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北欧公立小のAI最新教育、2020年プログラミング教育問題…幼児教育のプロはどう見る?「世界の幼児教育最前線!」~小宮山利恵子さん×佐藤眞理先生のスペシャル対談~

北欧公立小のAI最新教育、2020年プログラミング教育問題…幼児教育のプロはどう見る?「世界の幼児教育最前線!」~小宮山利恵子さん×佐藤眞理先生のスペシャル対談~

「日本の幼児教育が中国人富裕層に大人気」「北欧の最先端のテクノロジーを取り入れた公立小学校がすごい!」…気になるトピックを検証すべく、世界の子どもの教育事情を研究するリクルート次世代教育研究院・小宮山利恵子さんと、長年日本の幼児教育に携わる伸芽会教育研究所・佐藤眞理先生のスペシャル対談が実現しました。

2020年のプログラミング教育を見据えた、これからの日本の教育の課題や親の関わり方も必見です!

小宮山利恵子さん
ベネッセコーポレーション等を経て、「スタディサプリ」を展開する㈱リクルートマーケティングパートナーズ入社。超党派国会議員連盟「教育におけるICT教育促進」有識者アドバイザー。教育新聞特任解説委員。東洋経済オンラインにてICT教育に関する連載を持つ。子どもの貧困によって生じる教育環境格差についての研究も行っている。8月より東京学芸大学にて客員准教授も務める。https://ring.education/team/
佐藤眞理先生(伸芽会教育研究所 主席研究員)
幼児教育指導歴40年。子どもの潜在的な力を引き出す指導と的確なアドバイスで、有名小学校や幼稚園に多数の合格者を送り出している。著書に『伸芽会式 子どもを伸ばす家庭教育「5つの力」』(講談社)。

 

日経DUAL記事

過熱する中国の幼児教育について

__中国で幼児教育が過熱していると聞きますが、本当でしょうか?

佐藤:実際、伸芽会でも日本に住む中国人富裕層の方からの問い合わせがすごく増えています。「日本のいい学校に通わせたい」という思いはもちろんですが、「日本の子どもはなんであんなにじっとしていられるのか!」としつけの面でも注目されているようですね。

小宮山:そうなんですね。中国本土では英語教育が激化しています。アメリカに留学させるのがある種ステイタスなんです。やはり中国人富裕層にとっては、いい学校を卒業した後の人脈が仕事をする上でモノを言うようで…。

佐藤:中国の方たちは教育にお金を惜しまない印象ですが。

小宮山:その通りです。英語教育でも「高いほどいい」と思っているので、教材や教室も安いと売れないそうです。日本式の幼児教育もそういった意味でも注目の習い事なんでしょうね。

佐藤:ただ、日本でお受験をするとなると、親御さんのマナーやモラルも日本式に合わせないといけないので、たとえば「紺色のお受験ルック」や「面接では足を組まない」といったお受験マナーに苦労されている方も多いようです。

小宮山:先日のワールドカップのロッカー掃除もそうですけれど、給食当番や日本の学校の掃除といった日本の道徳は今や世界に誇る文化ですからね。海外の方が真似しようとしても、そう簡単にできるものじゃないでしょうね。

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日本の子どもに足りないのはメンタルの弱さ?

__中国の子と日本の子を比較して、何か違いを感じることはありますか?

佐藤:メンタル面は大きな違いを感じます。授業をしていても、日本は「失敗しちゃいけない」と考える慎重な子が多いですが、中国の子はとても積極的で、「間違えても気にしない」という強さがありますね

小宮山:ええ。アピール力という意味では、大人も子どもも中国は本当にすごいですよね。接していても強いエネルギーを感じます。日本は完璧を目指しがちなんでしょうね。でもそれでは、これからの総グローバル化時代を生きる日本の子どもは負けてしまいます。頑張らないといけない課題のひとつだと思います。あとは、お金に対する感覚も違うかなと。中国人は先ほどもお伝えした通り、「高いモノ=いいモノ」という認識ですが、日本人はシビアですよね。

佐藤:親御さんの子育て観も違いますよね。日本人は「仕事も子育てもお母さん」と負担が多いように思いますが、中国の方は、「おじい様おばあ様が子育てをして、お父さんお母さんはお仕事をする人」というイメージがあります

小宮山:ええ。一人っ子政策は解禁されましたが、まだまだ親世代は一人っ子が多いので、親は孫も熱心に育てていますね。祖父母=子どもを育てる人、両親=働く人という役割分担も日本と違って明確な気がします。日本の働くお母さんはどちらもしていて大変ですよ(笑)!

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北欧の最先端公立校はゲームで授業する!?

