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パラスポーツは生きた教材!子どもたちに伝えたい、障がい者スポーツの魅力

パラスポーツは生きた教材!子どもたちに伝えたい、障がい者スポーツの魅力

いよいよ東京2020オリンピックパラリンピックイヤーの開幕です。そこで今回は、日本財団パラリンピックサポートセンターが取り組む、パラリンピックやパラスポーツを題材にした子どもたちへの学びについてご紹介したいと思います。大人に比べて偏見や差別のフィルターがない幼少期にこそ、学びは大きく一生モノになるはず!

お話を伺ったのは…

日本財団パラリンピックサポートセンター

今回お話を伺った、日本財団パラリンピックサポートセンター(通称パラサポ)は「SOCIAL CHANGE with SPORTS」をスローガンに、パラスポーツを通じて、社会の中にある先入観や心理的なバリアをなくし、一人ひとりの違いを認め、誰もが活躍できるD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)社会の実現を目指している。https://www.parasapo.tokyo/socialchange

日経DUAL記事

パラアスリートから学ぶ体験型出前授業「あすチャレ!School」とは?

パラサポ取り組む教育のひとつに、全国の小学校にパラリンピックの選手が出向き、子どもたちと一緒にパラスポーツを体験する出前授業「あすチャレ!School」がある。

車いすバスケットボール、ゴールボール、陸上(レーサー)など、各競技の講師が持つそれぞれのストーリーによる講話をあわせた授業が特徴で、どのプログラムも共通して、デモンストレーション・パラスポーツ体験・講話の3部から構成される90分間のプログラムだ。

「他者のことを自分ごとと考える心」「可能性に挑戦する勇気」「障がいとはなにか?」「「夢」や「目標」を持つ力」という4つの学びを体験しながら勉強していきます。


__選手たちは、どんなことを心がけて、これらの授業をしているのですか? 

「私が講演で心がけていることは、“出会った人と友達になる”こと。限られた時間ですが、私の大好きな車いすバスケットボールを通じて友達の大切さや応援の力などを伝えます。

パラリンピック競技のことは知っていても、実際に選手がプレーするシーンを見る機会はめったにないので、シュートを披露すると、児童や生徒たちは大喜び。いつの間にか体育館は生徒達の応援の声でいっぱいです。

生徒達のミニゲームでは、車いすを上手く操作することは出来ませんし、シュートも簡単には決まらないです。しかし、生徒達の応援はどんどん増していきます。それは、友達が一緒懸命に車いすバスケットボールを行う姿を見てまるで自分が行っているかのような気持ちになるからです。友達が頑張っていたら心から応援し、悲しんでいたら自分も悲しくなる。困っていたらもちろん助けるはずです。世の中全ての人が友達になれば、こんな嬉しい事はないです! 嬉しい時も、悲しい時も、頑張っている時も。困っている時もその人の気持ちが自分の事の様に思える社会。あすチャレ!スクールを通じて訪問した学校の生徒達と友達になる!私のもっとも心がけている事です」(あすチャレ!スクール講師/シドニー2000パラリンピック車いすバスケットボール日本代表キャプテン 根木慎志さん)

授業後は先生も生徒も、障がいに対する意識に変化が

実際に、授業を体験した生徒の感想がこちら。

・障がい者との壁をつくるのもなくすのも全て私たちなんだと学びました。
・迷ったら、まず挑戦!!
・失敗しても恥ずかしいことではなく、挑戦することはカッコいいことがわかりました。
・困っている人を見かけたら自分にできることを考えてみようと思いました。

一方、先生からもこんな声が。

・生徒の感想から障がいに対する意識に変化が生じ、「みんなの意識の中にある壁がなくなれば障がいはなくなる」など、前向きな態度や意識がうかがえました。
・教室に入りにくい状態で別室教室をしている生徒が「教室に戻れるように頑張りたい」と言い出したり、支援学級で勉強するのが恥ずかしいと抵抗していた生徒が「入級したい」
と言い出したり。あすチャレ!スクール後に明らかに今までと違う人生や日常に踏み出そうという動きがあります。

まさに生きた授業!他に、あすチャレ!スクール実施後に図書館にパラスポーツコーナーを設置した学校や、自分たちでパラスポーツ(車いすバスケットボール)について調べて、発表した学校などもあるそうです。

楽しく「障がい」について学べる機会を!

