公開 / 更新
子育て

子どもの自立につながる「甘え」と「甘やかし」の見極め方

子どもの自立につながる「甘え」と「甘やかし」の見極め方

「甘えさせる」と「甘やかす」、似ているようで、非なるもの。似ているばかりにうっかり混同してしまい、様々な悩みに発展してしまうことがよくあります。そこで今回は、自立という観点から見た「甘え」と「甘やかし」の違いにフォーカスし、両者の見極めポイントについて解説していきます。

「甘え」と「甘やかし」を混同していませんか?

「甘えさせる」と「甘やかす」は、両方とも「甘い」という漢字が入っているので混同されがちです。また、漢字云々を抜きにしても、どんな関わりが甘えさせるに当たるのか、どこまでやってしまうと甘やかすことになるのか、その見極めが難しく、日々迷ってしまうこともあるのではないでしょうか。

私のこれまでの育児相談のケースを見ると、親御さんが「育児はこうあるべき」と育児方針として掲げている部分が逆に邪魔をし、その見極めを難しくしてしまっていることがあります。大きく分けて2つあるので、それをご紹介しましょう。

①「子どもを甘やかすのはよくない」という思いが強く、甘えさせる部分でも甘えさせてあげていないケース

親が厳しくなるため、子どもの気持ちが不安定になり、親に反抗し、ぐずることが増え、注意引き行動をすることも。自分自身が権威的な親に育てられ、それをそのまま実践していることも多いようです。

②「子どもは甘えさせてあげることが大切」という思いが強く、甘やかしに踏み込んでいることに気づいていないケース

親がいつも甘いと、子どもは言うことを聞かず、親の指示が通りにくく、打たれ弱い子になる場合も。誤った形で怒らない子育てを実践しているご家庭に多く見られます。

知っておきたい4種類の「甘え」と「甘やかし」とは

これで分かるように、良かれと思ってやっていたら、いつのまにか境界線を越えていたということが多いのです。そこで、そのボーダーを分かりやすくするために、「甘えさせる」と「甘やかす」を4つに定義づけしてみたいと思います。

その1 自己肯定感を育むための『甘え』

「甘えさせる」とは、子どもが求めてくる愛着行動に対し、親が温かみを持って受け止める姿勢を言います。子どもが、「抱っこして」と言ったり、ママのひざの上に乗ってきたりしたときに、その気持ちを満たしてあげることが「甘えさせる」ことになります。こういう場面で、「自分が受け入れてもらっている」と感じることは、その子の自己肯定感の安定につながります。言うなれば、自己肯定感を育むための『甘え』の部分です。

その2 自立のために必要な『甘え』

また、子どもの「負の感情」を受け止めることも「甘えさせる」に当たります。たとえば、試合に負けて悔しいとき、友達にいじわるされて悲しいとき、何度も失敗して辛いとき。これらの負の感情を、親ならではの包容力で受け止め、その気持ちに寄り添ってあげるのです。このような精神的な支えにより、前に進もうとする力は湧いてくるものです。言うなれば、自立のために必要な『甘え』の部分です。

その3 欲求に対する『甘やかし』

「甘やかす」と言うと、一般的には、おじいちゃんやおばあちゃんが、子どもに好きなだけおもちゃを買い与えるような場面をイメージするかもしれません。まさにその通りで、子どもの欲求を過度に満たしてあげるのは甘やかしです。物質的な要求だけでなく、好き放題に何でもやらせてあげるのもそれに当たります。我慢したり、気持ちをコントロールしなくても済む環境で育つため、学校などの集団生活が始まると悩みが露呈することが多くなります。

日経DUAL記事

その4 先回りによる『甘やかし』

もう1つは、年齢相応に子どもが身につけておくべき行動まで、親がやってあげてしまったり、子どもが失敗しないように、親が先回りして問題を解決しておくタイプの甘やかしです。以前、このシンガファームでも取り上げたカーリングペアレントがそれに当たります。親があらゆることをお膳立てしてくれるのに慣れてしまうため、自立が遅れたり、打たれ弱かったりという問題が出てきてしまいがちです。

この4つをバランスよく取り入れることで、「いつのまにか脱線している」ということが防ぎやすくなると思います。甘えさせるけれど、甘やかさないという適切なさじ加減をするポイントとして押さえておきましょう。

「甘え?」それとも「甘やかし?」判断に迷う典型パターンを解説

では次に、育児相談などでよく聞く「迷いがちなケース」をいくつか取り上げてみましょう。

Q.「子どもをほめてばかりでは、甘やかすことにならない?」

A. これは甘やかしにはなりません
これに似た質問で、「ほめてばかりでは調子に乗らないか」というのもありますが、もし仮にそうだと感じる場合は、ほめどころが適切ではないからかもしれません。たとえば、「天才!」「もともとの才能だね」のようなほめ方をしてしまうと、それは、「あなたは努力しなくてもできる」というメッセージを届けていることになります。それにより、自分への甘さも出てしまいかねませんので、その場合は、ほめ方自体を見直すのがポイントになります。

Q.「身支度の「ママやって!」に応じるのは甘やかし?」

A. 必ずしも甘やかしになるわけではありません
「めんどうだから」という理由での「ママやって」であれば甘やかしになりますが、「ここ最近ママが忙しくてかまってくれない」という思いからであれば、それは甘えになります。ですので、その行動自体をOKかNGかと白黒はっきり分けるよりも、その裏にある子どもの心理を読んで、臨機応変に対応を決めるのがベストです。

Q.「ぐずったときに言うことを聞くのは甘やかし?」

A. これも1つ上の質問と同様です
「なぜぐずるのか?」とその理由をまず考えてみるのが先決です。上の4つの定義に照らし合わせ、「今なぜここでぐずるのか」を分析してみてください。わがままによるぐずりなのか、甘えたい気持ちのアピールか、その子を一番よく理解しているのはママやパパなので、お子さんの心理を推測するのは割とやりやすいと思います。

Q.「思い通りにいかないとキレるのは甘やかしすぎが原因?」

A. あまり我慢する経験をしてこなかった場合は、甘やかしが原因のことが多いです
子どもは成長とともに、自分の思い通りにならない場面により多く遭遇するようになります。それまでに自分で自分の気持ちをコントロールするスキルを身につけていないと、キレることでしかリアクションできなくなってしまうためです。

依存と自立を行き来する時期、負の感情の捉え方がカギに

以上、判断に迷いがちなケースを4つ出しましたが、多くの方が迷うのは、子どもの負の感情との付き合い方なのではないでしょうか。やはり親は、子どもが負の感情を持つことをできれば避けたいと思うもの。「子どもが不快な思いをするのはかわいそう」と感じやすいのです。

でも、子どもたちは無数の失敗を繰り返すことで成長をしていきます。その中で、不安や悔しさ、もどかしさを感じながら、やり遂げることを学んでいくのです。子育て心理学では、このタイプの不快な感情は子どもの成長に必要なものとしています。つまり、「負の感情=悪」ではないのですね。それを親が極端に怖がって、ついつい先回りして、子どもたちの前に転がっている小さな石ころまできれいに取り除いてしまうのは、その子の成長の機会を奪うことになるので、甘やかしになってしまうのです。

私は、子どもにとって害にしかならない負の感情は「さびしい」「ひとりぼっち」など、孤独感につながる感情だと考えています。「負の感情」ということで、ひとくくりに「悪」とせず、子どもの自立につながる感情もあることを理解しておきたいものです。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE

関連記事

新着記事