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子育て

運動神経は遺伝より環境! わが子に運動を好きにさせるには?

運動神経は遺伝より環境! わが子に運動を好きにさせるには?

現代の子どもたちは運動不足・体力低下が懸念されていますが、新型コロナウイルスの流行でさらにその問題が加速しそうです。

遊びや運動の機会が減っている今、親としてどのようなことをしてあげればいいのでしょうか。また、運動が好きな子どもに育てるコツとは…。日本代表選手のフィジカルコーチなども経験しているスポーツトレーナーの遠山健太さんに、子どもと運動に関するお話を伺いました。


遠山健太さん

スポーツトレーナー。2004年より全日本スキー連盟フリースタイルスキーのフィジカルコーチを担当。現在、スポーツの適性診断やジュニアアスリートの育成システムの研究・指導を中心に行っている。著書に『わが子の運動神経がどんどんよくなる本』(学研プラス)、『わが子の潜在力を開花させる スポーツ子育て論』(PHP研究所)、などがある。“子どもたちの運動神経を育てる”運動教室『リトルアスリートクラブ』の代表トレーナーも務めている。
リトルアスリートクラブ【水道橋、表参道、自由が丘、都立大学など都内を中心に展開。2歳から小学校低学年までのクラスあり】http://little-athlete.com/

 

日経DUAL記事

運動習慣をつけると意欲や効率がUPする!

__新型コロナウイルスの影響もあり、子どもたちの運動不足が心配されていますが

この状況がいつまで続くかまったく読めないので、今は収束しないということを想定していろいろな方策を考えていかないといけないと思います。今後はどちらかというと外遊びを重視していくことになるでしょうね。また、学校は継続してありますので、学校体育に期待するところもあります。外遊びと学校体育、この2点をしっかりやっていれば、運動不足に大きな懸念はないと思います。

__もし運動不足が続くと、子どもの成長にどのような影響があると考えられますか

走ったり跳んだりする機会が少なくなると、骨の成長が見込めないという危険性があり、子どもの身体的な成長に大きな影響を及ぼすことも考えられます。筋肉の発達や、体の柔軟性などにも問題が出てくるかもしれません。

また、意欲面にも影響があるのではないかと思います。論文などにも発表されていることなのですが、勉強前に心拍数を上げておくと、勉強に対する意欲や効率も非常によくなると言われています。また、運動する子は実行機能(目標を達成するために思考や行動をコントロールすること)が優れていることもわかっています。

運動する機会が不足することにより、この実行能力が低下し、運動意欲はもちろん、勉強や普段の生活に対しての意欲が低下するのではないかと心配です。

__コロナ禍以降、親子で筋トレする方も増えていると思いますが、小さいうちからの筋トレは発達に問題がでますか

骨の成長が未発達のうちに負荷を与えるような筋トレは怪我につながるのでやってはいけませんが、自分の体重を利用した筋トレはむしろやった方がいいです。おすすめは自重でのスクワットや懸垂/斜め懸垂、腕立て伏せ、上体起こしなどです。もし行うなら、上半身、下半身、体幹とまんべんなくやることが大事です。ただし、健康のためにといって、腕立て伏せや腹筋などを毎日無理やりやらせるのはNGです。子どもが楽しんでやるならいいけれど、親が無理にやらせるのは、逆に運動意欲をそいでしまうかもしれません。子どもが楽しくできる工夫も必要です。

子どもの運動神経は、遺伝よりも幼少期の運動環境で決まる!

__遠山先生の新著『わが子の運動神経がどんどんよくなる本』には、運動オンチは遺伝ではなく育つ環境で決まると書かれていますが、それはどういうことなのでしょうか

実は、運動神経という神経はないのですが、運動能力に関係する遺伝子はいくつかあります。もちろん親から良いものを受け継ぐというのは事実ですが、良いものを受け継いだとしても運動をしない状態が幼少期から高校生までずっと続いたら、運動がまったくできない人になります。

逆に、運動面で優秀な遺伝子を特に受け継いでいなくても、運動環境が整った生活を幼少期から高校生まで送った人は、高い運動能力がつきます。

よく、両親の運動オンチが子どもに受け継がれることを心配する方がいますが、そんなことは考えずに、運動する環境を与えることが重要です。

__つまり、親が環境を与えれば一流アスリートにもなり得るということですか

そうです。「中学生からスポーツを始めても遅いですか?」と聞かれますが、遅いことはありません。もちろん早い方がいいけれど、何歳からでもまったく問題ないです。

また、個人的には、幼少期からの英才教育は必要ないと思っています。たとえば、将来サッカー選手になりたいから、幼稚園からサッカースクールに入るというのはいいのですが、一方で他のスポーツや遊びなど、バランスの取れた運動経験をしておくのが理想的です。1週間のうち7日間すべてサッカー特有のトレーニングばかりしていると、体の関節などが消耗し怪我が起きやすくなるというのはトレーナーの目から見てあります。小さいうちは体を作ることをベースにしたほうがいいですね。

