【公認心理師監修】親子げんかの対処法 ~年齢別の特徴や仲直りの仕方、NG行動まで~

【公認心理師監修】親子げんかの対処法  ~年齢別の特徴や仲直りの仕方、NG行動まで~

子どもに何か注意したら、それが引き金となって、親子でエンドレスな大げんかになってしまうケースは非常に多いものです。夫婦間のけんかも苦痛ですが、親子間でも同じ。できればけんかはない方がいいですし、してしまった場合もひどくしないうちに仲直りできればベストです。そこで今回は、心理学的な見地から、子どもの年齢別の親子げんかの特徴や仲直りのヒント、親自身の心のケア、やってはいけないNG行動についてお伝えしていきます。

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親子はなぜぶつかる? 親子げんかの主な原因

親子げんかの場面を見てみると、子どもと言い争いになる状況というのは、ざっくり分けると次の2つのどちらかです。

・やめるべきことを、やめなかったとき、余計にやってしまったとき
・やるべきことを、やらなかったとき、怠ったとき

つまり、子どもと親の行動の方向性が反対のときに起こります。こういう場面に遭遇した時、親はまず注意したり、叱ったりするもので、それでも解消されない場合に親子げんかに至る、こういうケースが大半でしょう。

親子げんかの原因は、「親子の進みたい方向性が反対だから」。親と子の行動の方向性が一緒ならいざこざは防げますが、望ましくない行動を取ったにもかかわらず、それを許容してしまっては後々問題になります。親子げんかを避けたいがために、子どもの言うことを聞いてしまうのは根本的な解決にはなりません。

親と子は別々の人間ですから、行動の方向性が同じときもあれば違うときもあります。意見の相違はあって当然と言えば当然なので、そこ自体を問題視するよりは、けんかしてしまった場合にどう仲直りするか、どうすればひどいけんかにしなくて済むか、そこを見ていくことが現実的だと思います。

年齢別、仲直りの仕方を心理学からアプローチ

まずは年齢ごとに、ありがちな親子げんかの展開やそのときの子どもの心理、そして仲直りのヒントについて見ていきたいと思います。

1~3歳

【ありがちなパターン】
この時期は、まだ言語の発達過程にあるので、親の方も、「あぁけんかになっちゃった」と感じるよりは、「癇癪起こして困っちゃう」と子どもの取り付く島もない様子にどう対処していいものかと悩むことの方が多いと思います。双方で言い争いをする“けんか”というよりは、子どものイヤイヤに親がイライラする時期と言えるでしょう。

【子どもの心理】
この年齢は、自我の芽生えの時期ということで、自分のやりたい方向性が強く出始めます。しかし、自分の言いたいことをまだ言葉でうまく表現できないので、泣く、わめく、寝転がってバタバタする、のように感情や行動で表すことが多くなります。

【仲直りや対処のヒント】
親が声かけでいざなうことは大事なことですが、言葉だけでは伝わりきらないことも多々ある時期なので、子どもがこだわっているポイントから目線をそらしたり(例:「お外に行ってみよう」)、ほとぼりが冷めるまで少し離れて待つというのも解消材として役立ちます。

4~6歳

【ありがちなパターン】
言語の発達に伴い、「どこでそんな言葉覚えたの?」と言うような切り返しをされて、親がショックを受けたり、逆ギレしたりと、けんかの場面で子どもの成長に驚く方もいるでしょう。言葉尻をつかんだ物言いが、親の感情を逆なでするのもこの時期によくあるパターンです。

【子どもの心理】
この年齢では、まだ相手がどう感じているかを察することは難しく、それにより一方的に自分の意志を押し出そうとしがちです。それが憎たらしい言い方に聞こえることもあるかもしれませんが、まだ複雑な思考をしているわけではないので、親の気持ちに波風を立てようというような悪意のある考えはありません。事はもっと単純で、どこかで学んだから使ってみたというものです。よって、親自身がその悪いお手本にならないように気をつけていく時期とも言えます。

