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【2020年度版】コロナ禍でも私立・国立小学校受験者数は増加傾向に!幼児教育のプロたちが語る、2020年コロナ禍の小学校受験の最新事情

【2020年度版】コロナ禍でも私立・国立小学校受験者数は増加傾向に!幼児教育のプロたちが語る、2020年コロナ禍の小学校受験の最新事情

森上教育研究所の主催で開催された私立小学校向けの「2020年入試 首都圏小学校入試の結果と分析セミナー」。伸芽会の飯田道郎先生、ジャック幼児教育研究所の吉岡俊樹先生、理英会の宮内仁志先生という大手幼児教室3社が一同に会するという他にはないセミナーとなりました。幼児教育のプロたちが語る、コロナ禍での小学校受験の実情や2021年度の小学校入試の予測、私立小学校の動向についても詳しくお伝えします!

司会進行は、品川翔英小学校の髙山松三教頭先生です。

日経DUAL記事

コロナ禍でも私立・国立小学校受験者数はともに増加傾向に

まずは、教育図書21の新中義一氏による、2020年の国立私立入試全体を振り返りから。

__2020年の受験者数の推移について教えてください

私立小学校に関しては、ここ数年で特に女子の伸び率が高い傾向にあります。2020年全体を見ますと、東京23区内外、神奈川県ともに伸びています。千葉県に関しては、今年は減少傾向にありました。理由としては、11月中旬に入試を早めた小学校の入試もあったので、その影響を受けているかもしれません。埼玉県は順調に伸びていて、5年前の2倍に近い受験者数となっています。

__全般的に小学校受験者数はコロナ禍でも増えていますか?

都内の小学校受験は11月1日が解禁日にあたるので、そこの数値を見るのですが、2020年は11月1日が日曜日だったため今年は正確な判断が難しい部分もあります。ですが、応募者500人以上のいわゆる私立の超人気校では、ほとんどの学校で受験者数が増えています。

都内の国立6校に関しても、すべて応募者増というのは震災前以来のことです。つまり、これまで小学校受験を考えなかった層も参入してきたのではないかと言えます。

__併願校に動きはありましたか?

9月下旬に模試を受けた受験生の志望校状況での判断になりますが、併願校が2019年9月は2.7校だったのに対して、2020年9月は3.3校でした。コロナ禍で手軽なweb出願が増えたことが、併願校の増加につながったのではと見ています。

また、コロナによる一番印象的だったこととしては、筑波大学附属小学校が入試を1ヵ月早めてきたこと。第一次抽選で志願者を絞り込んだため、今年は過去最高の補欠合格の繰り上がりが回ってきているそうです。

幼児教室はコロナ禍の小学校受験をどう乗り切ったのか(伸芽会 飯田先生)

続いては、伸芽会の飯田先生による2020年度私立小学校の入試のポイント解説です。

__コロナ禍の入試、幼児教室で起きた変化とは?

学校見学などの発信はリモートに、手続きはweb中心になりました。緊急事態宣言下での心配ごととしては、例年よりも体験が不足しているのではないかと言う点です。幼児教室での対応もかなり悩みました。とはいえ、密を避けつつ行ったリモート説明会は、保護者にとっては情報が取りやすくなったというメリットもありました。

面接に関しては、マスク着用の会話を想定して行うことになったので、子どもたちへは負担が増えたとも言えます。試験に関しては、筑波大学附属小学校の日程変更は大きかったですね。さらに、慶應義塾幼稚舎の試験で行動観察が消えたり、運動試験で器具を使わない学校があったなど、コロナ対策を重視した試験も多くもありました。関西では兵庫の関西学院初等部など、面接だけにしたところもあったようです。

__保護者の意識の変化とは?

緊急事態宣言による休校中の各小学校の対応に差が出たことで、公立と比較した私学の魅力的な取り組みに保護者の方から関心が集まったように感じています。それらが、私学の応募者増につながっているのではないでしょうか。

__2021年の入試をどう見ていますか?

コロナの感染状況にもよりますが、一番は4月以降に入学する新入生を見て学校側も2021年の試験内容を判断されていくのではないでしょうか。学校側はwebを上手に活用した告知やアピールも活用していただきたいですね。とはいえ、コロナ禍で親御さんの働き方も変化し、教育の場の必要性が高まっていることは間違いないと思います。

__伸芽会が考えるコロナ禍の入試の乗り切り方とは?

キーワードは、2020年教育改革でも掲げている“非認知能力”を可視化することだと考えています。コロナ禍での入試は幼児教室もご家庭も学校もピンチをどのようにチャンスに変えていけるかがカギとなってきます。

長期的に考えると私学の教育はとても魅力的です。伸芽会では私立小学校の進学は“わが子へ贈る最高のギフト!”と考えています。今後は地方にもこういった発信をしていきたいですね。これからも、幼児教育の重要性をアピールしつつ、入学後の学びの基礎は遊びの中にあるという考えでしっかりと取り組んでいけたらと思っています。

動画やタブレットを導入した学校も!2020年のペーパー試験分析(ジャック吉岡先生)

__続いては、ジャック幼児教育研究所の吉岡先生より、2020年入試におけるペーパー試験の分析をお願いします

今年目立ったのが、ペーパー試験に動画などのモニターを用いた学校が多かったことです。

長年実施してきた個別テストをペーパーテストに代えた学校や面接にzoomを導入する学校など、コロナによって学校側も新しいことを取り入れることへの抵抗感がなくなってきた印象はありますね。

