性別にとらわれない玩具が増えるフランス。ぬいぐるみや赤ちゃん人形で情緒を育む

性別にとらわれない玩具が増えるフランス。ぬいぐるみや赤ちゃん人形で情緒を育む

フランスの子どもたちは男女ともに「ドゥドゥ」と呼ばれるぬいぐるみや人形を大切な親友として持ち続ける習慣があり、人種や性別を超えた赤ちゃん人形の種類も豊富です。肌身離さず持ち歩かなくてはならない存在ですが、近年は政府がステレオタイプの玩具が与える悪影響を重視しているため、「ドゥドゥ」以外でも性別にとらわれない玩具が増えています。フランスにおける最近の玩具事情を紹介します。

日経DUAL記事

パンツスタイルのミニーマウスが登場し話題に

ミニーマウスといえば赤い水玉模様ドレスのイメージが強いですが、パリのディズニーランドでは2022年の30周年記念にパンツスタイルのミニーを披露し、話題になりました。3月の女性月間にちなんだもので、まさに「女性のイメージ変遷」を意識したといえるでしょう。
このようにフランスでは各分野において、幼児期から性別によるライフイメージを取り除くような子育てが求められています。性別にとらわれない教育は、子どもの人格のあらゆる面を伸ばすのに役立つとされているからです。

政府や企業が玩具の性別ステレオタイプを見直す動き

「女の子には人形やキッチンセット、男の子には自動車や電車」というように、玩具は子どもの性別に合わせて作られていることが多いようです。しかし、その傾向は今や緩やかに変化しつつあります。
フランスの上院は2014年の報告書で、「ステレオタイプの玩具は幼少期にも成人期にも悪影響を及ぼす可能性がある」と警告。玩具協会、製造業者、流通業者などが集まり、2019年には「玩具の混合表現のための憲章」を制定しました。今や玩具のジャンルは性別ではなく、内容や使い方、年齢別に分類する方向に向かっています。

大手玩具店では従業員の教育にも力を入れ、「玩具は才能を伸ばすための需要に対応するもの」という原点に立ち返る方針を導入。消費者が店員にアドバイスを求めた場合、子どもの伸ばしたい能力に応じて商品を提案するようになりました。多くの店で、「女児玩具」や 「男児玩具」という分け方を廃止する取り組みが進んでいます。

情緒や社会性を育む赤ちゃん人形が人気

玩具のなかでも、冒頭で紹介した大切なぬいぐるみや人形の「ドゥドゥ」は男女ともに持っています。宿泊を伴う小学校の移動教室などでも、持ち物に「ドゥドゥ(任意)」と記載されているほど社会的に認知されているのです。

また、1歳半ぐらいになると、男の子にも女の子にも人形を大切に世話する様子が見られ始めます。特に小さな子たちには人間の赤ちゃん人形が人気で、赤ちゃんの人種も白人や黒人、黄色人種、アラブ系などさまざまです。
赤ちゃん人形のためのベビーカーやベビーベットなどもいろいろな種類があり、ブルー系や宇宙スペース柄など男の子が好きそうな色や絵柄も多く発売されるようになりました。男女を問わないフランスの人形遊びは子どもの協調性や共感性などを伸ばし、幼い頃から子育てに必要な作業分担も学べるため、社会性を育む意味でも重視されているのです。

政府や企業が玩具の性別ステレオタイプを見直す動き

玩具にも性別に縛られない多様性が必要

社会科学面からの心理的分析によれば、ジェンダーの固定観念と偏見の固定化は子どものアイデンティティをはじめ、願望や成績にも影響。ジェンダー関連のいじめや社会的排除の蔓延にもつながるそうです。
例えばゲーム1つを挙げても、男性的とされるゲームは空間的知能を発達させ物事を組み立てる能力に重点を置き、女性的とされるゲームはコミュニケーション力や問題解決力を促しロールプレイに重点が置かれるとされています。子どもにとっては両者とも必要であり、遊び方が多様になれば性別の固定観念に縛られることなく自由な発想を育めそうです。

まとめ

「ドゥドゥ」に見られるようなフランスの平等主義的な教育法は、子どもたちが自分自身をオープンに表現する行動へとつながります。また、性別にとらわれない玩具を与える取り組みは、将来なりたい自分への扉を開いてあげることに役立つと言えるでしょう。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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