【仲直りや対処のヒント】
「他者とどう接するか」と社会性を日々学んでいる時期なので、日ごろから、親が子どもに伝えていきたいなと思っていること(例:ごめんねを言う、傷つけることを言わない、相手を押さない、など)を親自ら示していくようにし、柔らかな姿勢が関係性をよくすることを体感させてあげてください。さらには、けんかをしてしまったときの仲直りの儀式のようなものをあらかじめ決め、いざというときのために2人で練習しておくのも有効です(例:おでことおでこを合わせる、「なかなおり」と声を合わせて言う)。

7~9歳

【ありがちなパターン】
この年齢になると、言葉も巧みになってきて、それとともにけんかの際に言い返してくる内容もきつくなってくることがあります。それにより、親からすると、「可愛らしさがない」と感じることも。「ああ言えば、こう言う」と口答えがこれまで以上に達者になるので、気づいたら同じ土俵に乗って戦ってしまったということも多いでしょう。

【子どもの心理】
この時期になると、「こうやればこうなる」というパターンが子ども側にも見えてきて、それを見越してけんか腰になっていることも。親がけんかに乗ってしまうことで事態が長引き、それが子どもにとっては「ラッキー」に映ってしまうこともあります(例:「おかげでテレビをつけたままでいられた」)。

【仲直りや対処のヒント】
嬉しいはずの成長が、「生意気」と映ることもあり、親がイライラさせられることも多いですが、同じ土俵に乗ってしまうとこじらせてしまいます。親の精神状態を揺さぶられることが多いので、何より大事なのは自分自身のケアと言えます。土俵に乗らないで済む自分なりのパターン(例:2メートル離れる、おまじないの言葉をつぶやく)を見つけておけるとベストです。

「仲直りができない!」「常に親子げんか気味」という場合

以上、年齢別にお伝えしましたが、中には、「こんなくらいでは解消されない」「毎回ヘトヘトになるほど振り回される」という方もいると思います。もしイヤイヤ期以降も、「ずっと同じペースで反抗が続いている」とか、「収まるどころか年々ひどくなる」というような場合は、家庭の中で子どもが権力や決定権を持ってしまっていて、バランスを損ねていることがあります。

そういう場合は、大きなテコ入れが必要になることもあります。ポイントとしては、子ども自身が、気持ちを制御したり、ちょっとがまんをしたりという経験を積み、「世の中には自分の思い通りにはならないこともある」ということを経験する、このようなことが必要になってきます。

もし小さい時期に、好きなことを好きなだけやってきたという場合、小学校に上がって宿題などで忙しくなってくると、時間の使い方に矛盾が出てきてしまい、それが親子げんかの引き金になりがちです。宿題があるのに、自分のやりたいようにやりたい気持ちを抑えられずに、結局パパやママに怒られて、親子げんかに至るというパターンです。

このような場合、仲直りも大切ですが、それ以上に親子げんか自体を減らす仕組みづくりの方が先決と言えます。そのためには、お家のルールを明確にし、それを守る働きかけをすることが求められますが、それまでのやり方との違いに、いったんはよけいに親子げんかが増えてしまうこともあるでしょう。しかし、いつまでも気持ちの制御が苦手では、その子自身が将来的に困ってしまうようになるので、少しずつでいいので改善を図ることが大切です。こういうときは、ほんの少しでも前進したら、ほめていくことが肝心です(例:家で勉強を全くしなかった子が10分するようになった)。親からしたら完ぺきとは言えない行動をほめるのは気が進まないかもしれませんが、できたところからほめてモチベーションを上げ、けんかの数自体を減らせるよう意識してみてください。

親だってイライラ!そんな気持ちはどう抑えればいい?

