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「こども哲学」川辺洋平氏×伸芽会 飯田先生のスペシャル対談!「『こども哲学』ってなに? 幼児のうちから身につけたい“力”とは」

「こども哲学」川辺洋平氏×伸芽会 飯田先生のスペシャル対談!「『こども哲学』ってなに? 幼児のうちから身につけたい“力”とは」

子ども向け哲学番組の放送や学校教育への導入など、広がりを見せている「こども哲学」。

逗子で「こども哲学教室」を主宰し、親子で哲学対話をすることをテーマにした著書『自信をもてる子が育つ こども哲学―“考える力”を自然に引き出す』も話題の川辺洋平氏と、幼児教育のプロである伸芽会教育研究所所長・飯田道郎氏のスペシャル対談!

「こども哲学」のルールから、いまの子どもたちに身につけさせたいこと、親として子どもにどう関わるかなど、たっぷり語っていただきました。

川辺洋平
東京学芸大学教育学部を卒業後、イラストレーターとして活動開始。2007年に広告会社に入社後、2012年より出版社にてクリエイティブ・ディレクターとして勤務。2014年に独立し、NPO法人こども哲学・おとな哲学アーダコーダを設立。保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭(美術)、高校教諭(美術)の資格を持つ。親子で哲学対話をすることをテーマにした著書『自信をもてる子が育つ こども哲学―“考える力”を自然に引き出す』(ワニブックス)。
飯田道郎
伸芽会教育研究所 所長。子どもの目線に寄り添い、一人ひとりのやる気スイッチを引き出す人気教師。男の子の指導に定評があり、これまで3,000人以上の教え子を難関校へと導く。著書『9歳までの男の子の育て方』(世界文化社)。

 

こども哲学もお受験も安心できる場が重要!

―まずは「こども哲学」が何をするものなのか、お聞かせください。

川辺_哲学というと難しく考える方もいますが、「こども哲学」は一緒に考えるという遊びのようなものです。私が主宰している「こども哲学教室」は、3歳以上を対象に、次の5つのルールのもとで行っています。

・人が話している時は聞く
・相手が考えているときは待つ
・自分の考えていることを言う
・人の嫌がることをしない
・何も言わなくてもいい

そもそも、僕が「こども哲学」をやり始めたきっかけは、2011年に日本で公開された映画『ちいさな哲学者たち』を見て、自分も当時3歳だった娘とやってみたいと思ったからです。

自分がいち保護者としてやってみて気づいたのは、「こども哲学」は子どもに思考力を与える活動ではなく、子どもの発言や考えていることを大人が理解する活動だということでした。

当初、「こども哲学」を早期教育的なものと意図していた自分には目から鱗で。子どもは思考し、発話もしているのに、それを聞き取れていないのは僕の方だった、と。

飯田_確かに、子どもは基本的に言語習得ができて話せるようになると、考えて発話することができるといえます。

川辺_「こども哲学」をやった子たちに、「何が面白い?」って聞いたら、「他の子がどう考えているのか聞くのが面白い」って言うんです。自分と違う考えを面白がれるっていうのは、学びにもなるし、多様性を楽しめることにもなります。

僕がやっている「こども哲学」の教室は、さんざん体を動かしたあとに始めるんですけど、子どもたちから「先生、なにするの?」って聞いてきて、「今日はお金について話そうと思ってるんだ」って僕が言うと、「お金ってさー」って1人の子が言い出すんです。

そうなったらもう僕はいらなくて、あとは子ども同士が勝手に話すんですよね。子どもたちは、最初に火さえつければ、何にでも興味津々だし、話そうとするんです。

飯田_川辺先生のところに来るお子さんは、何か面白いことがありそうだと期待してるんでしょうね。僕もけっこう子どもに面白そうって思われるんですよ。お母さんたちは、自分の子どもが僕みたいなひげのおやじに笑顔で話してるのを不思議そうに見てるんですけどね(笑)。

僕が教室で絵本を読むときによくやるんだけど、「これからこの本読むよー」って言いながら、本を逆さまに見せるわけ。そうすると子どもたちが「先生、本逆だよー!」って。あとは髭爺さんを一緒に歌うだけでも、グッと距離が縮まるんです。

どれもお約束なんだけど、まずはこっちに興味を持たせて面白そうだと思わせないといけないんですよね。

川辺_哲学の入り口もセーフティからと言われていて、議論を戦わせたいのであればまずは相手を安心させないといけないんです。だから僕も、緊張してそうな子は二の腕をムニムニするとか、ちょっとしたことなんですけどやってます。

