公開 / 更新
学び

「リビング学習」の落とし穴。集中できる環境づくりは男女で異なる!

「リビング学習」の落とし穴。集中できる環境づくりは男女で異なる!

もうすぐ新学期。新一年生や進級する小学生の親御さんは、わが子にどうやって学習習慣を定着させるか悩む時期だと思います。そこで、『男の子と女の子学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)の著者である富永雄輔さん(進学塾VAMOS代表)に、低学年の学習習慣やリビング学習をする際の注意点についてアドバイスをいただきました。

富永雄輔さん(進学塾VAMOS代表)
幼少期をスペインで過ごし、京都大学卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園から高校・浪人生までが通塾する進学塾VAMOS(https://vamos-kichijoji.com)を設立。先着順で子どもを受け入れるスタイルながら、毎年難関校に多数合格させている。現在は学習指導のみならず、年間400人を超える保護者の受験コンサルや帰国子女の教育アドバイス、トップアスリートの語学指導も手がける。『男の子と女の子学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)など著書も多数。5月に新刊『一人っ子の勉強法』を発売予定。YouTubeチャンネル「進学塾VAMOS」では、富永先生ならではの視点で解説した私立中学の紹介動画も多数。

 

日経DUAL記事

リビング学習のメリット・デメリット

「リビング学習は家族構成や住宅事情、お子さんの性別や年齢によって向き不向きはあるものの、私が実際に多くの子どもたちを見てきた限りでは、特に低学年においてはかなりの成果を実感しています」と富永先生。
具体的にリビング学習のメリット・デメリットをお聞きしました。

【リビング学習のメリット】

・子どもの学習状況が分かりやすくなる
個室とは違いリビング学習では学習状況が把握しやすいため、「やっていると見せかけてサボってマンガやゲームをしていた」「答えを写していた」などという心配がありません。

・学習時の孤独感が軽減される
特に高学年以降、中学受験で失敗するケースのひとつに孤独感があります。子どもが一人部屋にこもって難しい勉強をするも、思い通りにいかないと負のスパいるに陥ることがあるためです。その点、家族がいるリビングでの学習は、孤独感が軽減されます。

【リビング学習のデメリット】

・双方向のオンライン学習には向いていない
コロナ禍で学校でも塾でもオンライン化が進みましたが、リビング学習での唯一の欠点は双方向でのオンライン学習に限界があること。リビングで親御さんもリモートワークをしていたり、お子さんが複数いる場合、ハウリングをしたり音が混じるなどの不都合が生じることがあります。

・自立の機会を奪う危険がある
親が学習を管理しすぎると、「中高生になっても一人で学習できない」といった自立の機会を奪う危険や、親側も「子どもがいないと不安」という共依存になる可能性もあります。
特に、小学校受験や中学受験での成功体験がある場合は注意が必要です。「お子さんの年齢に応じて学習の関わり方を変える必要がある」ということも頭にいれておきましょう。

新一年生のリビング学習で親がまず見るべきこと

最近の幼稚園や保育園ではさまざまな学習プログラムがあり、公立小学校に進む場合でも、就学前から英会話に公文、通信教育など熱心に幼児教育されているご家庭が増えています。

「その結果として、入学時の子どもたちの知識の差(親御さんの教育方針の差とも言う)があることは事実です。そこで、入学後に親御さんがまずすべきことは、学校の宿題やテスト結果で、お子さんが以下のA~Cのどこに属するかをよく観察することなのです」と富永先生。

【学校でのわが子の属性をチェック!】
・タイプA:宿題について行ける(全体の1/3)
・タイプB:宿題がちょうどいい(全体の1/3)
・タイプC:宿題がやさしすぎる(全体の1/3)

「タイプCならばちょっと難しい問題集などでペースをあげてもOKでしょう。また、低学年の場合は、国語の問題を左から右に読む(!)など、大人が驚くような独自の学習法をしている場合がありますから、早めにそうした間違いに気づくことも大切です。さらに、第二子第三子の場合も、それぞれ属性は異なりますから注意して見てあげてください」とのこと。

男女の特性を生かした環境づくりとは?

では、実際にリビング学習をする際の環境づくりについて。「個人差はあるものの、男女で意識するポイントは異なります」と富永先生。

【男子:低学年は1日15分をMAXに】
男子は相対的に女子と比べて幼い傾向があり、注意散漫なので低学年であれば、家庭学習時間は「1日15分」をMAXにしましょう。これ以上できるお子さんの場合も、20分休憩をはさみながら行ってください。親が側で見ているリビング学習は長時間やらせやすいものですが、特に男子の場合はやればやるほどだらけてしまい逆効果なこともあります。また、予定よりも早く終わったからといってお代わりを与えることもやめましょう。