私の育児相談室でもよくお伝えすることですが、「怒り=悪」ではありません。「あなたの思いに反することが起ころうとしていますよ」というサインなので、親が子どもに対し怒りを持ってはいけないということではないのです。

問題は怒りを持つことではなく、怒りをどう表現するか。このあとの項目でお伝えするような、子どもや自分自身に悪影響を及ぼすような怒り方をしてしまうのがNGなのであって、怒り自体は人間に備わった大事な感情のひとつです。これがなければ、私たちはやられたらやられっぱなしになってしまいます。

健全に怒りを出すためには、自分で自分の怒りを増長させない工夫がポイントになります。と言うと、「いやいや、この子が○○するから怒りが湧き起こるのであって、自分のせいではない」という思いが出るかもしれません。たしかに、お子さんの行動が怒りのきっかけになっているのは間違いないでしょう。しかしそれをどれくらい膨らましてしまうかには自分が関係しています。

心理学で言われているのは、たとえば子どもがコップの水をこぼしたとき、
「またやった」
「何回やれば気が済むの!」
「ごはんだってすぐこぼすし、最悪」

このような言葉を心の中でつぶやくと、怒りが増してしまうということです。

特徴としては、過去の事例を引き出したり、あれもこれもできないと事態を広げてしまっているということ。目の前で起こっている1つの事件(=コップの水をこぼす)が、昨日もおとといも、あれもこれもと広がってしまうことで、怒りがより大きいものへと変わってしまうのです。子どもに正当な怒りを伝えるためには、自分の心の中で事を炎上させないことが非常に大事になるので、まずは落ち着いているときに振り返り、自分はけんかの始まりから最中にかけて、どんなことを心の中で叫んでいるかをチェックしてみることをおすすめします。日常会話でも口ぐせがあるように、心の中の叫びにもその人のくせがあり、その特徴に気づけると、現場での怒りのコントロールに役立ちます。

親子げんかでやってしまいがちなNG行動と対処法

最後に、親子げんかのときに言わない方がいい言葉ややらない方がいいNG行為について見ていきましょう。

その1 過去の失敗を持ち出す

ひとつ前の項でも触れましたが、過去の出来事を持ち出すと怒りが増長されがちです。また子ども側からすると、「叱られている的がずれている」と受け取れます。大事なのは、たった今起こっている目の前のことの方向性を変えていくことなので、そこに集中するためにも“今のこと”から的をそらさないことが大事になります。

その2 何日も口を聞かない

けんかがエスカレートしてしまうと、仲直りをするにも、とりあえずの一歩目が出ないことがあります。でも歩み寄れないまま、翌日まで持ち越しというのは親子間では避けるべきです。そういうときは、「おはよう」「ごはんだよ」「いってらっしゃい」「おかえり」など、いつも言っている言葉から声掛けするとやりやすいと思います。

その3 頑なに謝らない

子どもとのけんかで同じ土俵に立ってしまうと、つい意固地になってしまうものです。しかし、傷つけるような言い方をしたとか、感情のあまり威圧的な態度を取ったなど、自分にも悪い部分があったと感じる場合は、「○○してごめんね」と謝るようにしましょう。謝ることで、親の立ち位置を悪くするのではと気になる方もいるかもしれませんが、実際にはそれが仲直りのきっかけになることも多いのです。夫婦げんかでもそうですが、けんかがエスカレートしているときというのは、もはや論点がずれていることが多いもの。親子げんかの場合は、大人の方から歩み寄りをしていきたいものです。

その4 人格否定をする

子ども自身を否定する言葉(例:悪い子、ダメな子)、子どもの存在を否定する言葉(例:生まなければよかった)はNGです。基本的には、親子げんかのきっかけは子どもの“ある行動”であることが多いはずです。その行動について「ダメ」と正すのは親としてすべきことですが、その行動を取ったその子自身を否定するのは深く傷つけてしまうので要注意です。否定すべきは行動であり、その子自身ではないので、“悪いこと”=“悪い子”としないことが大事になります。

その5 手を出す

親子げんかがエスカレートすると、子どもが親を押してきたり、叩いてきたりすることがあります。そういうとき、親の方も思わず手が出てしまいそうになりますが、そこは何とか我慢してください。手を出すよりは、その場に背を向ける方が賢明な対処です。けんか自体の問題解決にはなっていませんが、叩くことは児童虐待防止法でも禁じられているように、もっともすべきでない行為のひとつです。あまりにひどいけんかが繰り返される場合は、家庭の中でなんとかしようとせずに、専門家に相談したり、周りに支援を求めることも大事な判断です。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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