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子育て

幼稚園発祥の国ドイツ。保育方針や親のかかわり方にみる日本の幼稚園との違いとは?

幼稚園発祥の国ドイツ。保育方針や親のかかわり方にみる日本の幼稚園との違いとは?

幼稚園はドイツが始まりだということをご存じでしょうか? ドイツでは子どもの遊びや動き、能力の発達などに大切なものはすべて自然のなかにあるといわれ、より自然に近い環境で過ごすことが最適という考え方です。また、保育方針や親のかかわり方、食育などをみると、日本とはかなり違っています。そのようなドイツの幼稚園の特徴を、日本の幼稚園と比べながら紹介します。

日経DUAL記事

自然との関わりを重視し園舎を持たない「森の幼稚園」も増加

ドイツの教育者フリードリヒ・フレーベル氏は1840年に、最初の「一般的なドイツの幼稚園」をブランケンブルクの緑広がる庭のなかにつくりました。それまでにも「託児」の施設はありましたが、幼児教育を目的とする施設はこれが初めてで、その後現在の幼稚園の形になったのです。

フレーベル氏は幼稚園が「子どもの楽園」であるべきとし、「子ども=Kinder」と「庭(楽園)=Garten」を合わせてキンダーガーデンと名付け、その名称は現在も使われています。そして幼稚園の園庭には花壇や菜園など植物を育てて観察できる場所を必ず設置し、子どもたちが積極的に自然にかかわることを推奨しました。

フレーベル氏が創設した幼稚園のイメージもあり、ドイツでは子どもが自然と共に成長することが、何かを発見したり、考えたり、行動したりという能力を育てるといわれています。日本でも近年注目されている、園舎を持たず子どもを毎日森に連れていく「森の幼稚園」は北欧発祥ですが、ドイツでは1990年代から始まり現在2,000カ所以上に広がりました。

毎日森へ行って園舎では触れることができない幅広い遊びや運動を自然のなかで経験することで、幼児の想像力を促すというコンセプトが、ドイツの子育て概念から評価されています。

給食の栄養バランスは日本に劣るも生野菜は必ず提供

世界でも日本の給食の栄養バランスは高く評価されていますが、ドイツの給食は日本のような栄養やカロリーなどの細かい計算はありません。近年では少しずつ改良されているものの、それでもまだ欧州らしいパスタやスープなど1~2品にデザートを加える食事スタイルです。

ただ、ドイツの幼稚園で必ず提供されているのが生野菜です。人参やパプリカなど栄養価の高い野菜をスティックにしたものを、3時のおやつに食べることが多くあります。小さなころから生野菜をよく噛んで食べることが、栄養の面だけでなくあごの強化と脳の発育を促進させると、ドイツの小児科界でも推奨されています。

園の運営や見守り保育に関わるなど保護者の役割が密接

ドイツには、「Elterninitiative(親のイニシアチブ)」という団体によって設立された幼稚園があります。親がメンバーであり理事会を構成する形態を持っているため、園児の保護者は幼稚園のあらゆる事柄と発展に多大な影響力を持っています。

実際に保護者が園内に入り、給食を作ったり、園庭の整備を行ったりするなどのサポートを手がけます。例えば森の幼稚園では、保護者が毎朝交代で温かいお茶を人数分水筒に詰めて提供するなどの役を担います。親が幼稚園の様子をより知ることができるという利点以外にも、親と保育者(先生)の距離が近くなり信頼関係を築けることが、子どもに安心感を与えるといわれています。

また、どの幼稚園でも、入園したばかりの子どもには必ず「慣らし保育」の期間が設けられます。徐々に時間を延ばすという方法は日本でも取り入れられていますが、ドイツでは約1か月、長くて2ヵ月ほどの慣らし保育期間があり、親も一緒になって子どもの状況に合わせて進めるのです。流れは以下のようになります。

・まず保護者も園内で一緒に1~2時間過ごす
・慣れてきたら保護者は園内で隠れて見守り、子どもが泣いたら声をかける
・安定してきたら保護者は園の外に出るようにし、少しずつ毎日時間を伸ばしていく
・子どもが泣いてこれ以上は無理と判断されたらすぐに迎えにいく
・給食や昼寝がクリアできたら慣らし保育は完了

このように、少しスローペースかとも思われているドイツの慣らし保育ですが、「幼稚園は一時的なものであって、両親はいつでもあなたを迎えに来てくれる」という行動パターンを見せることが子どもの不安を拭い、幼稚園が安心できる場所だという認識を与えます。

過ごし方の違い 自由なスタイル

日本の幼稚園といえば、園児がみんなでお絵描きをしたり、先生のピアノに合わせて歌を歌ったり、お遊戯をしたりという過ごし方が多いと思います。一方でドイツの多くの幼稚園は、基本的に園児が「自分のやりたいことをやる」時間がほとんど。給食の時間以外はそれぞれ自分のやりたいことをして過ごし、先生はそれを見守ります。

年齢には関係ない縦割クラスが基本で、それぞれがやりたいことを準備し、先生のアドバイスを受けながら好きな遊びを楽しみます。運動が好きな子や音楽が好きな子、工作が好きな子などがそれぞれの個性と感性を生かし、得意分野を伸ばしていくというやり方です。自主性を尊重しているため、もし園児が「やりたくない」といえば、それを強制しないという方針を持つ幼稚園がほとんどです。

まとめ

ドイツの幼稚園に1年間通った経験がある我が子は、日本の幼稚園に移った後で戸惑う時期がありました。例えば、工作に没頭している最中に全員で歌の練習をする時間になったので工作を中止するように言われた時、なぜやめなくてはならないのか理解できない様子だったそうです。

日本では幼児期から協調性を養うことが大切とされますが、ドイツでは個性を尊重して伸ばすことが重要視されるという違いがあります。どちらがよいというわけではありませんが、両国の考え方の違いがすでに幼児教育の時点で表れていることを感じました。

執筆者/ドレーゼン志穂

<参考URL>
https://de.wikipedia.org/wiki/Kindergarten
https://www.socialnet.de/lexikon/Geschichte-des-Kindergartens#:~:text=Am%2028.,Kindertagesst%C3%A4tte%20(Kita)%20genannt%20wird.
https://www.sdw.de/fuer-den-wald/waldpaedagogik/waldkindergaerten/#:~:text=Inzwischen%20gibt%20es%20bundesweit%20circa%202.000%20Waldkinderg%C3%A4rten%20(Stand%202021).

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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