【連載5回目】今日からおうちで実践できる!子どもの未来の可能性をひろげるSTEM・SEL教育

【連載5回目】今日からおうちで実践できる!子どもの未来の可能性をひろげるSTEM・SEL教育

出典:Gerd Altmann from Pixabay

過去4回の連載では、AI時代におけるスマート子育て法として、STEM学習の本質や4Cのスキル、そして、SELと呼ばれる、近年注目されている社交性や情動を育む学習についてご紹介しました。

これらは、子どもたちが学ぶべき21世紀のスキル(1)とされており、教育機関だけでなく、家庭においても取り組んでいくことが大切であるとされています。そこで、最終回の5回目では、おうちでもすぐにできるSTEMとSELの学び方をいくつかご紹介します。

日経DUAL記事

おうちでできるSTEM学習:理系の知識と4Cのスキルを伸ばすアクティビティ

おうちでSTEM学習というと親にもコーディングや科学の知識が求められるかと思うかもしれませんが、実はそのような知識がなくてもできるものが数多くあります。

★パンケーキでSTEM(2):科学・エンジニアリング・算数

おうちで手軽にできるSTEM学習としてよく取り上げられるのが料理です。料理には多くのSTEM要素が含まれているだけでなく、STEM学習で重視されている体験型学習にもなります。ここでは、パンケーキ作りを通して家庭でできるSTEM学習をご紹介します。

1)算数:子どもが計量カップやはかりを使って材料を測る。
2)エンジニアリング:子どもが泡立て器で混ぜたり、おたまですくったりする。
3)科学:大人がパンケーキを焼く。
4)問題提起:どうしてパンケーキを焼くとブツブツがでてくるのかな?どうしてパンケーキがふくらんでいくのかな?と聞いて、子どもと一緒に考える。
(こたえ:ホットケーキミックスの中のベーキングパウダーが熱されて二酸化炭素が出ていくから。)

ここでは、これはどうしてかな?といったオープンクエスチョン(回答者が自由に考えて答える質問)を子どもに投げかけ、子どもがその質問に対してどういう反応をするかを見守ることが大切だとされています。

答えに正解を求めるのではなく、「どうして」という一つの質問をきっかけにして、子ども自身がさらなる疑問を見つけ出し、当初の質問の枠にとどまらないさまざまな発見につながるという批判的思考を育てることが目的とされています。

★油と水でESTEM(3):科学・エンジニアリング・環境

STEMに環境(Environment)を加えたESTEMのアクティビティもおうちでできます。

ここでは、油が海にあふれた場合、海の生き物にどのようなダメージがあるのかという環境問題の観点が組み込まれています。また、油を取りのぞくためには、何を使えば良いのかといった問題解決型のエンジニアリングも学習の目的とされています。

1)水と油を大きめの容器にいれてまぜる。
2)おもちゃの貝がら、羽根などを入れる。
3)油を取りのぞくために使える素材を準備する。(スポンジ、キッチンペーパ、スプーンなど)
4)水や羽から油を取りのぞく。
5)実際に海に油が流出した映像や油で飛べなくなった鳥などの写真をみて子どもの考えを引き出し、どうしたら良いのかなどを話し合う。

★スマートフォン/タブレットでアニメ作り(4):テクノロジー

このアクティビティは、小さなお子さんでもできるアニメ作りです。いつも見ているアニメなどがどのように作られているのかを理解することができ、また、好きなおもちゃやキャラクターを使ったり、好きなストーリーを作ったりと、主体性が発揮されやすいアクティビティです。

創造力が試されるだけでなく、視聴者を意識してストーリーの組み立てを考えるなどコミュニケーション能力も必要となってきます。

1)『Stop Motion Studio』無料アプリを入れる。
2)動画に登場するおもちゃをテーブルに集める
3)タブレットやスマートフォンを写真が撮りやすい場所に固定する。
4)おもちゃをテーブルに並べてアプリで写真をとる。
5)おもちゃを少し動かしてまた写真をとる。
6)5)を繰り返す。
7)全部の写真を撮り終わったらアプリの再生ボタンを押す。

SEL学習:社交性と感情について考えるアクティビティ

次に、社交性と情動の学習であるSELアクティビティについてご紹介します。

親や家族との関係は子どものSELのスキルの習得に大きな影響を与えていると言われていますが(5)、おうちで学ぶことということにピンとこない方も多いかもしれません。

そこで、ここでは、学びとして捉えられにくいとされている感情や自分や他人との関わり方を学ぶためのアクティビティをご紹介します。

★絵文字アクエティビティ(6):感情の認識

大人でも自分の感情を客観的に認識し、言語化するというのは難しい場合があります。そこで、SEL学習では感情を言語化するというプロセスを子どもの頃から習慣化することを目指しています。