飯田_おっしゃる通り、安心感や信頼感は大事ですよね。幼稚園や小学校の試験の面接にも大きく影響すると思います。

親御さんに面接の指導をするときによく言うのですが、「お子さんに誰が安心できる人か話したことがありますか」と。危険な人にはついていかないようにとは言うけど、誰が安心できる良い人かはあまり話してないんですよね。

例えば、ママが知り合いと話しているときに、パパが子どもに「あの人はママの友達だよ。近くに行って一緒に話しておいで」って送り出すんです。子どもが近寄って「こんにちはー」って言ったら、「ご挨拶できて偉いわねー」って褒められるでしょ。子どもはそういう場で褒められてどんどん自信がついていくんですよ。

そういう積み重ねが面接の場でも生かされるんです。

これからの時代、当たり前のことができる礼儀正しい子ではダメ!

―「こども哲学教室」に参加する親御さんたちはどんな方たちでしょうか。

川辺_他の子よりユニークなことを言う子だから通わせてみたいという方や、子どもに発話させたいと考えている方、学校の先生に「お宅のお子さんはちょっと元気が良すぎて…」と言われてしょげてるお母さんも。

通い続けている方が共通して持っている意識は、「多様性」という言葉に集約されると思います。グローバル社会で語学力が必要なのはわかるけど、親自身が10~20代で留学して語学を身に着け仕事にもつながっているから、幼児のうちから語学が絶対とは思ってないんです。

語学力よりも、相手を尊敬して、誰とでも話せる力が必要だと考えています。他者を尊敬する多様性の力、それを身に着けて欲しいといってみなさん通われていますね

飯田_いまの時代、語学は「OK,Google!」でいけますからね(笑)。僕も、他者に対するリスペクトは大事にしてもらいたいと思っています。

日本人ってそもそも人と違うのが怖いって考えの人が多いけど、もっと自分のこだわりみたいなものが出たほうが良いと思うんですよね。僕は、型にはめるのが大嫌い。だって型にはまらない方が面白いでしょ。

川辺_そうですね。いままでは当たり前のことができる礼儀正しい子を育てるのが良しとされてきたけど、これからはそうではくなります。何かを生み出さないといけないというときに、自分の今までの知識を組み合わせて、アイデアを出せる力が非常に重要になってくると思います。

 

人とぶつかる経験も哲学の入り口!

―最後に、子育て中の方たちにアドバイスをお願いします。

川辺_ケンカを怖がらないで欲しいですね。大人も生きていく中で、人とぶつかったり意見を戦わせたりすることがストレスに感じるものですし、お子さんには、他の子に手を出して欲しくないとか、親の言うことを聞いてもらいたいと思うものです。

そのため、子どもとぶつからないように接したり、逆にすべて子どもの言う通りになったりしがちですが、人とぶつかる経験も哲学の入り口なのです。親子の間も、お友達との間も、ぶつかることを大切にしてください。

飯田_子どもにはさまざまな体験を通して自信をつけさせていくといいと思います。うちは受験の教室なので、3つの場であるべきだと考えています。

1つは、知らないことに気づいたり、新しい体験をしたりできる「発見の場」。次は「発表の場」。言葉でもボディランゲージでも絵でもいいからアウトプットできる場でありたい。そして最後は「達成の場」。受験合格でも他のことでも、なにか達成できる場になったら子どもの自己肯定感につながると思います。

川辺_飯田先生のお話を聞いて、似ているというのはおこがましいのですが、伸芽会さんが大事にしているものの中に「こども哲学」のルールのエッセンスが入っていると感じました。

僕はいま逗子で「こども哲学教室」を開催しているのですが、都内でもやって欲しいというニーズがたくさんあるので、機会があれば伸芽会さんとご一緒できたらいいなと思います。

飯田_それはいいですね。ぜひ企画しましょう。

筆者が「こども哲学」に興味を持ったのは、学校に馴染めない小学一年生の長男にどう関わっていけばいいのか悩んでいるときに川辺氏の著書を読んだことがきっかけでした。その後、長男とできるだけ対話するように心がけています。

今回のおふたりの話を聞いて、親子でぶつかりながら尊敬しあえる関係を築いていきたいと思いました。

Photo:Sasaki Kenichi

著者プロフィール

大学生の頃よりファッション誌のライターとして活動し、主にインタビューページなどを担当。現在はママ向けライフスタイル誌やWEBに執筆中。小学生と保育園児の男子2人の母。

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