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広い園舎やカリキュラムだけで選ぶとキケン…保育園コンサルタントに聞く!失敗しない保育園の選び方

広い園舎やカリキュラムだけで選ぶとキケン…保育園コンサルタントに聞く!失敗しない保育園の選び方

そろそろ来年度の保育園の募集が始まる時期。立地や預かり時間は気にするけれど、それ以外どんなところに注意して保育園を選べばいいか分からないという親御さんも多いはず。そこで、国内の経営コンサルティング大手である船井総合研究所の保育・教育支援部 部長の大嶽広展さんに、保育園を取り巻く現状と、「失敗しない保育園の選び方」についてお話を伺いました。


大嶽広展さん(株式会社船井総合研究所 保育・教育支援部 部長)
2006年に船井総合研究所で初めて保育業界のコンサルティングをスタート。2017年にグループマネージャーとなり、現在は保育園・幼稚園から大学、短大、専門学校まで保育教育分野全体の統括を担う。2児の父。
https://www.funaisoken.co.jp/industry_theme/nursery_school

 

日経DUAL記事

保育園のコンサルティングはまだまだ拡大の余地あり!

__船井総合研究所では保育・教育支援のどのようなコンサルティングをされているのでしょうか?

さまざまな業種の経営コンサルティングを行う船井総合研究所では、全国の保育園・幼稚園・こども園の経営支援のお手伝いに関しても20年ほど行なっております。また、園の経営者の方向けの勉強会なども開催しています。私自身、実際に園に出向いて園長先生のお話を聞いて支援していくうちに、園長先生と数分話せば、「この園はうまくいっているかどうか」が分かるようになってきました。とはいえ、全国の保育園でコンサルタントを活用している法人は、300法人ほど(全国約10,000法人のうち)になりますから、まだまだコンサルティングを拡大していく余地は十分にあると感じています。

__保育園では、どのような悩みが増えていますか?

やはり、人材確保と人材育成が大きな悩みですね。園の経営者と現場のトップである園長先生との考え方の違いから現場がうまくいかなくなってしまう園もかなり多いです。

具体的には、
・園長の負担が大きすぎること
・離職率の高さ

でしょうか。

園長先生は保育のプロであってマネジメントのプロではないのですが、経営者はそこを求めてしまいがちです。また、先生方のお給料などの処遇はこの5年では着実に上がっているのですが、離職率は変わらないという悩みもあります。

保育園は大きく分けて公立の園と社会福祉法人に分かれ、株式会社はわずか数%。公立園ではまだまだ古い体制が多く残っている場合もあり、特に共働きである保育園の保護者の方には、そこに違和感を持たれ、“閉ざされた保育”の印象を受ける場合があるのだと思います。

保育園の3つの課題をどう解決していくかがポイント

__保育園のさまざまな課題をどのように解決されているのでしょうか?

私は大きくわけて保育園の課題は3つあると感じています。

その1 閉ざされた特殊な業界である

先述した通り、株式会社の保育園は全体の数%程度と公立運営が多い保育園では、外部のコンサルタントを導入している数も全体の10%以下にすぎません。他の業界では経営はプロに任せるという流れが多いなか、なかなか外部の視点が入りにくい業界ともいえます。。ですから、園の経営者が経営にばかり偏りすぎず、現場の声を吸い上げながらいかにオープンに改善していくかがポイントになってくると思います。

その2 女性比率が高い職種である

介護や教職などと比べても、保育士の男性比率は圧倒的に少ないため、女性の結婚・出産といったライフステージの変化で離職する人が多く、人材確保が難しい傾向にあります。やはり男女比率をバランス良く採用し、育成していくことも離職率を下げる解決策になります。

その3 保育園は人件費が70%!究極の人に依存する業界である

これはあまり知られていない数字なのですが、保育業界は人件費が70%という“究極の人に依存する業界”なんです。他業種の人件費の割合は、飲食業で30%、介護業でも50~60%です。最近ではICTも導入されつつありますが、人だけに頼らずシステム化できる部分はどんどん対応していくことで、人件費の割合を下げていくべきだと感じます。

良い園とダメな園。プロは保育園のどんなところを見ているのか

__大嶽さんが思う「良い園とダメな園の見極め方」があれば教えてください

やはり、園長の人柄は園の雰囲気を大きく左右するので、前向きにお話される園長先生は働く先生方も明るく前向きな方が多いと思います。見学や説明会に園長が積極的に対応している園は、余裕もあって安心できる一つの指標になると思います。

__保護者が見学する際に見ておくべきポイントなどあれば教えてください

見学する際にぜひ見てほしいのは、働く先生たちの様子。とくに先生たちが見学に来た保護者や私たちのような外部の人間にも目を見て挨拶をしてくれるか、会釈程度か、無視して通り過ぎるかで先生たちの余裕の度合いがわかります。廊下を先生たちが走り回って対応している園はちょっと心配ですね。

__環境についてはどんなところに注意して選べばいいですか?

HPが素敵であるとか、カリキュラムが素晴らしいとか、園舎や園庭が広いとか、そういった環境だけに惑わされないでほしいですね。できる限り実際に訪れて園の様子や雰囲気を見てきてください。その上で検討すべきは、園のタイプです。

1 学び重視の園(英語や体操、読み書き計算など)
2 遊び重視の園(自然体験や自由遊びの時間が多い)
3 少人数で個性を尊重する園
4 大人数で集団生活を身につける園

1or2、さらに3or4とわが子に合う園を選んでいくといいと思います。どれが良い悪いではなくて、これらの方針をきちんと実行できているかもチェックできるといいですね。

他には、先ほどもお伝えした通り、このご時世でもコドモンなどのICTサービスを全く導入していない園は、先生方への負担が大きいため心配です。また、転職サイトで長期間人材を募集している園(法人)も人材不足が否めないのでおすすめしませんね。

保育園をサービス業と捉えないでほしい!

__子どもを預ける際に、保護者の私たちが知っておくべきことはありますか?

これはひとつ、声を大にしてお伝えしたいのですが、「保育園をサービス業と捉えないでほしい」ということです。現場の保育士の中には保護者の要望やクレームで疲弊しているケースがあります。命にかかわる重大なミスなど指摘すべき点がある場合はもちろん事態や環境を問うのは当然のことですが、通常保育に関しては、「子どもたちを先生と一緒に育てていこう」という共助の精神で、保護者の方たちが先生をバックアップしていけるような体制が理想です。そうすることで、先生方も伸び伸びといい保育ができるのではないでしょうか。

__今後の未就学児の保育や教育について望むことはありますか?

これまでの待機児童数や保育所の数ばかりに目を向けるのではなく、今後は保育の質の改善に国をあげて対策していくべきだと思っています。

戦後からの古い体制が一部に残る保育の現場は、今限界にきています。ゆとりをもって質の高い保育が提供できるよう、体制から見直す時期だと感じています。

子どもにとって保育園は1日10時間も過ごす重要な場所です。保育の質をあげることで、子どもの教育レベルや日本の未来にもつながるはずだと思っています。

【Information】
11月26~27日に新宿NSビルにて、日本最大級の「保育博2020」を開催。そこで、大嶽さんもゲストスピーカーとして登壇されます。保育関係者はもちろん、保護者の方も来場可能とのことなので、保育の今、そしてこれからに興味がある方はぜひご来場ください!
https://hoikuhaku.jp.messefrankfurt.com/tokyo/ja.html

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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