【女子:文房具のこだわりすぎには注意】
総じて女子は大人っぽくきれい好きなため、きちんと整った環境で集中できる子が多いです。親と一緒に学習したい子はリビング学習でもいいですが、「勉強を見られたくない子」「家族がいない静かな場所で集中したい子」もいるでしょう。その場合は無理強いせず個室でさせてもOK。ただし、重要なのは「学習以外の何かをリビングでさせる」こと。読書でも動画でもいいですが、今わが子が何に興味関心があるかを把握する時間を持ちましょう。また、女の子は可愛い文房具が大好きですが、数が必要以上に増えていたり、やたらと筆箱が整理整頓されすぎているときは、勉強に集中できていない確率が高いです。女の子はぜひ勉強道具の状態もチェックしてみるといいでしょう。

低学年のリビング学習時で重要なのは親子の距離感

リビング学習をする際に重要なのは“親子の距離感”だそう。そこで、リビング学習を成功させるために知っておきたい3つのポイントをお聞きしました。

その1 家族で一体感を出す

いくらしっかりした子でも、お父さんがソファでゴロゴロ、お母さんがスマホ、弟がゲームという状態では勉強する気にならないもの。お子さんがリビング学習してる間は、可能な限りご両親が本や新聞を読むか、パソコンを開いて何かをしている(動画を見ていてもOKです)状態を保ち「家族で頑張っている一体感」を出しましょう。

をの2 低学年は100%干渉でいい

低学年は、「親に見守られている、見られている」という安心感を与えることがとても大事です。低学年の子が自分でスケジュールを立てて、一人で学習をして丸付けまでするのは、ほぼ不可能です。そこは100%干渉でいいと思います。

その3 やることは1日完結で考える

よく1週間の学習スケジュールをエクセルで管理したり、日々のTo Doリストをこなさせようと頑張る親御さんがいらっしゃいますが、これはちょっと危険です。特に低学年は「予定通りには行かないものだ」と考えることが重要です。親御さんの学習管理の目安としてスケジュールを立てる分にはいいのですが、お子さんの体調やその日の気分、習い事に合わせて「明日やることを前の晩に考える」くらいがちょうどいいです。

中高学年(中学受験)におけるリビング学習の注意点

小学校中学年以降になると、中学受験のために塾に通う方も多いと思います。そこで、中学受験におけるリビング学習の注意点と自走と並走のベストバランスについてお聞きしました。

中学受験もリビング学習で大丈夫?
これは私の極論ですが、「狭い家に住む子は成績が伸びて、子ども部屋があるような大きな家に住む子は成績が下がる」というのは一理あると思っています。先述したような孤独感ではなく、親に見守られている安心感を得ながら学習できる環境は子どもを伸ばします。私はよく中学受験での伴走のコツは「お母さんが他人に任せる時期をできるだけ短くすること」だと話します。低学年のうちは手取り足取りの100%伴走でも、徐々に関わる距離を離していき、6年生になったら塾などの外部に任せればいいのです。6年生になると通塾日も学習量も増えるため、塾の自習室を活用したり自室で勉強する子も多いですが、家庭学習はアウトプットを兼ねてリビングで行っていたという子もいます。

中学受験に必要なのは心の自走!
私たちのような学習塾でも「自走と並走のバランス」については日々考えていますが、その子の性格や状況によって答えは変わってきます。高学年とはいえまだ11~12歳ですから、必ずしも自走できないと受からないというわけではありません。ただし、「心の自走」は意識したいポイントです。つまり勉強を「やらされている」のではなく「自らやる」という姿勢です。具体的には「丸付けをして」「ここを教えてほしい」などと自分から言える状態が理想的です。

コロナ世代の子どもの学力について

最近の小学生を見ていて感じるのは、コロナ禍の2年で「心の成長速度が遅く、やや幼くなっている」ということです。この場合の幼さとは「知らないことの多さ」「友達と遊ぶ経験の少なさからくる語彙力の低下」「人との関わり方がわからない」などです。一方、上にお兄ちゃんお姉ちゃんがいるお子さんは、これらが伸びていると感じます。理由はコロナ禍で家にいる時間が増え、兄弟と過ごす時間が増えたため、さまざまな刺激を受ける環境にあるからです。

今後「コロナ世代」と呼ばれるであろう今の子どもたちは、こうした経験の少なさからくる学びの弊害が出てくる可能性があります。ですから、親御さんは学習面だけではなく、ご家庭での会話やコミュニケーションの重要性もぜひ意識されてみてください。

そして、学習する上でも必用不可欠となる“集中力”や“負けず嫌い”は自然に身につくものではありません。特に東京など都市で育つ子どもたちはハングリーな状態とは無縁です。低学年のうちは、日々の生活や遊びの中で「勝つ喜び」「負ける悔しさ」もたくさん経験させてあげてください。

著者プロフィール

SHINGA FARM(シンガファーム)編集部です。ママ・パパに役立つ子育て、教育に関する情報を発信していきます!
Twitter、Facebookも更新中!ぜひフォローください♪

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事