体育を教えるのが苦手な先生だと運動嫌いになる場合も!低学年までに楽しむ環境作りを

__中には運動が苦手、嫌いという子どももいますよね

それは間違いなく、小さい頃の環境の差があると思います。未就学児においては、親があまり外で遊ぶ環境を整えていなかったのではないかと考えます。また、小学校に入って嫌いになるという子もいますが、これは体育が理由の場合が多いです。ほとんどの小学校には体育の専任がいなく、担任の先生が教えています。体育は、子どもの好きな授業のトップ3に入る人気教科ですが、逆に、先生が教える苦手な教科で1位2位に入ってしまうという発表もあります。体育を教えるのが苦手という先生にあたってしまうと、正しく体育種目を教えてくれないため、技術の習得が遅れてしまうことに。その結果、運動が嫌いな子は体育が好きになれないまま成長し、運動意欲の低下につながってしまいます。

__運動好きな子に育てるためには、どうすればいいのでしょうか

運動嫌いな子どもはそもそも「外に遊びに行くのが好きじゃない」ので、そこを変えるのは難しいところなのですが、小学校低学年までがチャンスだと思います。遅くとも低学年のうちに、外で遊ぶこと、体を動かすことが好きという思考を与える必要があります。

子どもは遊びたいから遊ぶというのが基本なので、親は、気づいたら子どもが楽しんでやっているという環境、雰囲気をセッティングすればいいのです。難しいけれど、そこをサポートできるのは親だけです。子どもの好きなことをわかっているからこそ、子どもが自然と遊べる空間を作ってあげられると思います。

人と比べず自分の“できた”で成功体験を積み重ねて!

__運動による成功体験が自己肯定感を育むという考えもありますが、実際のところはどうなのでしょうか。

目的達成型の運動教室も多いですし、それを否定するつもりはありませんが、たとえば何かの競技で「レギュラーになれなかったら意味がない」と考えるようになると、それは成功体験を得られるとは思えないですよね。

全部のことをオールマイティにできるようにさせるというよりは、目標が達成できなくても、お子さんの長所や得意なことを発見して教える、それがひとつの成功体験になり、運動意欲の向上につながると思っています。

__遠山先生が代表トレーナーをつとめる運動教室『リトルアスリートクラブ』について教えてください

スポーツに親しむ親子や運動好きな子どもを増やしたいという思いから、リトルアスリートクラブを始めました。うちは目的達成型ではなく、ベースとなる運動神経を育てることをめざすスタート型です。レッスンでは、運動神経を育むのに欠かせない、体を自分の思い通りに動かすために必要な動作 =「基本動作」を経験することを大切にしています。

なかでも、ポイントをおいているのが、代表的なスポーツ、例えば野球、サッカー、バスケ、テニス、体操、陸上などにつながる9つの基本動作です。公園遊びだけでは習得が難しいため、レッスン内で身につけていただけるよう、動きを分解して、オリジナルのプログラムを開発しています。

こちらはサーキットの練習中。

こちらはかけっこの練習中。

こちらは跳び箱の練習中。

「運動が苦手」といって入ってくる方も多いのですが、うちで少しでも運動が好きになってくれて、将来、部活やスポーツクラブに入るきっかけになるといいなと思っています。小さい頃にいろんな動きを経験しておくと、将来、どんなスポーツを選んでも楽しんでできるようになると思います。

__最後に、子育て中のパパママに一言お願いします

我々が指導できる運動教室は週1日だけ、残り週6日は親の出番です。やっぱり子どもの性格をよく知っているのは親なので、一番優秀なトレーナーになれるはずです。方法論を学んで、運動能力を高めてあげましょう。

遠山健太さんの新著『わが子の運動神経がどんどんよくなる本』(学研)が発売中!

1,300円+税 https://hon.gakken.jp/book/2380116700

「僕が日本代表チームのジュニア選手に指導して得られた知見、運動教室をやっている現場の話などをうまくミックスして書いています。幼児期に基本動作を身につけることが、結果につながりますのでぜひ読んでみてください。」

著者プロフィール

大学生の頃よりファッション誌のライターとして活動し、主にインタビューページなどを担当。現在はママ向けライフスタイル誌やWEBに執筆中。小学生と保育園児の男子2人の母。

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