【海外の女性活躍事例2アメリカ】新参メディアを「ピューリッツァー賞」へ導いた、母の深い愛と信念

【海外の女性活躍事例2アメリカ】新参メディアを「ピューリッツァー賞」へ導いた、母の深い愛と信念

「海外の女性活躍事例」として、前回はフランスのマルレーヌ・シアパをお送りしました。今回はアメリカより第2回目、「The Huffington Post」(以下ハフポスト)の共同創立者アリアナ・ハフィントンについてご紹介したいと思います。

日経DUAL記事

初のピューリッツァー賞を受賞した「ハフポスト」

もともと、ハフポストは2005年にブログから始まったニュースサイトで、当時はまだインターネットでのニュースサイトが現在ほど浸透していませんでした。そのようななかで政治、健康、教育、スポーツ、生活などさまざまなジャンルを扱い、さらにその記事に対しコメントがつけられるようになっていました。

そのコメントには、ほかに類を見ないほどの多数分野における著名人たちが参加し、記事によってはかなりの量のコメントで議論が白熱することもあったのです。

また、2012年には、ジャーナリストのデイビッド・ウッドによる「Beyond the Battlefield(戦地を越えて)」シリーズがピューリッツァー賞を受賞したのです。印刷物を持たず、ブログとして、そして営利事業としてのネットメディアとしては初受賞であり、これによって「ハフポスト」は一躍脚光を浴びました。

ハフィントンの栄光の土台にある母親の影響

新参メディアを「ピューリッツァー賞」へ導いた、母の深い愛と信念

By Yahoo from Sunnyvale, California, USA – 488067325, CC BY 2.0, Link

このハフポストを育て上げてきたハフィントン、2009年にはフォーブズ誌で「メディア界で最も影響力のある女性」の12位に、そしてガーディアン誌「メディア界のトップ100人」の42位にも選出されました。

女性としてもビジネスマンとしても、華々しい限りのハフィントンですが、彼女は母親からさまざまな影響を強く受けながら育ってきたと語っており、インタビューや本、自身のブログポストでも、母親についてよく書述しています。

「失敗を恐れないこと、どんな問題にも解決策は見つけられること」など、母親から人生について教えられたことは数知れないといいます。彼女が受けたという「母の影響」とはどんなもので、そこから、どのようにして現在の地位にまで登りつめたのでしょうか。

ギリシャのアテネで生まれ育った、ギリシャ系アメリカ人のハフィントン。「『週4時間』」だけ働く。」の著者であるティム・フェリスのポッドキャストに出演した際、「母親の応援なしにはケンブリッジ大学への入学は出来なかった」と、入学の希望を家族に話した際のエピソードを語っています。

英語もろくに話せず、経済的に裕福でもなかった彼女が「ケンブリッジ大学へなんて入学できるわけがない」と誰も真面目に耳を傾けませんでした。しかし、母親だけは「どうすれば入れるか調べて見ましょう。何か方法があるはずよ。」とハフィントンの夢を笑い飛ばしませんでした

さらに、フェリスが「あなたの社交術は本当に見事で見るたびに感心します。」というと、ハフィントンは「私はこう見えて内向的なんです。一人でいるのも寂しくないし。でも、人のことが大好きで、人と人をつなぐことも大好きです。」そんな「人好き」なところも、母親の影響が色濃く表れているようです。

新参メディアを「ピューリッツァー賞」へ導いた、母の深い愛と信念

現代の常識や忙しさにとらわれない心の余裕と信念

ハフィントンは、著書「Thrive: The Third Metric to Redefining Success and Creating a Life of Well-Being, Wisdom, and Wonder(サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功)」の一節で「母は経済的には裕福ではありませんでしたが、時間に関しては大変リッチな人でした。」と述べています。

これは、母親がヒマを持て余していたというわけではなく、時間を使う上で大事なものは何か、自分にとっての優先順位をよく理解していたという意味です。

ファーマーズマーケットに行けば、やらなければならないことや家事が、どんなに家で残っていようとも、出店農家の人たちと世間話をしのんびりと買い物をする。そんな「裕福な」時間の使い方をする人だったのです。

だからこそ母親は、常に追われる現代社会において、私たちが知らず知らずのうちに行っている「ながら生活」を大変嫌ったようです。ハフィントンは「最後に母に叱られたのは、私がメールをチェックしながら子どもたちと話をしているのを見られたときです。」と述べています。

その母親も2000年に亡くなりましたが、遺骨は本人の希望により海に撒かれ墓石はありません。その代わり、庭にレモンの木を植え、その下に、彼女の人生の哲学であった「Donʼt miss the moment.」という言葉が彫られたベンチを置いたそうです。

何でもルーティンワークのようにこなして行くのではなく、きちんと自分の意識を向け物ごとに取り組むこと。多くの人々が、自分のタスクや時間に追われている現代において、改めて意識し直すべきことなのかも知れません。

新参メディアを「ピューリッツァー賞」へ導いた、母の深い愛と信念

倒れるまで働いて直面した人生の転換期。自分にとっての「成功」とは何か。

ハフィントンは寝る間も惜しみ、仕事と育児に専念してきました。2007年、ついには疲労と睡眠不足で倒れ、その際に頬骨を骨折し、血だらけになって気を失ってしまっていたと言います。

そんな自分を振り返り、成功とは何なのかを改めて考えたそうです。どんなに仕事で成功しても健康でなければ、そして本当に大切なものと向き合うことができなれば、それは「成功」と言えないのではないかと。

それ以来、彼女は「睡眠を十分に取って身体をきちんとケアすること」の大事さをさまざまなメディアでも訴えています。

そして、2015年にはハフィントンポストを離れ、新たなスタートアップ企業「Thrive Global」を設立し、会社組織と消費者のストレスマネジメントと生産力向上のための活動に専念しています。

「Thrive Global」はハフィントンの「母親の教え」や、自分が倒れるなどの失敗から学んだ「気づき」があったからこそできた会社なのでしょう。

いつまでも心に残る母親の言葉

Failure is not the opposite of success, itʼs a stepping stone to success.(失敗は成功の反対ではなく、成功への踏み石である。)」これはハフィントンが数々のインタビューやブログポストで「母親が私に繰り返し言ったこと」として述べている言葉です。

子どもの失敗は、親にとって自分が失敗をする以上に心が痛むもの。しかし、ハフィントンの母親のように子どもの自立や成功を願い、前に進ませていくためには、失敗を防ぐばかりではなく、失敗する子どもの姿を恐れず見守る、そして、本当に必要なときにそっと手助けをするということが大切なのかも知れません。

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mentorship
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参考URL:
Wikipedia「Arianna Huffington」
Wikipedia「HuffPost」
Wikipedia「Andrew Breitbart」
HUFFPOST「BEYOND THE BATTLEFIELD」
HUFFPOST「Huffington Post Awarded Pulitzer Prize」
HUFFPOST「My Mother: The Ultimate Fearless Role Model」
HUFFPOST「‘Don’t Miss the Moment’: A Tribute to Our Mother」
HUFFPOST「My Mother’s Death: One of the Most Transcendent Moments of My Life」
HUFFPOST「This Mother’s Day: Remembering My Mother」
THRIVE GLOBAL
THE BIG ISSUE「Arianna Huffington: ‘I have let myself fail many times’」

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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