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オンライン授業のこと、デジタルデバイスとの付き合い方……海外に学ぶコロナ禍の子育て~ヨーロッパ編~

オンライン授業のこと、デジタルデバイスとの付き合い方……海外に学ぶコロナ禍の子育て~ヨーロッパ編~

2020年の3月に休校になった後、この5月までのほとんどの期間がロックダウン状態だったドイツ。スーパーなどでの日用品の買い物だけは通年許されていましたが、それ以外の多くのサービスは閉鎖されていました。この記事では、そのような状況下での学校の様子や子育て風景を振り返ってみたいと思います。

日経DUAL記事

長引くオンライン授業では、シンクロナスとアンシンクロナスの混在型が主流に

日本の報道でもあったように、ヨーロッパは感染状況がかなりひどかったため、長期のロックダウン、そして学校の閉鎖が続いていました。休校期間は高学年になるほど長引き、中学生以上の子は、この15ヵ月の間に通えたのはわずか5ヵ月ほど。あまりの長さに、子どもたちもオンライン授業を“日常”として捉えるほど浸透したように思います。

長期化したことは残念でしたが、その中で得たことも多かったので、ドイツでの一例という範囲ではありますが、ここでご紹介していきます。

オンライン授業と言うと、イメージ的にはZoomなどでつながる授業が浮かぶと思います。わが子の学校も同様に、第一波の休校当初はずっとZoom上にいる形でした。しかしその後、Zoomの対面授業だけよりも、様々なアプリを使った方が学習のバランスが取れることから、その後は“synchronousの授業”と“asynchronusの授業”という区分けをするようになりました。

この“シンクロナス授業”と“アシンクロナス授業”の違いは、先生や子どもたちが同じ時間にオンラインにいるかどうかということで、一般的にイメージするZoom授業がシンクロナス、先生が生徒に課題を与え子どもたちが自分のペースで完遂するのがアシンクロナスとなります。コロナ禍の新ワードと言ってもいいかもしれません。

わが子の学校では以下のような形でこの2つを連動させていました(もっとも休校期間の長かった中学生の例になります)。

・ 毎 朝、Zoom上のホームルームで1日がスタートし、1時間目開始までに時間が余れば、先生と一緒にゲームをしたりして過ごす(誰かが描いた絵を当てるゲーム・skribbl.ioなどをZoom上で)
・ その後は科目ごとの担当の先生のZoomの部屋へ。日によって、シンクロナスかアシンクロナスかを指示される
・ ドリル、問題集、宿題などは、Googleクラスルーム上で配布され、終了後にそこから提出
・ 外国語授業のスピーキング、各科目のプレゼンテーションなどは、Googleクラスルームで録音したり、動画を作成したりして提出
・ 体育は動きやすい服装に着替え、先生がZoom上で動画を画面共有しながら、床運動メインの授業。たとえば、ヨガ、スクワット、体幹トレーニングなど
・ 美術は、先生が絵の描き方動画を画面共有、その後はアシンクロナスの課題として絵を書き上げて、Googleクラスルームで提出
・ Zoomの授業内でグループ作業が適しているものは、Zoomのブレイクアウトルームで少人数に分けて実施
・ Googleジャムボード上に、自分で描いた絵を貼り付け、先生やクラスのみんなにアドバイスやコメントをもらったり、社会の授業では先生がその日のテーマとなる写真を提示し、その写真から見て取れる現象を生徒が推測して書きこんでいく

中学生ともなると、すでにこれらの動作をするのに十分なスキルが身についているので、とくに滞りなく進んでいたようです。一方、低学年の子どもたちはというと、まだパソコンを渡されても、タイピングもままならなかったりするので、同じように進めるのは難しいもの。ドイツでも6年生までは前倒しで通学可能となりました。オンライン授業の可能性は年齢が大きく関係していると思います。

オンライン化の課題や問われるメディアリテラシー

・国語は「エッセイ」などネットで調べられないテストに

一方、中間テストや期末テストなどの成績に直結するテストは、オンラインで行なう難しさがあったようです。ふだんの教室では先生が厳粛にテストを管理できますが、家で受けるとなると、何でも調べられるネットが目の前にあるからです。そのため、科目によって工夫がなされ、たとえば国語はエッセイスタイルにしたり、理科はネット上で回答が見つからないような問題を先生が編み出したり……。この場合、先生方の評価スキルが求められますし、丸つけも時間がかかることが予測されます。

・ネットスキルの向上とともにネット依存を高める危険性も

あとは、これだけオンラインに頼りきった1年でしたので、メディアリテラシーについて考えさせられることも多くなりました。メディアリテラシーとは、自ら節度と責任あるメディアとの向き合い方ができる能力のことで、とくに子育てをしている親にとって、子どもたちのリテラシーは重要なテーマです。この1年で子どもたちは今まで以上に、さまざまなアプリ、ツールに触れ、知識やスキルは大きく向上したのは間違いありませんが、依存性を高めてしまったり、相応しくないコンテンツに(気づかぬうちに)触れてしまった子もいると思われます。ネットはとても便利なツールですが、ときに害にもなりうるのです。

