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2021年は「SDGs×教育」がキーワード!

2021年は「SDGs×教育」がキーワード!

ここ数年日本でもよく耳にするようになったSDGsというワード。企業でも取り組みが盛んになっていますが、その波は教育にもやってきています。そこで、SDGs×教育の可能性を探るべく、川崎市でSDGs保育園「KIDSふぉれすた」を運営する、一般社団法人 EDUCATION design代表理事の小野田一樹さんにお話を伺いました。


小野田一樹さん
一般社団法人EDUCATION design(https://educationdesign2020.com/)代表理事。
社会的地位や経済的な格差に関わらず、すべての子どもに質の高い教育を提供する仕組み作りを通じて、これからの日本や世界を担う人材を育成することにより、持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。現在は、主に川崎市のSDGs保育園「KIDSふぉれすた」(https://www.kidsforesta.com)の運営、学校教育のコンサルティングなどを行っている。日本中の子どもたちとパパママを応援する「スマイルキッズプロデュース」の活動も必見!(https://smilekidsproduce.net/philosophy/)。

 

SDGsとは?

そもそもSDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称です。2015年9月の国連サミットで採択されたもので、国連に加盟する193ヵ国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた目標のこと。世界中で取り組むべき課題として「貧困をなくそう」「質の高い教育をみんなに」「飢餓をゼロに」「ジェンダー平等を実現」といった17の目標が掲げられています。

ポイントは、これらの課題実現を「地球上の誰一人取り残さないこと」を誓っている点。そのため、SDGsは新時代の世界共通の憲法とも言われています。

会社員だった小野田さんがSDGs保育園を設立するまで

__小野田さんのお仕事について教えてください

前職の旅行会社JTBでは、教育関連の旅行企画・販売や、学校行事のプログラム開発に関する仕事をしていました。現在は、一般社団法人 EDUCATION designの代表理事として、SDGs保育園「KIDSふぉれすた」の運営やSDGsに関するさまざまなプロジェクトを行っています。2021年4月より川崎市認定「みらい保育園」に名称変更し、さらにSDGsの取り組みを加速させていきます。

__SDGs保育園を作ろうと思ったきっかけは何ですか?

20年以上も教育に関する仕事に携わってきたのは、「子どもの成長に関わること」にやりがいを感じているから。何より、この仕事を通して、私自身も大きく成長できると考えています。

保育園を作るきっかけは、ここ数年で頻発している児童虐待のニュースを見るたびに、夜も寝られないくらい考えこんでしまったこと。何度も保護されていながら守れない命、7人に一人といわれる子どもの貧困や格差の問題、児童相談所の現状など……。日本は世界有数の先進国でありながら、なぜこのような社会的弱者に寄り添えないのだろうか……と考えるようになり、まずは、私自身が当事者になって考えてみようと思い、保育園を経営することにしました。

SDGsに関しては、2015年に国連で採択された当時、JTBで留学や海外研修のプログラム開発を担当していましたので、世界のさまざまな取り組みを知る機会がありました。日本では最近ようやく、企業などを中心にSDGsというワードが浸透するようになってきましたね。教育においても、小中高での探究学習などに取り入れられるようになってきましたが、幼児教育で取り入れているところは、まだ少ないのが現状です。その理由は、「SDGsを幼児が理解できるはずがない」と思われているからではないでしょうか。私はもちろん、幼児にSDGs17の目標を理解させようとは全く思っていなくて、たとえば「人との違いを受け入れられる子」、「他者を思いやり仲良く遊べる子」、そういったSDGsの理念の土台を幼児のうちから親子で学べる場を作りたいと考えています。

SDGs保育園「KIDSふぉれすた」で実践している3つの取り組み

__「KIDSふぉれすた」保育園が実践している、SDGs×教育の取り組みとは?

SDGsとは、一言でいうと“持続可能な世の中に変えていくこと”。KIDSふぉれすたでは現在1歳2歳のお子さんをお預かりしていますので、小さな子どもたちが遊びの中でそれをどう学んで行くかを考え、以下の3つを軸に掲げています。

その1 保育にSDGsを取り入れる。

絵本は、昔話や未来をテーマにしたり、日常生活を描いたり、人間だけではなく動物や植物が主人公だったり、そんな年齢を問わず楽しめる絵本自体が多様性そのものであり、SDGsの普及に相応しい存在であると考える「えほん未来ラボ」https://ehonmirai-lab.orgさんにSDGs絵本を選定していただきました。子どもたちの発達や興味関心に応じた絵本を、その都度、保育士さんがチョイスして読み聞かせしてくれています。

その2 地域への貢献

地元、川崎市の企業にお願いして、壁面緑化をしました。緑化することで、断熱効果に優れ、夏は冷房で部屋が冷えやすくなり、冬は暖房の熱をキープしやすくなります。また、壁の温度が低くなることからヒートアイランド現象(地球温暖化)の防止になったり、壁面の植物の光合成により、空気の浄化作用も期待できます。また、コロナ禍が終われば、園に通われる方だけでなく、地域にお住まいの方々を対象とした、SDGsの理解を促すワークショップも開催していきたいと考えております。地域みんなでSDGsを考えるきっかけ作りをしていきます。