他に、日本財団パラリンピックサポートセンターでは「あすチャレ!ジュニアアカデミー」という授業も行っています。

講師であり現役パワーリフティングで東京2020大会出場を目指す、講師の山本恵理さんにお話を伺いました。


「一番意識していることは、楽しく障がいについて学べること。すごい!へぇ!なんでだろう?という児童の好奇心をそそられる共生社会が自然に身に付く授業だからです。授業としては、いろんなことを聞いてみたくなるような雰囲気を心がけています。友達に話しかけるのと同じように、障がい者に対して、目をそらすのではなく、ぜひコミュニケーションを取ってほしいという想いでお話しています。

先生方からは、いつも授業では発言しない児童が勇気を出して質問をしていて関心した、生徒がこんなに聞き入っているのはみたことないなど、嬉しいお声をいただいています。
授業の最後には、それぞれが“あすへのチャレンジ!”を設定するのですが、筋トレをする!とチャレンジの宣言をし、帰ってからすぐに腕立て伏せをし始めた、というお話を聞いて嬉しくなりました」

学校用教材『I’mPOSSIBLE』で、新学習指導要領にも含まれるパラリンピック教育を!

また、日本財団パラリンピックサポートセンターでは、2017年から国際パラリンピック委員会(IPC)公認パラリンピック教材『I’mPOSSIBLE』の開発に携わり、同年より全国の小・中・高等学校および特別支援学校に無償で配布しています。『I’mPOSSIBLE』日本版 開発責任者である、マセソン美季さんにお話しを伺いました。マセソンさんは、IPCの教育委員会メンバーでもあります。

__『I’mPOSSIBLE』日本版とは、どんな教材なのでしょうか?

『I’mPOSSIBLE(https://www.parasapo.tokyo/iampossible/)』は、世界各国の子どもたちに学校教育を通じてパラリンピックの魅力を伝えることを目的として開発されました。教材の名前“I’mPOSSIBLE” には、「不可能(Impossible インポッシブル)だと思えたことも、考え方を変えたり、少し工夫したりすればできるようになる(I’m possibleアイムポッシブル)」という、パラリンピックの選手たちが体現するメッセージが込められています。

パラリンピックの基礎知識と魅力を知り、価値を学び、共生社会を考えるといった3つのステップにわかれており、単にパラリンピックについて知るだけでなく、共生社会につながる気づきを促せるよう構成されています。知らないことを教えることに抵抗があることはよくわかります。ですので、先生方にパラリンピックについての知識がほとんどなくても負担なく授業を行っていただけるよう心がけました。現場の先生方にもヒアリングをし、使いやすい教材を作ったつもりです。最初は「どのように活用したらいいかわからなかった」とおっしゃっていた先生も、実際に使って授業をしてみると、子どもたちの豊かな発想から学ばされることが多かったとの声をいただいています。

「知らないことを教える」というハードルをより低くするため教員向け研修も。昨年夏に開催された千葉県内教職員向け研修の様子。

__パラリンピック教育は新学習指導要領にも明記されているそうですが

本教材の開発の際は、新しい学習指導要領で目指す「主体的・対話的・深い学び」を実践できる内容を意識しました。パラリンピック教育は、むしろ大会を会場やテレビで観戦した後でさらに意義が増大するもので、一過性のイベントのための教育ではありません。パラリンピックを題材にして、大会後こそ、積極的に学校教育で取り組んで頂きたいと願っています。

__優れた取り組みを行った学校はパラリンピック閉会式に招待も!

現在、インクルーシブな社会づくりを目指し特に優れた取り組みを行った学校を、東京2020パラリンピックの閉会式で表彰する「I’mPOSSIBLE アワード」の日本国内応募を受付中(2020年1月31日締め切り)。『I’mPOSSIBLE』を1回でも授業で活用した学校には応募資格があり、ご応募いただいた全ての学校には、共生社会への理解を深める授業・活動に取り組む学校の証として「参加証」が贈呈されます。受賞校には、学校関係者および児童・生徒代表者の1名ずつに閉会式での表彰にご出席いただくほか、閉会式で投影される動画の撮影が入ります。ぜひ多くの学校に応募いただき、パラリンピック教育の成果を全世界に向けて発信してもらいたいと思います。

アワード詳細; https://www.parasapo.tokyo/iampossible/award/

いかがでしたか。オリンピック・パラリンピックは単なるスポーツ観戦ではない、絶好な学びのチャンス。日本で開催されるまたとないこの機会を、親子で有効活用したいですね。

パラスポーツをもっと知りたいあなたへおすすめしたい情報がこちら。ぜひチェックしてみてください。

〇障害のあるなしに関わらず、チームがひとつになって駆け抜ける、今までにない駅伝「パラ駅伝」(3月24日@駒沢オリンピック公園陸上競技場で開催)

https://www.parasapo.tokyo/paraekiden/

〇「子連れ」ポイントで選ぶ、パラリンピック観戦。おすすめ競技は?

https://www.parasapo.tokyo/topics/20589

〇パラスポーツのことをカルタで学べる「パラサポかるた」

https://www.parasapo.tokyo/topics/13042

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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