__ペーパー試験にモニターや動画を用いるメリットはありますか?

たとえば、幼児にはわかりにくい空間認識能力を問う問題も、動画の方が問題をイメージしやすいので、何を問いているかが分かりやすかったという声がありました(さとえ学園小学校)。運動のお手本や製作物の見本などは動画なら見やすく、全受験者が同一のものを見ると言う点でメリットがあり、今後も増加する可能性があります。

__タブレットを1人1台用いた学校もあったそうですね

受験者に1人1台タブレットを渡す学校もありました。これだとさらに公平性が保てますよね。また、制作過程は自分で課題の動画を巻き戻せたりと自由に操作できる学校もありました(慶應義塾幼稚舎)。今後は、ペーパーテストの課題にタブレット回答を取り入れる学校が増えて来るかもしれませんね。学校側も、採点ミスや確認作業が大幅に削減できるメリットがあるからです。

__他に印象的だったペーパー試験はありますか?

慶應義塾横浜初等部のペーパー試験では、月齢によって問題の難易度を変えるというものがありました。見る絵は同じで質問する表現などが変わるだけなのですが、高月齢は複雑化した問題となっていました。

位置の要素に、論理的思考や記憶も併せた複合問題も見られました(日本女子大附属豊明小学校、雙葉小学校)。立教女学院小学校、暁星小学校などでは、生活や日常の常識を問う問題も増えており、なんとなく日々を過ごしていると解けない問題も多かったと思います。

個別テストでは、「子どもがどう考えているか」を理解して自分の言葉で説明する問題(聖心女子学院初等科)や、形容詞の「〇〇い」がつくことばを考える問題(成城学園初等学校)、目をつぶって音を聞く(桐朋小学校)といったものも。これらはすべて、受験のテクニックを求めているのではだめだということが言えると思います。

コロナ禍でもうまく密を回避しながらコロナの変化を逆手にとって工夫していた学校が目立った印象でした。

行動観察試験の自粛で幼児のコミュニケーション力をどう見るかが課題(理英会 宮内先生)

最後は、理英会の宮内先生による、2020年に実施された行動課題の傾向とコロナ禍での変化点の解説です。

__コロナ禍の入試を振り返って印象的だったことはありますか?

理英会では2020年に1381人が受験し、1人あたりの受験校は平均2校でした。エリアによっても違いがありますが、東京は2.8校。コロナで試験時間が短くなり、多い人では1日3校と、複数校を受験できたのが理由です。千葉の併願校数が1.5校と減少しましたが、コロナで東京からの通学を敬遠した可能性もあると思います。

志望校の選び方に関しては、それまであまり興味がなかった学校もweb上で見られたので選択肢が増えたという声が多かったのも印象的でした。

__緊急事態宣言下での学力の影響はありましたか?

理英会が6月に実施した模擬テストでの比較になりますが、知能(ペーパー)は休校中でも基本的には落ちず、むしろ例年よりも高い結果になりました。コロナ禍でも家庭学習をしっかりされていた生徒さんたちの結果が出たと言えます。改めて家庭学習の大切さを実感しました。よって、コロナ禍でも試験の難易度を下げる必要はなかったという見解です。

__行動観察試験はコロナ禍でどのような変化がありましたか?

考査会場の密を避けてグラウンドや体育館などに変更したり、課題をとりやめたり、内容を変更したり時間短縮するなど、70.5%の小学校がコロナ禍で入試を大きく変更したという結果が出ています(理英会調べ)。

具体的には、田園調布雙葉小学校が集団課題をなくし、日本女子大附属豊明小学校は自由遊びを教室探検にし、暁星小学校はビニール手袋をして積み木課題をするといった対応がありました。

全体としては、教室を移動せず、教室内の小グループですべての課題を実施する学校や、輪になっての口頭試問や行動観察、運動課題をなしにした学校が多く見られた印象です。

__考査時間に変化はありましたか?

通常5時間半行われる試験が2時間に短縮するなど、コンパクトにまとめた学校が多かったです。学校側も巧緻性課題や共有道具を使った課題がない状態で、幼児期のコミュニケーション能力を見るのは難しかったのではないのでしょうか。

集団行動の試験においても、今後は“非認知能力”が重視されていくのではないかと考えています。幼児期にどう伸ばすか、入試でどう見ていくかが課題となると思います。

__コロナ禍での入試、学校側に期待すること

2020年の小学校入試は、コロナによる不安で仕方なかった保護者、思うように指導ができず大変苦しかった幼児教室も多かったと思います。そんな中でも家庭でお子さんと向き合い学習しながら乗り越えていかなければならず、私たち幼児教室も家庭教育の大切さを実感しました。

コロナ禍の入試で学校側に求めるのは、Webでの情報発信力です。具体的にわかりやすく、保護者が求める情報を発信してほしいと思います。また、さまざまな課題もあると思いますが、子どもの様子を知るために、ペーパー試験だけでなく、行動観察面も見てほしいと思います。新しい時代の中で、それぞれの学校のよさをどんどんアピールしていただき、早い時期に入試情報を公開いただけたら保護者も安心するはずです。理英会でも全力でサポートしていきます。

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
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