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4歳児までの育児 〜“待てない”子どもの育て方〜

4歳児までの育児 〜“待てない”子どもの育て方〜

0歳のときには0歳育児の悩みがあり、1歳のときには1歳育児の悩みがあります。そして、2歳、3歳、4歳と年齢が上がっても、やはり悩みはつきません。つきないどころか、どんどんと複雑化していくことさえあります。この記事では、ママが頭を抱えやすい4歳くらいまでの子育てのある共通点にフォーカスを置き、それを心理学的に解説していきます。

日経DUAL記事

世界中のママが4歳児にお手上げ!?

「次から次へと悩みがつきない……」こう感じやすいのが4歳くらいまでの育児。年齢ごとに悩みの内容は移り変わりますが、0、1歳と2、3、4歳とでは悩みの質に違いがあります。0、1歳の赤ちゃん時代は、子どもの体の発達やママの体力的な疲れなど「カラダ」にまつわる悩みが多いのに対し、2~4歳の子育てでは、お友達との関係、感情のコントロール、それによるママのイライラなど「ココロ」にまつわる悩みが増える傾向があります。0歳のころを振り返り、「あのときは睡眠不足で辛かったけれど、まだまだ可愛いものだったわ」と現状を嘆くママも多いのではないでしょうか。

イヤイヤ期が過ぎればホッと一息つけるかと思いきや、3歳、4歳になって、もっと悩みが悪化してきたというのはよく聞く話。でも、これは日本のママだけでなく、世界中のママが抱えやすい共通のお悩みでもあるのです。日本でいう“魔の2歳児”は、英語では“Terrible 2”と言います。“テリブルな2歳児”というわけです。そして、その後も、“Terrifying 3(恐怖の3歳児)”、“ Frightening 4(ゾッとする4歳児)”と的を得たネーミングが続きます。

海外のネット上には、「テリブル・ツーのあとには何がやってくる?」「○○○・スリー、○○○・フォー、教えて!」のように、ママたちが自分の経験を踏まえ、名ネーミングを投稿しているページがあるのですが、それを見ていると、「この時期は、世界中のママたちが同じように悩んでいる」というのが伝わってきます。

ではなぜ、この時期の子育ては大変になりがちなのでしょうか?

待てない4歳児~自制心に直結する「満足遅延耐性」

心理学用語に、「満足遅延耐性」という言葉があります。ちょっと小難しい用語ですが、「将来の価値ある結果を手に入れるために、今、目の前にある欲求を我慢する能力」のことを言います。たとえば、

「1週間お菓子を我慢し、1キロダイエットに成功した」

「1週間後のテストに備え、自らゲームを自制し、100点を勝ち取った」

など。お菓子を食べたい気持ち、ゲームをやりたい衝動、そのフラストレーションに耐える自制心のことです。

一般的には、子どもよりも大人の方が、自制心が高く、我慢が効きます。この「満足遅延耐性」は成長とともに身についていくものだからで、年齢が低いほど、瞬間的な満足を求める傾向があります。

待てれば2倍になるマシュマロ、4歳児はどうする?

「4歳の子の満足遅延耐性」を測った心理実験がありますので、ここでご紹介しましょう。

子どもの自制心を測った著名な実験として知られる「マシュマロ実験」。これは、今から50年ほど前にアメリカのスタンフォード大学が行ったもので、いまなお参照文献などでよく用いられています。

この実験の対象となったのは、4歳の子どもたち。1人ずつ教室に通され、まず椅子に着席するように言われます。手元にある机の上を見ると、魅惑的なマシュマロが1個。そばにいる実験者が、子どもにこう伝えます。

「僕はちょっと用事があるから、少しの間、1人でいてね。このマシュマロは君のものだ。もし、僕が戻ってくるまで、食べるのを我慢していたら、マシュマロをもう1つあげるよ。でも、僕がいない間にそれを食べたら、2つめはないよ。15分したら戻ってくるからね」

はたして、子どもたちは魅力的なマシュマロを前に、どう行動したのでしょうか?

結果は、待っていられたのは3分の1の子どもたち。3分の2の子はマシュマロを食べてしまいました。「たった15分待てれば、2倍になるのに……」というのは大人の見解。子どもたちにとっては、目の前のマシュマロの方がずっと価値あるものだからです。

この時期の子育てが大変になりがちな背景には、この「満足遅延耐性」が備わっていないことが関係しています。「我慢できない」「待てない」、だから、

お友達のおもちゃを勝手に取ってしまう

すべり台の列に横入りしてしまう

ママにダメと言われたことをすぐにやってしまう

のです。

しかし、この実験からも分かるように、満足遅延耐性には個人差があります。4歳でも、ある程度の耐性が、すでに身についている子もいるのです。実は、満足遅延耐性は、その子の将来に大きく影響する大事な資質だということが分かってきました。次号では、このテーマをさらに掘り下げ、耐性を上げるための秘訣についてお伝えしていきたいと思います。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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