・あえて学校からオフラインを促す働きかけも

わが子の学校では、以前からEnhanced learning(エンハンスト・ラーニング)という科目(内容的には道徳に近い)でメディアとの付き合い方について取り上げており、「画面の前で長時間過ごさないように」という指導は受けていました。コロナ禍になって、授業として画面の前に座ることが増えたため、その道徳授業では、たまに、「今日はすべての画面を閉じて、外に散歩に行くか、遊んでくることが授業」とあえてオフラインを促す働きかけも行われていました。また、それぞれの科目で調べものをする場合、先生があらかじめ「信用できるサイト」のリンクを送ってくれ、その中で検索することも促されていました。

親はもちろんのこと、子どもたちに関わる大人がオンラインの世界の範囲を決めてあげることが健全なメディアリテラシー育成に求められるということを感じた1年でした。

学校行事はバーチャル化。先生の工夫次第で合唱も可能に!

休校期間が長かったため、当然のように学校の行事は通常の形での開催はすべて中止となりました。そんな中でもオンライン化された行事もたくさんありました。

たとえば、
・ 文化祭
・ 合唱
・ 個人面談
・ 保護者会
・ 受験生のための学校見学

など、どれも「バーチャル○○」という名で取り入れられました。

とくに合唱はとても印象的でした。課題曲はブルーノ・マーズの「カウント・オン・ミー」。生徒1人1人が各自歌声を自宅で録音、それをGoogleクラスルームで提出し、音楽の先生が1つに合わせ合唱に仕上げてくれました。子どもたちが自分のお気に入りの写真も合わせて提出したので、映像は子どもたちの姿のスライドショー、バックにカウント・オン・ミーが流れているという特別な動画となりました。

この歌の「友だちとの絆」というテーマも相まって、コロナ禍で頑張っている子どもたち、支えてくださっている先生方を強く感じ、これまでのどの合唱よりも胸に響く歌声でした。「一緒にいなければ合唱はできない」という頭でいた私たちですが、工夫次第で新たな感動を生むことが可能なのだと教えてもらいました。

また、個人面談や保護者会なども、バーチャル化で幅が広がったように思います。これまで仕事などを理由に出席できなかった人でも、参加しやすくなったのは間違いないでしょう。わが家はこの夏にアメリカに引っ越しをするのですが、アメリカの新しい学校との面接もすべてZoom、おまけに不動産の内覧もバーチャル……、とコロナによって距離による壁が取り払われたのを強く感じました。

ここまで学校のことを中心に取り上げてきましたが、学校外や休日についても触れておこうと思います。

生活のミニマム化により、散歩が一番の息抜きに

ドイツでは、スーパーと薬局だけが開いているだけの強いロックダウンが長期に渡ったため、外に出るのは散歩だけという人も多かったように思います。ですので、広い森や公園で過ごしたという親子は増えたのではないでしょうか。そういう点では、自然と触れる機会が増えたのかなというのが印象です。

今の時代、ふつうだったら、土日になると子連れで、「遊園地行こうか」とか、「映画を見に行こうか」など、お金を使ってのエンタメをすぐ考えるものですが、すべてが閉まっている中で散歩が一番の息抜きのような1年で、ある意味、生活がミニマムな感じになった気がしています。

デジタルデバイスとの付き合い方に悩む家庭は世界共通

一方で、コロナ禍の1年強の間に、ゲームやテレビの時間が増えたという話はドイツでも聞いています。先述のメディアリテラシーにもつながる話ですが、節度をもって接することが大切ということを経験した1年でもあった気がします。コロナ禍をうまくやりくりできている家庭と、逆にもめごとが増えた家庭では、この「画面との付き合い方」が大きく関係しているようにも感じています。

ゲームなどの使用について、ルールを設けているご家庭がほとんどだと思いますが、それが実際に守られていないことも多く、その管理を子どもに任せきりにしてしまう場合にエスカレートが起こりがちだったようです。

ポイントは、親がリードしてオフラインの時間を作ること!

逆に、親がリードしながら時間を管理しているご家庭は散歩に行ったり、ボードゲームをしたりとオフラインの時間も取り入れた過ごし方をしていた傾向があるように感じました。子どもに任せることは、一見、自立を促す接し方のように思えますが、実際にはまだまだ「楽しいことが好き」な時期ですので、親がリードすることはリズム作りの大事なポイントになるのでしょう。

意識的にオフラインの時間を作りたい方は、自分自身もオフラインに徹しましょう。子育てでは、子どもに注意していることを親が守れていないと、それが脱線を起こしやすくするので、この場合も、子どもが画面を閉じるだけでなく、親も同様に心がけることが子どもへの説得力につながります。

とくに夏休み中は、気がついたら1日中冷房のきいた室内でゲーム三昧だったということになりやすいので、あらかじめ「毎日〇時からは公園」のようにリズムにできると理想的だと思います。

以上、コロナ禍のドイツの子育て事情についてお伝えしてきました。今までできないと思っていたことを試したり、生活スタイルを変えたりすることを強いられた1年でしたが、やってみると可能なことも多く、新鮮な学びに気づかされた1年でした。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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