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パブリックスピーキングは出来て当たり前? アメリカの学校における取り組み

パブリックスピーキングは出来て当たり前? アメリカの学校における取り組み

社会に出て仕事をしていく上で、大切な能力の一つでもある「パブリックスピーキング」。

アメリカでは当たり前のように幼稚園や小学校の頃から、人前で話すことを”授業の一環”として取り入れています。授業の現場では、実際にどのような取り組みが行われているのでしょうか。それを見ていきたいと思います。

「人前に立つことに慣れる」ための機会を頻繁に設ける

授業中、先生に質問をされ挙手をして答える以外にも、人前で話す機会がいろいろな場面で設けられています。

具体的には、自分が最近楽しかったことや悲しかったこと、記憶に強く残っていることなどをみんなの前で発表する「share time」や、季節のテーマに沿ったもの、自分の宝物などを家から持ってきて発表する「show and tell」といったアクティビティーが挙げられます。

発表が終わると質疑応答の時間を設け、聴く側もアクティブに耳を傾け、聞いた話に対して意見を述べるための練習になります。

このように授業中にクラスの前に立ち、カジュアルな雰囲気の中で話をする時間は、日本でも最近取り入れられてきているようです。

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また、この「share time」や「show and tell」のような活動は、自分の子供が発表する日を親に知らせている場合が多く、前日に親子で何を話したいか相談し、家で練習をしてくることが推奨されています。

人前で話すことに抵抗がなさそうなアメリカ人でも、スピーチをするためには練習が必要だということを小さな頃から習慣づけさせるためです。

それに加え、もう少し大人数の前で発表をする機会も設けられます。娘の通う公立小学校では、どんなことでも分野を問わず、自分の得意なことを発表する「タレントショー」というイベントが開催されます。

歌を歌ったり楽器の演奏をしたり、空手の技を披露する子供がいたりと、自分がやりたいと思うことや得意なことをみんなの前で披露し、人前に立つ自信を養います。

高校生になると、ディベートクラブに所属し競技として討論会に参加する生徒もいます。

「自分の意見を述べること」に慣れるための工夫

日本の教室では、通常は机が黒板に前向きで列になっていますが、アメリカの小学校では多くの場合クラス全体で先生の話や発表をする人の話を聞くエリア、3〜4人のグループにわかれて座るテーブルエリアの2つが教室内に設けられています。

グループワークでは積極的に意見の交換をし、意見の相違がある場合にどのように解決していくか、ということも学びます。

内向的な子供にもチャンスを

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このように自分の意見を人前で述べることを実践、評価する文化ではありますが、内向的で人前で話すことを得意としない子供への配慮を大切にしようという動きも出ています。

「Quiet Power: The Secret Strengths of Introverts, (静かな力: 内向型の人が自分らしく生きるための本 )」の著者スーザン・ケインはその中で、「内向的な子供やティーンは、一人で静かに過ごす時間が大切であることを恥ずかしがらずに主張するべきである」と述べています。

そしてどんなにシャイな人間でも、練習をしたり準備をすることによって、輪ゴムのように自分の限界を伸ばせると言っています。

そのためには教師が、内向的だったりシャイな子供を無理やり人前に立たせるのではなく、自然と人の前で話をする機会を与える工夫をしていくことが重要になります。

例えば、娘が通う公立のキンダーガーデン(日本では1年生にあたる)では、席替えを頻繁に行ってシャイな子供とそうでない子供をグループ内に組み合わせたり、学力レベルの違う子供同士をいれて教え合うことを推進したりしています。

クラス全員の前で話すのは抵抗がある子供でも、小さなグループで自分の知っていることを教えたりしているうちに、自然と自信をつけていくことができるのです。このような工夫がカリキュラムの様々なところに見受けられます。

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親がお手本に

また、これは特に幼稚園や小学校低学年で見受けられることですが、自分の子供のクラスへ行き、子供の前で本の朗読をするボランティア、アートプロジェクトを教えるボランティアなど、親がクラス活動に参加する機会が非常に多くあります。

自分にとって最も身近な存在である親が人前に立って話すなどの姿を見ることは、子供にとって大きな自信につながっていくのです。

このようにアメリカでは、常に人と意見を交わし発表をする経験をしながら教育を受けた子供達が、小さくてもスピーチすることを身につけていきます

机の並べ方を変えるだけで始められる手軽さもあり、グループディスカッションを率先して行わせる形態が日本でも増えつつあるようです。

日本でも、パブリックスピーキングは当たり前であるという感覚を養い、取り組み、経験を積める活動や子供たちが増えていくことに期待します。

参考リンク:
Wikipedia「Debate」
TED Talk「スーザン・ケイン「内向的な人が秘めている力」」
Wikipedia「Susan Cain」

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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