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子育て

現役保育園のきよみ園長先生に聞く!【コロナ禍の保育】と【子どもの発達】のこと

現役保育園のきよみ園長先生に聞く!【コロナ禍の保育】と【子どもの発達】のこと

都内の認可保育園の園長をしながら、NPO法人「こども発達実践協議会」代表理事を務めるきよみ園長先生。忙しい合間にSNSで保育に関する情報を発信したり、noteを活用したお悩み相談(しあわせお母さんプロジェクト)をするうちに、Twitterフォロワーは1万人以上。現役保育士やママたちから絶大な支持を得ています。そんなきよみ園長先生に、コロナ禍の保育で感じていることについてお話を伺いました。

きよみ園長先生
東京都認可園の園長、 NPO法人「こども発達実践協議会」代表理事。保育士や小さい子を持つお母さんたちの保育・子育ての悩みを解決すべく「目指せ!歩く保育辞典」がモットー。Twitter(@petit_column)やnote(https://note.com/hmpj/)などSNSを使った発信も話題に。保育実践・保育マネジメント・子育て講座など研修も行っている
HP(https://hoikushi-kenshu.jp/supporter/

 

日経DUAL記事

現役園長先生の傍ら、子育てを楽しむためのNPO法人を発足

__きよみ園長先生のこれまでの経歴を教えてください

新卒で川崎市の公立保育園に勤務しその後「自分のやりたい保育をしてみたい」と歴史ある無認可の保育園(共同保育所)で4年勤務。そこでの保護者の方との経験が今の活動の原点です。結婚出産を経て社会福祉法人の保育園立ち上げに参画し、ご縁があり株式会社の保育園で新園立ち上げなどにも関わりました。公立、認可、無認可、株式会社とさまざまな形態の保育園を見てきた中で、保育の質の格差が広がっていることを感じ、NPO法人を立ち上げ子育てや保育の楽しさを広げる活動を。現在は園長業とNPOを両立できるよう、都内の小規模認可園で園長をしています。

コロナ禍で、晴れの日=お散歩が当たり前でなくなった

__コロナ禍の今、園長として一番苦労されていることとは?

現在の園が2020年4月の開園で、入園3日目で登園自粛。まさにコロナとともの開園でした。一番大変なのは日々の清掃業務です。保育園では以前からインフルエンザやノロウィルス、結膜炎などの感染症が1人出た段階で次亜塩素酸消毒はしていましたが、普段は基本の掃除のみ。それが今は最大レベルの消毒を1年半以上やり続けています。公立保育園時代には用務員さんがいましたが、私立保育園にはいないので業務分担の面でも苦労していますね。手洗いうがい、換気については保育園ではそれまでも徹底していたの大きな課題と感じることはありません。

__コロナ禍の保育でこれまでと大きく変わったことはありますか?

以前は「晴れの日=お散歩」が当たり前でしたが、緊急事態宣言が発出され、お散歩が不要不急の外出なのかと悩むようになりました。何より、園では全保育室に空気清浄機を設置し、玩具は消毒していますが、散歩に行ったら遊具は消毒されていません。

コロナ前は公園に着いたらまず、保育士がタバコの吸い殻や空き缶がないかの安全確認をしゴミは回収してから遊んでいましたが、今は公園が外飲みの場所になっていたりするので、誰かが口を付けたゴミを保育士が拾って持ち帰るリスクを検討すると、安易に行きづらい状況です。今の園は3歳児までの園なので、感染対策を最優先して緊急事態宣言中の散歩は中止にしました。ただ4歳5歳児だと体力面からもそうはいかないとは思っています。

__コロナ禍で新しく加わった新習慣や工夫している遊びがあれば教えてください

公園には行けないとはいえ、運動神経の発達は6歳までと言われています。そのため、空き教室に室内遊具(平均台にはしご、鉄棒、マットなど)を常設しプレイルームにして遊んでいます。結果論ですが、公園のコンクリートの段差よりもマットを敷いて子どもの発達に応じて高さを合わせられるので2~3歳児には安全です。また、真夏の炎天下も熱中症を気にせず遊ぶことができたのはよかったです。

他にも、地域のシルバー人材を活用して、60歳以上の方に午前中だけ用務に入ってもらったことで、保育士の清掃の負担がかなり軽減されました。偶然ですが、その方が以前病院でお勤めをされていたので、衛生管理の感覚が素晴らしかったんです。60歳で定年したけれどまだまだ元気な清掃のプロ。そういった地域の方と保育園がつながることは大事だなと実感しています。

感染者が出ても休園にならなくなった保育園

__コロナによる休園の実情や自治体での対応の違いなどあれば教えてください

自治体によって1人陽性者が出ると休園して検査するところもあれば、陽性者2人までは本人と濃厚接触者のみ自宅待機のみとさまざま。都内では、濃厚接触者を狭めているので、マスクをしている保育士は濃厚接触者に該当せず陽性者が出ても開園できてしまいます。結果的に家庭内に感染が広がってしまう場合もあります。

Twitterにも「感染者が出ても休園にならなくなった」「保健所が入らなくなった」という保育士の声が届いています。保健所が追い付かない分、行政と園で迅速に判断しなければいけないんです。