その3 地球にやさしい備品や教具の導入

当園では、園児が安心して遊べるように、万が一口に入れても安心な国産のお米と野菜でできた「おやさいクレヨン®︎」を使用したり、100%自然エネルギーの導入、間伐材を使った椅子と机を使用するなど、地球にやさしい備品や教具を選んで使用しています。

第1回ジャパンSDGsアワード(内閣官房長官賞)を受賞した「NPO法人しんせい」とのコラボ企画では、保育園のグッズやロゴワッペンを制作していただきました。

他にも、今年の4月から始まる給食も「持続可能性」を前提に、食材やメニュー、食器などを保育士さんたちと話し合っているところです。

日本が目指すべきは、20年後の社会で活躍できる子どもの育成

__保育園に通われる保護者の方たちの反応はいかがですか?

保護者の方が働く企業でもSDGsの取り組みをしていて興味をもったという方もいらっしゃいますね。ただ、私たちは今のSDGsという流行りに乗っているわけではありません。SDGsは2030年までの目標ですが、今の子どもたちが生きていくのは、もっと先の未来です。そして、私たち幼児教育に携わる者が見据えなければならないのは、現在の子どもたちが社会に出る20年以上先です。今から20年前、スマホはまだ存在していませんでした。しかし今では、例えば電車の中で、ほとんどの人がスマホを片手に、様々な情報を簡単に取得でき、またゲームや音楽を楽しんでいます。そして今から20年後の未来は、さらに変化が加速し、今とはまったく異なる社会になっていると言われています。そんな未来を生きる子どもたちが、さまざまな変化や困難にも立ち向かっていける考え方や行動力を小さいうちから身に着ける手助けをしたいと考えています。

SDGs×教育を実践する海外の学校の例

__小野田さんが参考にしている、海外でのSDGs×教育の取り組みなどはありますか?

世界、特にヨーロッパでは、SDGsが「そんなの常識だよ」と言われるほど浸透している国々があるのに対して、日本は、大きく遅れを取っているなと感じてます。学校で言えば、インドネシアのバリ島にあるインターナショナルスクール「グリーンスクールバリ」などは有名ですよね。バリ島のジャングルの中で、竹で作られた壁のない美しい教室で、さまざまな体験や実践を重視しながら、実生活に即した様々な能力の習得を目指す学校です。

私が実際に訪れた中で感銘を受けた学校は、アメリカのシリコンバレーにある「ヌエーバスクール」です。IQ135以上が入学できると言われ、ギフテッドスクールとしても知られていますが、「自分で考えてやってみる」という探究心がベースとなった教育を実践する授業が行われていました。私が見学させてもらった6年生の授業では、1年間かけて幼児3人が遊べるツリーハウスを作るという課題が与えられていました。児童たちは地球にやさしいツリーハウスの材料や設置場所、そのために必要な強度の計算や設計、くぎの打ち方や、のこぎりの使い方、さらに幼児が目をひく配色などを自分たちで調べていきます。教えられるという受け身の教育ではなく、課題に興味を持ち解決のために自ら学び、先生は見守る。というまさに21世紀型スキルの学びがそこにはありました。

日本におけるSDGs×教育の可能性

__小野田さんが現在注目しているSDGs×教育を掲げる小学校はありますか?

たとえば子ども園から短期大学までがSDGs活動を積極的に推進する「新渡戸文化学園」など、SDGsを教育に取り入れる学校が増えてきています(耕作放棄地の開墾からオーガニックコットン栽培、糸紡ぎから加工・染色するプログラム、薪や炭、堆肥利用目的の里山を果樹の植林へ変え、果実の食品加工から6次産業化を考える取り組みが評価され、2019年環境省「第7回 グッドライフアワード」環境大臣賞を受賞している)。

これまでのように偏差値の高い大学へ入ることが学びのゴールではなく、今後は「21世紀型スキルの修得」にどこまで舵を切れるかに、日本の教育の未来がかかっているのではないでしょうか。そのために、もっと民間企業と学校の連携が増えていくことにも期待しています。

自宅でできる、SDGs教育

__自宅でできるSDGs教育はありますか?

たとえば、家で使っている食材や食器、着ている洋服など、身近なものを少しでも持続可能なものに変えてみる。そして、なぜそれを選んだのかをお子さんに伝えて、家族で話をしてみたりする。そうすることで、子どもの探究心に火がつき、深く考えたり、興味をもつきっかけになるかもしれません。「どうせ選ぶなら持続可能なものが良いでしょう」そんな考え方が日本で当たり前になることを願っています。

__最後に、読者の方にメッセージをお願いします

コロナ禍で今までの常識が常識ではなくなってしまいました。様々な制限がかかる中で、今、改めて、人や社会とのつながりの大切さを感じることが多くなったと思います。大変なことも多いですが、オンラインツールの普及やリモートワークなどの新しい生活スタイルも浸透し、これまで以上に手軽に人と人とがつながれる時代になりました。そんな今だからこそ、企業も学校も個人も、これまでの伝統や文化を大切にしながら、本当に社会全体や未来に必要なことは何かを考え、その「在り方」を、持続可能性を前提にトランスフォームしていく時期なのではないかと思います。

いかがでしたか。SDGsを難しく考えていた気がしますが、今自分たちにできることから取り組んでみようと思いました。小野田さんは、さまざまなSDGsの取り組みに共感して一緒に活動してくれる仲間を募集中だそうです。興味のある方はぜひHPよりご連絡ください。

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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