IQよりも自制心!? 4歳児の「待てる子」がやっていたこととは?

IQよりも自制心!? 4歳児の「待てる子」がやっていたこととは?

前号では、有名な心理学研究のひとつである「マシュマロ実験」をお伝えしました。15分間待つことができれば2倍になるマシュマロ、でもまだまだ4歳では、3分の2の子が待てずに食べてしまったという実験でした。

前号では、マシュマロを食べてしまった子の方にフォーカスをしましたが、今号では、食べなかった子、つまり、4歳にして「満足遅延耐性」が高い子どもたちに注目していきます。

自制心は生まれつきか、学習か?

マシュマロ実験で試された、その子の「満足遅延耐性」。自分の欲求をどれくらい我慢し、満足をどれくらい遅延できるかという資質のことです。これはやがて、その子の「自制心」につながっていきます。

実験では、我慢できなかった子が2/3、我慢できた子が1/3。4歳なのだから、待てなくても仕方ないという見方もできますが、でも待てた子の心理、気になりますよね。この違いは、どこから来るのでしょうか。

私たちは白紙の状態で生まれてくるわけではありません。その子らしさ、つまり性分や気質というのは、親から引き継いだものを持って、生まれてきます。

生まれつき、積極的な子、慎重な子、気難しい子がいるように、我慢がききやすい子というのはいるものです。しかし、赤ちゃんはだれでもお腹がすいたら、すぐに泣いて訴えるように、基本的に、その場を我慢することは得意ではありません。少なくとも、0歳の子よりは、4歳の子の方が我慢上手というわけです。

つまり、自制心というのは、生まれついた資質もありつつ、成長とともに伸びていく要素が大きいのです

今はIQよりも自制心!? 幼少時の自制心と将来の成績との関係

「ならば大人になれば、自然に自制できるようになるのでは?」と思うかもしれません。しかし、話はそう単純ではありません。

たしかに、子どもよりも大人の方が自制心は高い傾向がありますが、それでも個人差があります。しかも、その個人差は、幼少時に見られるものが引き継がれやすいということも分かっているのです。

4歳のときにマシュマロ実験に参加した子が、22歳になったときに追跡調査を行うと、幼少時の自制心の傾向と18年後のそれには相関が見られたのだそうです。しかも、マシュマロを食べた子よりも、食べなかった子の方が学校の成績が良いということも分かりました。

最近の研究で、その子の成績をより正確に予測する要素として挙げられるのは、IQ以上に、自制心だということも分かってきています

自制心が高い子というのは、規則正しい生活が身についていて、テレビを見る時間が少なく、その分勉強に時間をかける傾向があるのだそうです

今は物があふれる時代、子どもが飛びつきたくなる魅力がたくさんあります。こんな時代だからこそ、それを制する力“自制心”があるかないかが、結果的に学校の成績に結びついていくものと思われます。

待てる子がやっていた作戦から学ぶ、自制心の育み方

では、マシュマロ実験のとき、食べずに我慢できた子が、実際にやっていたのはどんな対策だったのでしょうか? それは、「魅惑的なもの」を遠ざける作戦でした。

魅惑的なマシュマロを、自分の視界に入らないように工夫しながら、その時間を過ごしたそうです。これを自ら行っていたこと自体がすごいことなのですが、その子たちは、先延ばしした方が、満足度が高まることを経験で知っていたからこそ、そのような行動を取ることが可能だったのでしょう。

この子たちが取った作戦は、私たち親にいいヒントをくれています。

子どもたちにとって視覚的な誘惑は、非常に魅力的に映るため、そこにあれば手が伸びてしまいがちです。お菓子、ゲーム、スマホなど、子どもたちが飛びつきがちなアイテムは、まずは親の手元で管理し、すぐに手に入らない環境を作ることをおすすめします。

それにより、待つ、我慢するという機会が発生するため、自制する経験が増えていきます。

甘えさせるけれど、甘やかさないのが自制心を育むポイント

中には、「でも、子どもに我慢をさせるのはよくないのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。たしかに、子どもが欲する愛情面の欲求に関しては、我慢させると、一般的に悪く転じる傾向があります

たとえば、「ママ、抱っこ」「ママ、見て」という甘えたい気持ちをスルーしたり、面倒だと拒絶したり……。これらは、子どもがすべき我慢ではないので、結果的に、絆不足や自己肯定感の低下などを引き起こしがちです。

しかし、自制心の育みにつながる我慢は、これとは全く異なります。

「ゲームは1日30分」
「宿題をやってから、遊ぶ」
「今日のおやつはクッキー3枚」

このようなものです。子どもは一般的に、「満足遅延耐性」がまだ低いので、親が、子どもからの物質的な欲求に「はいはい」「いいよいいよ」と何でも応じていると、耐性が育つチャンスを失い、「我慢しない」「待たない」がクセになっていきがちです

「甘えさせる」と「甘やかす」を混同せずに、十分甘えさせるけれど、甘やかさないのが自制心を育むポイントなのです。

お菓子やテレビ、ゲームをゼロにしましょうと言っているのではありません。オン・オフをつけられる力こそが自制心なので、むしろ場数を増やすためには、生活の中に魅力あるものも取り入れつつ、その中でメリハリやリズムをつけていく方が、経験値が高くなります。

難しく考えず、
「美味しそうなケーキがあっても、手を洗ってから食べる」
「ゲームをはじめても、約束の時間には止める」
「ご飯を食べたら、まずは歯磨き」

など、身近なところから自制心の育みを取り入れてみてください。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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