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イギリスで男子学生30人がスカートで登校!ジェンダーギャップにおけるイギリスの取り組みとは?

イギリスで男子学生30人がスカートで登校!ジェンダーギャップにおけるイギリスの取り組みとは?

先ごろ「世界フォーラム」が発表したジェンダーギャップ指数では、調査対象となった144カ国中15位になったイギリス。

上位にランクインしたこの国でのジェンダーギャップへの取り組みを検証しながら、同調査で過去最低ランクの114位となった日本が学べそうなヒントを探ります。

日経DUAL記事

半ズボン禁止の校則に対してイギリスの男子生徒が取った行動とは!?

2017年の夏、例年涼しいイギリスにも熱波が到来して35度前後の日が続いたある日のことです。冷房さえないにも関わらず、男子生徒に半ズボン禁止令を出していた学校で前代未聞の出来事が起きました。校長や教師に対する抗議の意味で、男子生徒が女生徒用の制服スカートで登校したのです。

このニュースは、イギリスの堅苦しい校則の実態を浮き彫りにし、世界中のメディアの注目を浴びました。抗議初日、制服のスカートを履いた男子生徒は数人でしたが、共感の輪が広がり翌日には30人に。

一番始めにスカート着用を考案した男子生徒の母親は、「素晴らしいアイデアで、勇気ある息子を誇りに思うわ」と話しました。スカートは、抗議に賛同した男子生徒のガールフレンドやクラスメート、姉妹から借りたものだったそうです。

スカート着用抗議の決着

スカートを着用して登校した男子生徒が50人を超えた3日目に、学校は次のような声明を公式サイトに載せました。

「学校側としては、半ズボンを禁止したわけではなく、半ズボンが制服として存在していないだけです。天候の変化を考慮し次年度から導入する方向であり、今年度の導入を見送ったのは保護者に(経済的)負担が増えることになるからです」 。

メディアで大々的に報道されたためか、「男子が制服のスカートを着用するのは禁止」という校則がなかったためか、抗議に参加した男子生徒に対するおとがめはなし。矛盾を逆手に取って行動した男子学生、それをサポートした保護者と女生徒たちが一丸となって得た勝利と言えるでしょう。

イギリスの学校でのジェンダーギャップの取り組み

さらに、イギリスでジェンダーギャップに対してどのような教育や取り組みがなされているかを見てみましょう。

初等教育から「Gender Equality(ジェンダーフリー、男女同権)」について教えることが重要だと認識されています。性教育や同性婚についても、小学生のうちから習います

たとえば、「女子はか弱い」、「男子は勇敢だ」、「女子は数学が苦手」、「男子は読書が苦手」という、いわゆる社会的な通説を子どもたちの前で言及することを避け、男女平等という概念の規範を小学生のうちから公正に伝えることで、セクシャル・ハラスメントを減らすことができると考えられています。

イギリス_2

ジェンダーギャップを埋めるBBCの実験番組

さらに、昨夏放送されたBBCのテレビ番組「No More Boys and Girls: Can Our Kids Go Gender Free?(もう男子、女子は関係ない-子どもはジェンダーフリーになれるか?)」において、ジェンダーニュートラル教育に関する実験が行われました。

イギリスのとある小学校の7歳児クラスを対象に行われた一学期に渡る実験とは、最初にクラス全員に性別におけるイメージのインタビューを行い、その後性別ごとのグループ分けや、ピンクや青などの性別を示唆する色の使用を一切廃止、相当な論議を醸し出したトイレまで共同にする、という大胆な試みです。

また、女性メカニック、女性マジシャン、男性バレエダンサー、男性メイクアップアーティストを授業に招き、職業における性的偏見を見直すきっかけを与え、学期末にはジェンダーフリーをテーマにした詩の発表会を開きました。

番組後半では、撮影当初は「男の子のほうが強い、すごい」というイメージを持っていたシャイな女子児童の一人が「私は何にだってなれる」と自信に満ちた表情で語り、やんちゃすぎるくらいの性格だった男子児童が「We are the future -〈私たち〉は未来である」という、〈男子も女子も含めた複数形の主語〉でメッセージを書いたのです。

これらが、実験を取り仕切った博士の「性格におけるステレオタイプな外部情報を排除した際の男女の脳は本来ほぼ同じである」という仮説に対して、全てを立証するものではないとはいえ、有効なデータであると言えるでしょう。

イギリス_1

欧米諸国のなかでも伝統を守り、堅いイメージが強いイギリスですが、このようにジェンダーギャップに対する取り組みは目に見えて進歩しています。ジェンダーギャップにおいては後進国である日本も、こうしたイギリスの動きから、何か学べるヒントがあるかもしれませんね。

出典
HUFFPOST「日本のジェンダーギャップ指数、過去最低を更新 114位に」
The Guardian「Teenage boys wear skirts to school to protest against ‘no shorts’ policy」
The Guardian「Exeter school’s uniform resolve melts after boys’ skirt protest」
The Guardian「Teaching gender equality can help tackle sexual harassment – here’s how」
The Guardian「The week in TV: No More Boys and Girls: Can Kids Go Gender Free?; The Big Family Cooking Showdown and more」
The Telegraph「No More Boys and Girls: Can Our Kids Go Gender Free? should be compulsory viewing in schools – review」
London Evening Standard「BBC documentary No More Boys and Girls asks if gender-neutral schooling is the key to achieving equality between the sexes」

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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