回私が訪れた「フリースピリットフォーリストスクール(Free Spirit Forest School)」は、トロントから北へ車で2時間、リゾート地として有名なブルーマウンテンのふもとにあります。学校のスタッフ自らが設計・建築したログハウスを囲むように広がるこの森には、5歳から12歳までの子どもたちが通っています。

フォーリストスクールの一日は、生徒一人ひとりが、その日の学習目標を決めることから始まります。学習項目には、「火をおこす・足跡から動物を見わける・地図を見て目的地に行ける」といったスキルの習得から、「日記を書く・苦手なことに挑戦する・友達を助ける」といった内面の発達を促すものまで20種類以上あります。各項目はカラフルなビーズで色わけされており、できるようになると、その項目のビーズがもらえます。

また、宿題をするとシールがもらえてビンゴを完成することができるのですが、その宿題とは、釣り・スケート・スキーなどビンゴ表にあるスポーツを家族ですることだそうです。

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この日の課題は、「もし吹雪に遭って、近くに避難場所がない場合はどうするのか?」。答えは「かまくらを作ること」なのですが、どのようなかまくらを作るのかが学習のポイントとなります。

雪国育ちの私も初めて知ったのですが、寒さをしのげる丈夫なかまくらは、半球体、その高さは自分の身長で決まり、穴の大きさは球体の半径の半分以下なのだそうです。体とかまくらの壁の間に隙間が多いと冷たい空気が循環して寒く、また、穴が大きいと壊れやすくなるのがその理由です。そのため、穴を掘る前に身長の半分の長さの枝を雪山にさし、穴の掘りすぎを防ぐのだそうです。

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この日の気温はマイナス10度。それでも、子どもたちは大はしゃぎで重たい雪を運び、2時間の試行錯誤のあと、やっとかまくらができました。子どもが森で遊んでいるだけに見えるこの風景、実は算数・理科・体育のすべての要素がひとつに凝縮された学習空間だったのです。

フォーリストスクールの魅力は、内面の成長と「生きる力」を養えること

フォーリストスクールの形態はさまざまで、普通の学校のように週5日のところもあれば、週2~3日普通の学校と並行して通う子どもたちもいます。1学期分のみ毎日フォーリストスクール、というところもあります。日本ではあまりない感覚ですが、同時に2つの学校に通うような感覚で通える学校なのです。

親たちの声を聞いてみると、フォーリストスクールのすばらしさは、自信・自立心・チャレンジ精神・思いやりといった子どもの内面の成長にあるといいます。

とても人気で空きがないほどのフォーリストスクール。その人気の理由は「生きる力」という一生の財産を子どもに贈ってあげられることにあるのかもしれません。

【参考】
フリースピリットフォーリストスクール
Child and Nature Alliance of Canada. (2017). Forest school Canada.
Forest School Canada. (2014). Forest and nature school in Canada.
Louv, R. (2008). The last child in the woods: Saving our children from nature-deficit disorder. New York: Workman Publishing.
McClean, C. (2016) Forest schools: When every day is a field trip day.
Wild Child Forest School. (2017). Reviews and testimonials.

著者プロフィール

世界32カ国に在住の150名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2016年11月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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