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子育て

「泣いちゃダメ!」と言う前に親が知っておきたいこと!

「泣いちゃダメ!」と言う前に親が知っておきたいこと!

新しい学年がスタートして間もないこの時期は、子どもたちの心も揺れやすいとき。いつも以上に泣いたりぐずったりが増える時期でもあります。

そんなとき、思わず言ってしまいがちなのが、「こんなことで泣かないの!」という言葉。言った後で、「泣きたい感情を親が押さえてしまっていいのだろうか…」と自問する方も多いと思います。

ここでは、その心理的な影響について見ていきたいと思います。

日経DUAL記事

「泣いちゃダメ」は男の子がとくに言われやすい!?

「泣くのは止めなさい」
「メソメソしないの」
「泣いたら変だよ」

これまでに、お子さんに言ったことはありませんか? とくに男の子のママは「思い当たる節あり」の方も多いのではないでしょうか。

心理学の研究でも、男の子と女の子では親の接し方に偏りが見られることが分かっており、

・女の子の方が、親から感情を表す言葉や感傷的な状況を聞く機会が多い
・親は息子と遊ぶときよりも娘と遊ぶときの方が、感情表現が豊かになる

のように、「感情を含む表現」は、男の子よりも女の子に多く用いられる傾向があります。

「感情のキャパシティーに男女差はないのに、その取り扱いについては、大きな男女差がある」と『EQ・こころの知能指数』の著者であるゴールマン博士も言っていますが、「男の子なんだから泣くのは止めなさい」は日本のみならず、世界中の家庭でよく言われている言葉なのです。

泣くのを押さえ続けるとどうなる?

しかし、子どもの心の発達において、感情は非常に大事な要素。男の子であっても、女の子であっても、「泣かないの」と制し、感情を表に出さないことをよしとして育ててしまうのは、後々への影響が心配です。

問題解決のレパートリーが少ない幼少期は、寂しい、悲しい、つらい、悔しい、これらの負の感情を全て「泣く」で表すことが多いものです。

それにも関わらず、悲しいのに泣けない、悔しくても泣いてはダメ、そんな環境で育つと、将来、その表現が苦手になっていってしまいます。よく見られるのが、次の2パターンです。

ネグレクト型

長いこと自分の感情に触れずに行くと、自分の気持ちはもちろん、相手の気持ちに寄り添うことも苦手になりがちです。

たとえば、誰かが泣いたり、叫んだり、強い感情を出している場面では、どうしていいか分からないため、極力関わらないようにしたり、その場から逃げだしたり……。これでは人間関係で行き詰ってしまいます。

親が子どもの感情的な欲求に応えずに育ててしまうことを、「Childhood Emotional Neglect (CEN)」と言います。子ども時代の感情的なネグレクトのことです。

ネグレクトというと、育児放棄のような「ひどい育児」を語るときにしか使われないイメージがありますが、実は、子どもの感情をスルーすることも、ネグレクトの1つなのです

親が子どもの感情をネグレクトしてしまうと、その子も大きくなって、自分や他者の気持ちをネグレクトするようになる……。このような悪循環を避けるためにも、感情を押さえつけてしまうのはよくありません。

衝動型

こちらは男の子に多いパターンです。一般的に、男の子は、女の子よりも“コーピングスキル”のレパートリーが少ないと言われています

コーピングスキルとは、マイナスの状況に置かれたときに、それを何とかやりくりするための能力のことで、分かりやすく言えば、ストレス対策のようなものです。

女性は泣いたり、弱音を吐いたり、おしゃべりでストレスを解消したりと、男性と比べ、感情を浄化するのが上手と言われています。

男の子だから、悲しくならない、辛くならないわけではありませんそれなのに、対処できるコーピングスキルを持ち合わせていないと、感情を衝動的に解決しようとしてしまいます

暴力、依存症、そして自殺に走るのが男性に多いのは、これが関係しているとも言われています。小中高校生がいじめなどを苦に自ら命を絶つケースを見ても、男の子が女の子の約2倍です。いかに男の子が負の感情の吐き出し方に困っているか、親はこの状況を真摯に受け止めなければなりません。

「男の子なんだから泣かないの」と感情を封印しても、それで感情が消えるわけではありません。それを見て見ぬふりをしてしまったら、その感情はどこに行けばいいのでしょう? 感情を上手に処理する力が必要なのです。

親の働きかけでコーピングスキルは伸ばせる

「泣いちゃダメ」はよくない。でも、だからといって、わが子が泣いてばかりいたら、やっぱり親も気持ちが落ち着きません。できれば、泣かれるよりも、笑っていてもらいたい、親ならそう思います。

そんなときは、「泣いちゃダメ」で泣く回数を減らそうとせずに、「泣かなくてすむ働きかけ」で、堅実にその回数を減らしていく方法がおすすめです

まず、見極めたいのは、その子にとって「泣くこと」が唯一のコーピングスキルになっていないかということです。

よくあるのが、「泣けばなんとかなる」「泣くと買ってもらえる」「泣くとママがかまってくれる」というようなケースです。泣くことが目的達成のための手段になってしまっている場合は、泣いていない時間の質を高めるとその回数が減っていきます。

「泣かなくてもママはかまってくれる」「泣かない方が得策だ」と泣きに頼る必要がなくなるからです。一緒に遊んだり、スキンシップを増やしたりと意識的に育児の時間の質を高め、泣くこと自体を減らしていきましょう。

そして次に取り入れたいのは、その子のコーピングスキルを増やす働きかけです。具体的には、

・寂しい、悲しいからくる「泣き」は、甘えさせることで解消させる(例:抱っこする、ハグして安心させる)
・つらい、悔しいからくる「泣き」は、寄り添って励ます(例:一緒に練習する、とことん話を聞く)

このように、泣く以外にも、心のフラストレーションを解消する術は色々あるんだよということを体感させ、自分の中で上手く感情を浄化していく感覚をつかんでもらうのです。そのレパートリーが多いほど、上手く立ち回れるようになります。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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