__小宮山さんは先日、フィンランドの公立小学校を視察されたようですが、いかがでしたか?

小宮山:この写真を見てください。ここは、ヘルシンキのいわゆる標準の公立小学校の授業風景です。設備も最新のテクノロジーを取り入れていて、それぞれ好きなツールで遊びます。ゲーム性を取り入れた授業も盛んで、子どもは遊びながら自然とプログラミングも学んでいくんです。ゲームは他者とのコミュニケーションを深めるツールとして、今国をあげて積極的に取り入れているんです。

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佐藤:これが、公立小学校ですか!すごいですね。写真を見るだけで楽しさが伝わってきますね。教える側はこれらツールのすべてを理解しているのでしょうか?

小宮山:ひと通り理解はしています。ただ、教えるというよりも一緒に学んで行くイメージです。メンターやチューターという立場で、意欲を継続させることに力を注ぎ、子どもが何に興味を持つか、どんなことが好きかを見ているように思います。

佐藤:そうなんですね。日本ではゲームは娯楽で勉強とは対極の存在という認識がまだありますからね。とても興味深い取り組みですね。

アメリカの最新進学校はテストをしない?

__アメリカでテストを廃止した学校があると聞きましたが。

小宮山:そうなんです。アメリカは日本の文科省のように連邦政府が一括して教育をとりまとめるのではなく、州が大きな権限を持っています。私が訪れたのはカリフォルニア州サンディエゴの公立校なのですが、州の統一テストのみで、文化祭といったプロジェクトベースで評価をしていくそうです。企画立案から計画、実行まですべて自分たちで行います。

佐藤:まるで仕事のようですね。

小宮山:ええ。でもこの学校、四年制大学への進学率がとても高く、皆優秀なんです。詳しくは映画化された『Most Likely to Succeed』を見てみてください!
同じ敷地内に小学校もあるのですが、例えば算数の授業では「30-2=28、15+13=28…」のように「28を作ってごらん」という考え方をするのに驚きました。

佐藤:答えを暗記するのではなく、仕組みを学ぶ“白百合算数”みたいですね。これからは100点を取ればいいという時代ではなくなってきているのは感じますし、確かにテストがなくなれば先生の負担も軽減されるんでしょうね。ただ、日本の公立小学校でテストが全面廃止となるまでには、相当な時間がかかるでしょうね…。でもいつかそんな時代が来るのかもしれませんね。

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これからのAI教育、親や先生は寄り添う人へ

__日本でも、2020年からプログラミング教育が必修化されますが、親や先生はどうすべきでしょうか?

小宮山:これからの教育は、“教えるのではなく、学び合う時代”になると思います。先生だから親だから全部分かるというのは間違いです。そもそも私たちが育ってきた子ども時代にインターネットもスマホもありませんでしたからね。

佐藤:確かに今と比べてはいけませんよね。では先生や親はどういうスタンスでいるべきとお考えですか?

小宮山:親は環境を与えるだけ先生のアドバイスも必須ではないと思っています。今正解と思っていることも、この先テクノロジーの進化に伴い、どうなるかは誰も予測できません。ですから、子どもには何かを詰め込む教育ではなく、対応力やセンスを見つけてほしいですね

佐藤:確かに、自由遊びができない自信のない子は増えていると感じます。子どもの好きや夢中になれるものを見つけるのが、子どもを伸ばす一番の近道ですからね。興味があるものを知って、それを専門家や最新のツールを使って深めていけばいいと。

小宮山:ええ。これからの時代に必要なのは、“自信や意思を出せる主体性”だと思っています。あとは、例えばAIが普及してきたら人間がしなくていいものがもっと増えますよね。だから、全部が出来なくていいと思っています。能力は凸凹があっていい。できなかったり苦手なことがあってもいいから「これだけは負けない!」という突出した能力があることが大事かなと。「できない事は出来る人と組めばいい」と言う考えもこれからの時代を生き抜く上では大切な力だと思っています。

__最後に、未就学児の子を持つ読者のママに一言メッセージをお願いします!

佐藤:何かひとつのことを夢中になって頑張れるような「子どもの好きなこと」を見つけてあげるのが親の仕事です。とはいえ、親の体力と気力がないと子育てはもちません。頑張りすぎずに楽しみながら取り組んであげてください。

小宮山:私自身、子育てをする上で大切にしているのが「違和感を作ること」。「なんで?」という気づきが子どもを一番伸ばすと思っています。また、子どもだけでなくママ自身も子育て以外に好きなことを見つけてほしいですね。自分の感性を豊にすると子どもも豊になると思います。

Photo:Kenichi Sasaki

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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