NZ流、才能がある子をさらに伸ばす教育法とは?

NZ流、才能がある子をさらに伸ばす教育法とは?

南半球にある、島国ニュージーランド(以下、NZ) は日本の面積の4分の3ほどの土地に、人口わずか日本の30分の1ほど。のんびりとした穏やかな国です。この国で筆者の子どもは学校教育を受け、現在、アメリカのスタンフォード大学の大学院博士課程に在学中です。彼は小学校からギフテッドと呼ばれる優秀な生徒のためのクラスで学び、その恩恵を少なからず受けてきました。本記事では、ギフテッド教育にまつわるNZの環境や学校での取り組みについて、体験に基づいて、ご紹介します。

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個性を枠にとらわれず伸ばす小学校時代(5〜13歳)

小学校教育でカリキュラムの柱となるのはNumeracy (算数)とLiteracy (読み書き)です。とくに算数に関しては、クラスの生徒が一斉に算数の授業を受けるというスタイルではなく、試験の結果によって、算数の得意な生徒・苦手な生徒とクラスがわけられるのが普通です。とくによくできる生徒がいれば、上の学年の授業に出席することも珍しくなく、小学校のクラス編成はとても柔軟です。

学校では “Gifted and Talented” など、名称は若干異なる場合もありますが、ギフテッドのための特別クラスが公立学校でも設けられています。これは従来の学年という枠組みを外して、クラスから1〜2人だけが選ばれ、小学校全体で10人前後のクラスです。ギフテッドのためのクラスは、年齢相応の授業では退屈しがちな生徒たちに刺激や深く考えさせる機会を与え、その才能を伸ばしていけるような学習や社会体験をさせるという目的があります。

筆者の子どものクラスでは、サイエンスのプロジェクトや高度な算数やコンピュータの授業、興味深い自然科学のビデオを見るなど、内容は多岐にわたりました。勉強だけでなく、アクティビティもユニーク。このクラスだけで、カヤックで洞窟を探検するという自然体験もありました。

それ以外にも、全国的に展開されている New Zealand Centre of Gifted Children という、都市部中心に13歳までのギフテッドの子どもが週1回通う学校があります。ギフテッドの子どもたちは、神経質なところがあったり、理解力があるだけに反復練習のような地道な勉強を嫌がったり、納得のいかないことはしたがらないというような普通の生徒と異なる問題が見られることも多く、この学校では教育のみならず、サポートやカウンセリングまで幅広く対応してくれます。

才能を伸ばすチャンスが与えられる高校時代(13〜18歳)

NZの高校は5年間です。高校は小学校とは違って、ギフテッドのクラスを設けるところはあまりないようです。その理由は、選択する科目によって必然的に大学進学を目指す生徒や成績優秀な生徒だけで同じクラスを形成することが多くなり、学習に打ち込みたい生徒は比較的良い環境に身を置くことができるからだと思われます。

高校では、優秀な生徒に対して積極的に色々なチャンスが与えられます。例えば、ICASという、成績上位で希望者のみが受験する試験や、オーストラリアとNZの生徒だけの数学の試験などがあり、試験結果で全国あるいはオセアニアでの自分のレベルがわかるなど、適度な刺激が得られます。

高校時代に一番大事な試験は、NCEAと呼ばれるNZの統一試験ですが、希望者はスカラシップイグザムと呼ばれる奨学金を目指す試験を高校の卒業間際に受けることができます。この試験は上位何%かに入れば奨学金がもらえる仕組みなので、成績に自信のある多くの生徒が受験します。

高校では、この奨学金試験を受ける生徒たちに、特別授業があります。毎朝授業の始まる前の1時間、年間を通して学年200人くらいのなかから、わずか5〜10人のみが受けられる授業です。成績が優秀であれば、大学の授業料は全部この奨学金でまかなうことができるという画期的な仕組みでもありました。

実践の場でさらに能力を育む大学時代(18〜21歳くらい)

オークランド大学には、将来研究者を目指す優秀な学生(理科系の全学部から選ばれた50名のみ)を集めて、Science Scholars というクラスがあります。ここでは通常の授業に加えて、特別な授業を無料で受けることができます。メンターとなる先輩から個別に相談に乗ってもらったり、通常の授業を超える高度な分野を垣間見る貴重な機会を与えられます。

そして、各学科で上位何人かの学生はチューターとして大学から正式に雇われて給料をもらい、先生の助手としてクラスで教えたり、テストなどの採点を手伝ったりします。NZの大学では、優秀な大学生が教壇に立つことは珍しくなく、このような経験は、将来非常に役に立つ勉強になることは言うまでもありません。

また、NZの大学では、狭き門ではありますが、夏休みに大学の研究室の仕事の機会が得られます。各自、研究テーマをもらい、10週間の間大学で研究をすることができるのです。報酬として、6,000ドルほどが支払われ、夏のアルバイトとしては高額、しかも自分の好きな分野を突き詰めていける機会にもなります。

最後に

日本では、クラスのなかで「皆と一緒」ということに重点が置かれる傾向があります。なるべく落ちこぼれを出さないように、教育システムができあがっています。その一方で、優秀な子どもたちに対して、その能力を伸ばすような教育は、公的教育の範囲ではなかなか難しいとされています。

ギフテッドの子どもたちは、その能力にあった刺激を与えたり、深く考えたりする機会を与えられなければ、教室内で無為に過ごしてしまいがちです。この点、NZでは、公立の学校であっても、能力のある生徒はもっと伸ばそうという考え方が当たり前のように浸透していました。

このような子どもたちが仲間はずれになるとか、変な目で見られることはほとんどなく、ごく普通に受け入れられています。日本においても多様性がさらに重視されるこれからの時代。違いを排除するのではなく、それぞれの個性として尊重して伸ばすというNZにみられるような教育観点は今後、ますます求められるのではないでしょうか。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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