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【前編】想像力を豊かにし、自我と自主性を育てる「シュタイナー教育」とは? 「シュタイナーの教えから紐解く教育法」

【前編】想像力を豊かにし、自我と自主性を育てる「シュタイナー教育」とは? 「シュタイナーの教えから紐解く教育法」

数ある教育法のなかから、ヨーロッパ、アメリカでは”モンテッソーリ教育”と並んでお馴染みのシュタイナー教育。

あらゆる教育が集まるニューヨークでも5歳から12歳までの一貫校として、一般的な選択肢のひとつとなっています。日本ではシュタイナー教育と呼ばれ、黒柳徹子さんの通われたトモエ学園や斎藤工さんが数少ないシュタイナー学校を卒業されたことは、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

子どもが、自由かつ自立した大人になれるよう育てていくシュタイナー教育とはどういったものか、またその奥にある思想とは? ”前編”ではシュタイナー教育に関する基本的な知識、そして”後編”ではシュタイナー学校を通して、その教育法について紐解いてみましょう。

シュタイナー教育はどうやって生まれた? その教育の奥にある”人智学”や”人間観”とは?

ルドルフ・シュタイナー(Woldorf Steiner)はオーストリアやドイツで活躍した哲学者で、ゲーテの研究に没頭後、宇宙がある故に太陽や地球などの天体があり、そこに植物・動物・人間などが存在し生きて育つことができるという、”人智学”という哲学を確立しました。

世界は目に見えるものと見えないもので成り立ち、そのすべては互いに影響し合う関係で繋がりを持っていると考えました。

目に見えない世界は、精神・物質(からだ)・魂(こころ)の3つにわけられ、それぞれに法則が存在し、人間もその世界に住んでいるとされています。さらに、誕生から成人までの間に「精神・からだ・こころのバランスを育てていく」と説き、”人間”は実際に見て触れられる「肉体」、肉体に命を吹き込む「エーテル体」、感情の意味を理解させる「アストラル体」、”私”という自我を構成する魂「スピリット体」という、4つの組み合わせで構成されているとしました。

「7年周期」と「12の感覚」

成長発達の節目は「7年周期」と考えられており、7歳までは、「からだをつくること・体に結びついた意志を教育する」時期です。

大人や周囲のあらゆるものを模倣していくことが基本で、親は子どもの鏡となり”育って欲しいと思う人物像に自分がなる”ことで、子どもはそれを会得します。「無意識的活動」や「毎日の生活リズム」を重視し、「世界は善で溢れている」ということを子どもたちが自然に感じられる環境づくりを心がけてあげるのです。

次に7〜14歳までは「心・感情や想像力を育てる」時期です。

先生や親に従っていくことが始まります。芸術的刺激や世界が美しいということを感じられるような体験や学びを豊富に与えてあげます。しかし9歳になると、今まで付き従っていた親や先生を「他人として意識」し、自分の意志を感じるときになるのです。

さらに14〜21歳は「論理的思考」の時期です。

大人を通してではなく自分の判断で、自分と社会や世界の関係に興味をもち、意識的に関わりながら選ぶことを学びます。そして周りに世界が確かに存在していることを意識し、そこに属していくのです。そのなかで「思考力・判断力・知力」を身につけていきます。

シュタイナーは人間の感覚とは「一般的な5種類(=五感)」ではないと説きました。「物理的感覚」が9種類、「感覚器官を超えた感覚」が3種類でトータル12種類と考え、この12の感覚を「意志感覚」・「感知感覚」・「認識感覚」という3つのグループにわけました。

”意志(に結びついた)感覚”は、肉体的な感覚とも言えるもので「触覚・生命感覚・運動感覚・平衡感覚」。”感知感覚”は、社会や人との関わりのなかで感じる感覚で「嗅覚・味覚・視覚・熱感覚」、最後の”認識感覚”は、心の内面に関わってくる感覚で「聴覚・言語感覚・思考感覚・自我感覚」となり、それぞれを4つずつとしました。

シュタイナー教育が目指す人物像

シュタイナー教育における教育の軸とは、ひとことで言うと「自由への教育」です。ただし自由というのはいわゆる「自由放任」の意味ではありません。子どもが社会へ出た際に自分自身で考え判断し、行動できる「感情・思考力・行動力の自由」を指します。つまり、それは「自主・自立」という言葉に繋がっており、具体的には下記のようなことが求められます。

・社会や他人との距離をうまく取れること
・自分には意志があり、自分をよく知っていること
・自分のやりたいことややるべきことを見つけ、行動できること

さらに”2つの観点”、1つめは「生まれた時点で個性があり、性格はもちろん、成長発達の速度もそれぞれ違う」こと、2つめは「速度は違えど、一定の発達順序は普遍的である」ことを併せ学び、「子どもは親とは”全く別の精神を持つ存在”で親の分身でも所有物でもない」ということを子どもと親が理解していきます。

通常の幼稚園とは一線を画す教育

シュタイナー教育の幼稚園では大きなカリキュラムはあるものの、どんな子どもたちがクラスにいるのかを観察し、それに合わせて”フレキシブル”にやり方を変えます。そのため少人数制のクラスが多く、「何かを強制する」ということも少ないのが特徴です。

たとえば、絵を描くとすると通常であれば、子どもたちみんなが先生の方向を向き、同じタイミングで行うことが多いですが、ここでは、先生がテーブルに準備をしてまず始め、興味を示し近づいてきた子どもに与え、そして共に楽しみます。つまり、子どもたちへ同時に同じ課題を与えるということはしません

「触覚・嗅覚・味覚」を養うために、オーガニック素材を使いパンをこねて焼き、果物を洗って切り、お昼にはそれらをクラスで食べます。子どもたちは手を洗ってエプロンをし、パンをこねたり、好きな形を作ります。

こちらも強要はしませんが、毎日同じことを繰り返すことでそれが習慣化され、始めは興味がなかった子どもも学期が終わるころまでには輪に入るようになり、最後はみんなで楽しく作って食べます。そして、自分たちで作ったものを食べるという喜びを感じるのです。

7歳までは「からだをつくること・体に結びついた意志を教育する」時期とされています。子どもたちには遊びをたくさん与えて学びにつながる土台を築き、上述の「12の感覚を育てる」ことに重きを置くことがあとの人格形成に役立っていくのではないでしょうか。後編では、実際のシュタイナー学校の授業を取り上げ、シュタイナー教育の真髄に触れていきます。

著者プロフィール

世界35カ国に在住の200名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2017年12月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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