年齢別!わが子の「愛情不足」のサインと対処法

年齢別!わが子の「愛情不足」のサインと対処法

忙しい毎日を送る現代の生活は、子どもが愛情不足を感じやすいとも言われています。では、子どもからの愛情不足のサインを親はどのように感じ取り、どう対処していけばいいのでしょうか? 心理学の視点からアドバイスしていきます。

日経DUAL記事

愛情はあるけれどわが子に届ける時間がないジレンマ

「愛情不足」という言葉だけ切り抜くと、親から子どもへの愛が足りていないというイメージを与えるかもしれません。

しかしここ最近の傾向としては、親が子どもを愛していないという愛情不足ではなく、愛情はあるのだけれど、子どもにそれが届けきれていないというケースの方が圧倒的に多い気がしています。

つまり親は子どものことが気になっているにもかかわらず、子どもからすれば欠乏感がある状態です。なぜそういうことが起こりやすいのかというと、一番の要因は日々の忙しさでしょう。

今や両親が働いているというご家庭が7~8割。しかも日本は勤務時間も長いため、子どもを保育園に朝早く預け、夜も駆け込んでお迎え、家に帰った後は、ごはんやお風呂など「やるべきこと」だけで精一杯というお声もよく聞きます。私は海外在住期間が長いのですが、共働きという状況は諸外国も同様ながら、帰宅時間の違いは顕著に感じています。

愛情不足=アタッチメントの弱化

ただ、子どもたちの年齢を踏まえれば、「ボク・ワタシは愛情不足の状態だ」と明確に認識したり、言語化してくるわけではありません。“愛情不足“という直接的な言葉ではなく、むしろ非言語的なサインを発しながら満たされない気持ちを訴えているというのが現状でしょう。

この「なんだか満たされない」という気持ちを心理学的にはアタッチメントが弱化している状態と言います。

このアタッチメントというのは、子どもが特定の人に持つ愛着感情のことで、基本的には親にこの思いを抱いています。

しかし一方的に子どもが親のことを慕ってできあがるものではなく、親が自分にしてくれた無数の関わりを経て形成されていきます。言うなれば、親子間の精神的な絆であり、子どもにとっての心のよりどころです。

アタッチメント理論を唱えたイギリスのボウルビィ博士は、

“子どもは社会的、精神的発達を正常に行うために、少なくとも1人の養育者と親密な関係を維持しなければならず、それが無ければ、子どもは社会的、心理学的な問題を抱えるようになる”

と言っています。子どもが抱える「なんだか満たされない」というのは実に深刻な状態なのです。

少し古いデータになりますが、ユニセフが2007年に行った調査では、諸外国の中で日本の子どもたちが世界で一番孤独感が高く、その時点で3人に1人が寂しさを訴えています。この15年で状況が改善したかは疑わしく、私が日々行っている育児相談のお悩み事例を見ても、子どもが感じる孤独感はむしろ悪化しているのではと感じています。

年齢別!子どもが出す愛情不足のサイン

今のような忙しい日々の中で、親は子どもの愛情不足感を少しでも改善するために何ができるでしょうか? まず大事なのは、子どもたちが発するサインにできるだけ早く気づくことだと思います。

もし一時的に残業が続いたなどの一過性の理由であれば、「なんだか最近になって○○だな」という子どもの変化としてファーストサインを感じることが多いと思います。

例えば、 
●赤ちゃん期:「泣くことが増えたな」
●保育園、幼稚園時代:「抱っこ、抱っこが増えたな」
●小学生以降:「ママ、ママが増えたな」

のような、以前と比べての変化です。

しかしここでサインに気づかなかったり、忙しい日々が慢性的に続き対応ができないと、
●赤ちゃん期:泣くことがさらに増える、感情が乏しくなる
●保育園、幼稚園時代:ぐずりがひどくなる、おもらしをするようになる、ダメという行動をわざとする
●小学生以降:言うことを聞かない、激しく反抗をする、親を無視する

このような行動につながることも多いようです。

ただ、赤ちゃん期の泣きに関しては、“メンタルリープ”と呼ばれる成長による泣きの増加も一般的に見られるため、一概に愛情の不足感とは言い切れないので、ここはその視点でも検討することは大事かと思います。

しかしそれ以外のことはアタッチメントが弱化することで起きやすい変化だということは、私自身のカウンセリングでも強く感じています。

時間のないワーママでもできる!「愛情不足」の対処法

子どもが示す「愛情が足りていないよ」というサインは、年齢によって出方が違うこともありますが、根っこにあるのは共通して「甘えたい」という気持ちです。よって、親がとるべき対処法は、その甘えたい気持ちを満たすことなのですが、これがわかっていてもできないから困っている方も多いと思います。

今の時代、家事は時短が当たり前ですが、育児でもそれが可能なのでしょうか?

