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子どものワクチンをどうする? 接種の有無が差別を生まないために

子どものワクチンをどうする? 接種の有無が差別を生まないために

新型コロナのワクチン接種が進んできた昨今、パパやママの接種が完了し、次は子どもたちの接種をどうするかという新たな悩みが出てきている方もいるかもしれません。そこで今回はワクチン接種が日本よりも進行しているアメリカでの事例も踏まえながら、子どもたちのワクチン接種にまつわる悩みについて一緒に考えていきたいと思います。

日経DUAL記事

コロナのワクチンは何歳から接種可能?

厚生労働省は、子どもに対する新型コロナワクチン接種の対象年齢を12歳以上としています。その際にはファイザー社とモデルナ社のワクチンが用いられます。

これは、現時点での科学的知見に基づいて決められたことであり、今の段階では接種の日に満12歳以上であることが条件ですが、今後、接種の対象年齢はさらに下がっていく可能性もあります。実際に海外では、生後6ヶ月~11歳を対象とした臨床試験も実施されており、いますので、今後の動向に注目したいところです。

子どものワクチン打つ?打たない?

親世代がワクチン接種を待っている段階では、子どもの接種はまだまだ先のことだと思っていましたが、いざその時期がやってくると接種するかしないかで迷いも出てくるもの。実際にネット上では、「感染のリスクを少しでも減らし、重症化を避けたい」というワクチン打つ派、「副反応や後遺症が未知数で怖い」というワクチン慎重派で意見が分かれているようです。

今現在の対象年齢が満12歳以上、つまり小学校6年生以上という年齢も親の決断を迷わせる要因になるのかもしれません。この年齢になれば体力もあるし、マスクや手の消毒などの自己管理もできる、さらに10代は成人と比べて重症化しにくいと聞く。このような条件から様子を見たいという思いが出やすくなるのかもしれません。

しかし昨今の子ども世代での変異種の広がりを見ると、「うちの子が重症化しないために」という目的だけではなく、感染を広げないためのワクチンでもあるという理解も大事だと考えられます。

今後、ワクチン接種年齢がさらに下がれば、また新たな見解が出てくるでしょう。「園でちゃんと手を洗っているか心配」「マスクを嫌がってやらないからリスクを高めているかも」と小さい子にはまだ難しい衛生管理を懸念して接種を打つことにするご家庭もあれば、「小さいからこそ慎重に選びたい」といったん見送るご家庭もあるでしょう。

新型コロナワクチンの接種はあくまで任意のもの。何ごとでもそうですが、義務であれば迷わないけれど、任意だと逆に迷走してしまうことは多いのだと思います。

アメリカでは子どものワクチン接種の有無で行動制限も

やるか、やらないかでも悩み、さらには、子どもの接種状況が進行することでまた新たな悩みが出てくることも考えられます。それは接種の有無がもたらす差別や不公平です。

海外の行き来の際に用いられるワクチンパスポートや海外渡航制限などが緩和されたりというメリットがある接種証明書ですが、それと似た形で、その子が接種を受けているかいないかで行動範囲に影響が出る可能性もあるのではと懸念しています。というのも、現に私が今アメリカでそれを感じているところだからです。

この夏にわが家はドイツからアメリカに引っ越しをしたのですが、7月の段階でアメリカはドラッグストアに行けば、すぐにワクチンを受けられる状況になっていました。当時私たち夫婦は1回目の接種はなんとか済ませていましたが、2回目がまだだったので、すぐにアメリカ版マツキヨのようなところで接種を完了させました。

大人が完了したところで、次は子どものワクチンのことを考え出したのですが、アメリカではもう子どもたちの接種も数ヵ月前から始まっており、受ける子はすでに受け終わっている状況でした(ちなみにアメリカでは子どもはファイザー社のワクチンを接種することになっています)。

日本のように「打ちたいけれど順番が回って来ない」という状況だと、余計に受けたくなるものですが、もはやどこでもできる環境(しかも接種後にそのドラッグストアの買い物券までもらえます)だと、逆にあせりがなくなり、「とりあえず引っ越し作業が落ち着いてから」と少し呑気に考えていました。そうこうするうちに、今後子どもがお世話になる学校から、「ワクチンの接種記録がある生徒は提出をお願いします」と全生徒に対し連絡がありました。接種は強制ではないので、している子、していない子が混在しているのは想定しているが、接種状況の全体像を知りたいということでした。

ただ、学校としては昨今の変異種の拡大を懸念し、強制はしないが、ワクチン推奨の方針で行くことや、今後校内で感染者が出て濃厚接触者になった場合、接種の有無で行動範囲に差が出てくることなども添えられていたので、私としてはやんわりとした「ワクチンを打ちましょう」というお達しのように感じました。

ワクチンを受けていれば、たとえ濃厚接触者になったとしても、症状がなければ制限なく学校に通えることは、勉強の進度が早い中高生になっては切実な問題です。それもあって、わが家もすぐに接種に出向きました。学校のように多くの子どもたちが一緒に過ごす場所では、学校側としても全体を考えての指針を取る必要がありますから、このような流れは今後の日本でも十分起こりうることだと思います。

ワクチン接種の有無が個人の差別につながらないために

また、学校以外の場面で私が経験したこととして、こんなことがありました。こちらでの新たなママ友とLINEのようなメッセージをやりとりしていると、「早く2回目が終わるといいね。そうしたらスリープオーバー(お泊り会)できるね」と。それを受け取った私は、「あ、ここに線があるんだ」と理解しました。子ども同士、毎日のようにおしゃべりし、家の行き来もしているけれど、泊りは接種完了後にという線です。新たな土地ではあらゆることが学びなので、このメッセージでここでのコロナ禍の流儀を知り得たことは収穫でした。土地が変われば、その線も変わると思いますが、やはり接種の有無による行動範囲の制限は少なからずあるように感じています。

今後、日本でも今のアメリカのように、家庭により接種状況がまちまちという状態はどうしても発生します。ワクチンの目的が重症化のリスクを下げることと、感染を拡大させないことである以上、接種済みの方の行動範囲が妨げられずに済むのは致し方ないことだと思いますが、接種をしていないことがその子自身の偏見や差別につながってしまうのは問題です。

今回、私は“していない状況”と“している状況”の両方を経験しましたが、受けていないというのも何らかの考えや理由があっての決断なので、それにより生じる不都合や責任は受け止める必要があると感じました。一方で、受けた側は、親自ら、子どもに偏見を刷り込まないことも非常に大事だと感じています。親の見方は子どもに伝わりやすく、それがそのままその子の姿勢として現れることが多いからです。中には打ちたくても打てない状況のお子さんもいるので配慮が必要です。

たとえ接種が終わっても、手の消毒やうがいを怠らないことに変わりありません。「あの子が○○だ」というような他者批判よりも、すべきは自己管理の継続なのだと思います。コロナ禍が想像以上に長引き、だれもが疲れを感じていますが、こういうときこそ子どもたちに余計な心の負担をかけないようしていきたいものです。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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