また、職員本人が陽性なら人員が揃わないという理由で休園措置もありますが、間接的な自宅待機では措置がないので人員不足でも開園せざるを得ません。また、ワクチンの副反応でのお休みするスタッフも多く、看護師も主任も園長の私も保育に入りっぱなしで本来の業務が進まず、残業も増えています。

マスクでの保育は、意識しないと“大人の表情が読み取れない子”に

__コロナ禍では「1歳児の発語が遅い」など子どもたちの発達で気になっていることはありますか?

可能性としてはあると思います。私の園では、それを見越してマスク保育と共に、普段以上に園児と目を合わせてゆっくり話すよう意識しています。マスクが当たり前となった今の保育では、いつもより丁寧に接していかないと、“大人の表情が読み取れない子”になるのではと懸念しています。

先日、園の避難訓練の際に、真面目な顔で大事なことを聞いてもらうのが難しいなと感じたことがありました。目だけ真剣でもマスクをしていると感情が伝わりにくいんですね。子どもたちは大人のオーラをくみ取るので、「笑ってない」「怒ってはいない」とはわかるけれど、乳幼児には「大事な話をしているな」とは思えない様なんです。

コロナ禍の保育では「ちょっとした工夫」で子どもを伸ばせる

__外遊びができないと、砂遊びや泥んこ遊びも減っていると思います。何か対策はされていますか?

どろんこ遊びや砂遊びをする機会が減ることで、「手が汚れるのが嫌」という子が今後増えていくと思います。そうならないために、園では小麦粘土や絵具、片栗粉遊びなどで触感を楽しむ感覚遊びを積極的に取り入れています。

また、夏の水遊びでは氷をプラスして指先の冷たい感触を体験したり、他に口に入れても安全な食紅を垂らしたりして遊ぶことも。ご家庭でもぜひお風呂の中などでやってみることをおすすめします。さまざまな手触り、手が汚れる感触、色のあるものを触るといった手先への刺激が、体験量の差となり幼児の発達につながっていきます。

__休園時に保護者や園児のためにしていることはありますか?

昨年5月の登園自粛の際は、鯉のぼり作りの材料と作り方を時間差で保護者の方に取りに来ていただいて、家庭で工作してもらいました。

また、登園自粛の際は、必要な方に園の絵本や遊具を順番で貸し出しも行いました。子どもは家にない玩具など何か目先が変わると楽しめるので、園にあるものをどう活用するか考えています。それと、担任から週に1度は電話をかけ「お母さん大変じゃないですか?」などと話を聞いて保護者の方との関係性を深めるよう意識していました。

コロナ禍の保育は誰にとっても初めてなので、いかに柔軟に取り組むか。園長の手腕が問われていると思って取り組んでいます。

大事なのは先の見通しができる行政の迅速な情報の共有

__医療崩壊の次は保育崩壊と言われていますがどのようにお考えでしょうか?

今の行政に求めるのは対応するスピードと伝え方のバランスです。陽性者が出たときにどうなるかをあらかじめ知っているかどうかで保護者の対策もスタンスも変わってきます。急に言われると反発心も出ますが、「もし陽性者が出たらこうなります」という具体的な見通しや対処法を開示して情報の共有をしておけば、保護者の方たちも「仕方ない」と協力してくださる部分はあると思うんです。そのあたりを、行政へと意見をあげていくのも役割のひとつです。

例えば、さいたま市は保護者にも保育士職員にも迅速に同じ情報を開示しています。陽性者の情報と休園になる基準、休園時の緊急保育の預け先をご自身で調整し、難しい場合は自治体のサポートやシッターさんなどに登録しておいてくださいね、という案内まで出していると園長仲間から聞き、素晴らしいと感じました。私の園でも、区の感染者のリリースを見ながら、日々予測を立て準備をしている状態です。

子育ての孤立化を防ぐべく、SNSでお悩み子育て相談をスタート!

__先生がSNSで発信し続ける理由とは?

何より「保育が好き」なんです。でも最近は子育てが孤立しています。親はもちろん保育士も孤立して苦しむことも多いと感じています。今はネットから子育ての情報を得ることが多いならば、「ここなら安心で正しい情報が得られるよ」という場所を自分から発信したらいいのではとSNSを始めました。SNSを見ていると、私にとっては当たり前の感覚になってしまったことに悩んでいる保育士や親御さんも大勢います。私の個人的なこれまでの保育の経験でも困ってる人のヒントになれたら嬉しいです。

また、昨年5月からコロナ禍でさらに孤独な子育てで悩む親御さんも増えていると知り、ベテラン保育士や看護師、子育てまっさい中の保育士、子育て心理学のメンバー7名で「しあわせお母さんプロジェクト」を立ち上げ、子育て相談を行っています(次回の質問受付期間など詳細はTwitterを!)。おかげ様で多くのお悩みをいただき、1年半で400の質問に回答してきました。note(https://note.com/hmpj/)にまとめましたので、よかったらご覧ください。

誰かに話すことで子育てが楽しくなることがあります。子育ては正しさではなく楽しさを追及してほしいなと思いますね。

__最後に、未就学児の親御さんにメッセージを!

頑張りすぎないでほしいなと思います。コロナ禍だからうまくいかないことも普段より多いだろうし、発達などの不安もあるだろうけれど、今が充実していなければ、その先はつながっていきません。大変なこともあるけど「まあいっか」の幅を増やして子育てを楽しんでみてください。

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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