私のこれまでの経験で言えば、絶対的な時間は必要なものの、工夫は十分にできるということです。上に記した親子の絆である“アタッチメント”は、ただ一緒に時間を過ごせばOKというものではありません。その質がとても重要です。

わかりやすくたとえるなら、
●全然かまってあげないで12時間過ごすのか
●限られた時間ながら全力で一緒に遊ぶのか

であれば、受け手である子どもからしたら、後者の満足度の方が高くなると思います。

もちろん、育児の時短よりは、まず仕事の時短、家事の時短を考えた方が、子どもたちの心には望ましいので、対処法のステップ1としては現状の再検討をしてみてください。

そして、「検討したけれどもう仕事も家事もこれ以上縮小できない」ということになった際に、育児の時短を工夫するというのが順当なステップだと思います。

以下に、子どもの愛情不足感を減らす試みをまとめましたので、今の状況と照らし合わせながらできることを取り入れていってみてください。

【愛情不足の解消法】

◆育休中 「泣きの対処で信頼感を得る」

0歳代は育休を取っている方も多いので、一緒にいる時間は確保できる時期だと思います。この時期の泣きの対処は、その後のその子の反応にも影響を与えることが多いので、時間が確保できるこの時期にできるだけいいベースを作っていきたいところです。

まだ自分で動けない赤ちゃんは泣くことで気持ちを訴えますが、もし親が「泣くとその子のところに行く」という対応を繰り返すと、逆に泣くことが増えます。

赤ちゃんにとって泣くことが親を呼ぶ手段だと判断するからです。ならば泣いても行かない方がいいのかというとそうではなく、泣く以外のことでもしっかりと反応を示していくことがポイントになります。

「あんよ動かすの上手だね~」「おしゃべりしてるのね」「嬉しいね~」のように赤ちゃんの様子を声でフィードバックしてあげたり、泣いていないときにも抱っこなどのスキンシップを心がけたり。こうやって、赤ちゃんに「泣こうが泣くまいがママ・パパは見てくれている」という感覚をもたらせると、絶対的な信頼感につながるので、その後の親子関係にもいい形に作用してくれます。

◆復帰後 「ファーストサインの段階で満たす

子どもが愛情不足を感じると、まず初めの段階では「甘え行動」を示してくることがほとんどです。
とくに、「抱っこして」とせがんだり、「ひざに乗ってくる」、「スリスリしてくる」というように、スキンシップの形で見せてくることが多いので、親の方もスキンシップで返してあげると望ましいでしょう。

お風呂を利用するのもいい方法です。気持ちが焦っていると、業務的に捉えてしまいがちなお風呂ですが、実は絶好のスキンシップの場。いつもより意識的に触れたりなでたりしていると、自分の方も一緒に気持ちが和らぐことも多いのでぜひ試してみてください。

最後に、気をつけていきたいポイントも2つ記しておきます。

子どもと関わる際に注意したい2つのこと

その1 「週末のお出かけより毎日15分集中的に遊ぶ方が満足度は高い!」

子どもは短い時間軸で生きているので、何よりも“今”が大事。よって、週に1回の大きな喜びよりは、毎日のちょっとした喜びの方が満足度が高くなります。

具体的に言うなら、「週末に遊園地に連れていってあげる」よりは、「帰宅後に毎日15分集中して○○で一緒に遊ぶ」というように日課として取り入れることが理想的です。

遊びにはアタッチメントを強化する大きな力があることが知られています。

笑い、喜び、興奮などのポジティブな感情が凝縮されるため、質的にとても濃くなるので、短時間でも子どもの気持ちが満たされやすく非常におすすめです。忙しいご家庭ほど遊びの力を利用してほしいと思います。

その2 愛情不足は物欲だけでは解消されない!

私がご相談を受ける際によく遭遇するのが、「子どもに寂しい思いをさせているから○○を買ってあげた」という事例です。

子どもの気持ちをほぐそうという前向きな気持ちではあるのですが、それで子どもが喜んでくれるのは一瞬のことがほとんどです。そういう事例に会うと、「物を子どもにあげて満たされているのは親の方なのかもしれない」と気づかされるのです。

物を買ってあげることを否定しているわけではありません。

でもそこで親の方が満足してしまった場合、本題に取りかかるタイミングが遅れてしまうのではと懸念しています。子どもたちの「なんだか満たされない」という思いは、直接甘えたり、一緒に遊んだりすることで充足されていくものであって、欲しがっていたおもちゃがそれに取って代わるものではないということは気に留めておきたいポイントです。

子どもの愛情不足感が、自分の仕事の忙しさが要因になっているとわかっていても、それで時短勤務や残業削減ができるわけではない人がほとんどだと思います。とは言え、子どもにそのあおりが行ってしまうのは最小限にしたいので、ぜひできるところから意識してみてください。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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