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ワーママ以外も利用が当たり前! フランスの公的一時保育「ギャルドリー」とは?

ワーママ以外も利用が当たり前! フランスの公的一時保育「ギャルドリー」とは?

フランスの保育園には、両親がフルタイムの共働きであることが条件の「クレッシュ」と、無条件で短時間から預かってもらえる「アルト=ギャルドリー(以下、ギャルドリー)」があります。前者は日本の保育園と同様ですが、後者は日本にはない育児施設です。今日は、フランスにはあって日本にはない「ギャルドリー」の存在についてお伝えしていきます。

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だれでも利用可、しかも公立だなんて!

ギャルドリーの一番の特徴は、働いているか否かに関係なく、子どもを預けることができるということでしょう。対象は、歩き始めから幼稚園が始まる前の子どもたち。平日にフルタイムで預ける一般的な保育園と違い、ギャルドリーは、月曜から金曜の5日間をさらに午前と午後に分け、計10コマに分けて預かりをしています。

登録の仕方は自治体によって多少の違いはありますが、一般的には、毎週何曜日の何時から何時までという契約をします。例えば、Aさんは「毎週火曜の午前と木曜の終日(3コマ)」、Bさんは「月曜から木曜の午前中(4コマ)」のような感じです。多くの家庭が利用できるよう、最大で何コマまでという制限があります。それでも、フランスは出生率が高いので、パリなどの都市部では長いウェイティングリストがあることも多いようです。

費用は、親の収入によって変わり、前年度の所得税の申告額から計算されますが、1時間あたり60円~600円程度と公立なのでかなり安価。一般的には、1日あたり2500~3500円程度を支払う家庭が多いようです。食べ物、おむつは持参なので、ここに含まれません。

フランスのママたちは子どもを預けて何をしている?

現地に住む日本人がフランスのギャルドリーを利用する際に一番驚くのは、「預ける理由を聞かれない」ということ。母子密着が強い日本人は、もし子どもを預けるとなるとそれなりの理由が必要だと感じ、予定もないのに預けるというと、なんとなく後ろめたい気がしてしまいます。かわいい我が子と離れて過ごすなんて「かわいそう…」と見る方もいるでしょう。
しかし、フランス人は逆で、「母子だけでは狭くてかわいそう」「もっと外の世界を見せてあげなくては」と思うようです。実際に、フランス人はその時間を、ショッピング、習い事、趣味、仕事などに自由に使っています。

どちらが正解というのはありませんが、歩き始めの1歳半頃から外に出すのは、子どもの心理発達の側面から見てもおすすめです。
母親オンリーの0歳代とは違い、1歳半過ぎからは、精神的な絆である“アタッチメント”を、親以外の人に広げていくことが心理研究で明らかになっているからです。「歩く」という体の成長と「外に興味を持つ」という心の成長がこの時期に重なり合うのは偶然ではなく、心身のパワーを使って自分の世界を自分で開拓しようとしているのです。

もし日本にギャルドリーがあったらママの救世主になるのか?

公立で定期的に預かってくれるギャルドリーの存在を「うらやましい!」と感じた方も多いと思います。
しかし、今の日本にギャルドリーを導入して、育児環境の向上に直結するかというとそうでもなく、それ以前に変えるべきものがあります。それは社会風潮です。日本は「母親なのだから○○すべきだ」という世間の目がとても厳しく、それゆえ、子どもを預けることに後ろめたさを感じてしまっています。これがなくならないことには、ギャルドリーは育児環境向上の救世主にはなりきれないのです。

フランスは先進国でナンバーワンの出生率を誇る多産国家ですが、それを後押しする温かい社会風潮があります。ベビーバギーで地下鉄に乗りこんだら、乗客たちがすぐにスペースを作ってくれます。
駅の階段では、男性が率先してバギーを担いで運んでくれます。「子どもはみんなで育てようよ」という温かな目こそ、少子化問題で悩む日本に求められるものであり、それにより「ギャルドリー」の存在が生きてくると思うのです。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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