子どもはまだ、自分の感情を言葉で表現することが難しいため、絵文字を使ったアクティビティが多くあります。

例えば、右図のような絵文字を使ってその日の感情を記録する方法があります。喜怒哀楽といった基本的な感情を使ったものから、絵文字の豊富さを生かして、「心配している」「満足している」など、より繊細な感情を、絵文字を通して認識するアクティビティもあります。

子どもたちの気持ちに寄り添って、ともに言語化していくこのアクティビティは、感情について学び始める最初のステップとしては取り組みやすいのではないでしょうか。

出典:Kiddies Matters

★グロースマインドセット:子どもを伸ばすほめ方

SELでは、感情だけではなく、自分の強み・弱みを認識して、そこから自分にはできるんだという自己効力感や自己肯定感を育てることも目的とされています(7)。そこで、とくに重要だとされているのが「グロースマインドセット」と言われる「成長を促す思考」です。

グロースマインドセットは、失敗することに価値を見出し、知力は成長するものであるという考え方です(8)。また、その反対は成長を阻害する思考で、「フィックスドマインドセット」と呼ばれています。

下の表(9)にもあるように、番号の左が「フィックスドマインドセット」、右が「グロースマインドセット」となっており、自分にかける言葉として右側の言葉を使っていくトレーニングも行われています。

例えば①では、左側の「私はこれが得意だ」という代わりに、右の「うまくいっている」、④では、左側の「これは私には難しすぎる」という代わりに、右側の「これができるようになるにはちょっと時間と努力が必要だ」という風に、グロースマインドセットを伸ばす言葉を自分に言い聞かせるくせをつけます。

これは、親から子どもにかける言葉としても同じことがいえます。例えば、「頭がいいね」というのは成長を阻害するほめ方だとされています(10)。その代わりに、「一生懸命やったね。」「これ自分一人で考えてやったの!」「あきらめなかったのはえらいね」といったほめ方が子どもの成長を促す(11)とされています。

出典:One Time Through

★やさしさのビンゴ:自分が家族にできること(12)

最後に、ご紹介するのが、やさしさ(Act of Kindness)とは何なのかを学ぶビンゴ形式のアクティビティです。家族にやさしくする行為を見える化し、対人関係の学びを得ることを目的としています。

下のビンゴ表では、「兄弟にお菓子をわけてあげる」「兄弟と一緒に本を読む」といった兄弟同士の関係を念頭に置いたものから、「食事を作ってくれた人をほめる」「夜ご飯の後片付けを手伝う」など親子関係のやさしさもテーマにしています。

それぞれの家庭の家族構成や課題を入れ込んだオリジナルのやさしさのビンゴをつくることもできます。

出典:Fantastic Fun and Learning

さて、連載5回にわたってお伝えした「AI時代のスマート子育て法」ですが、STEM分野の知識から4Cのスキル、そして、社交性と情動を学ぶSEL教育まで、幅広く取り上げてきました。

日本では、プログラミングやロボット学習がSTEM学習の中心になりつつありますが、世界に目を向けると、これらの学習は21世紀に必要とされている数あるスキルのなかの一部であることがわかります。

今後は、親たちが子どもの教育を考える際、AI化が進む一方で、ヒューマンスキルの必要性も同時に高まってきていることを認識し、両方のバランスを見極めた学習方法を選択することが重要になってくるのではないでしょうか?

(1)https://curriculumredesign.org/our-work/four-dimensional-21st-century-education-learning-competencies-future-2030/#1445977470587-f8dc16b8-5787
(2)https://www.brighthorizons.com/family-resources/incorporate-stem-kitchen
(3)https://www.rasmussen.edu/degrees/education/blog/simple-stem-activities-for-kids/
(4)https://tinkerlab.com/easy-stop-motion-animation-kids/
(5)https://casel.org/homes-and-communities/
(6)https://www.kiddiematters.com/emoji-feeling-faces-feelings-recognition/
(7)https://casel.org/core-competencies/
(8)https://www.ivychimneys.net/sites/default/files/pdf%20parent%20mindset%20handout.pdf
(9)http://onetimethrough.com/10-ways-teach-kids-growth-mindset/
(10)https://selatmeigs.weebly.com/uploads/9/3/2/7/9327727/stopsaying_smart.pdf
(11)同上
(12)https://www.fantasticfunandlearning.com/wp-content/uploads/2016/10/Acts-of-Kindness-Bingo-with-The-WellieWishers.pdf

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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