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子育て

未来の保育園はこうなる!? 保育ロボットVEVO

未来の保育園はこうなる!? 保育ロボットVEVO

「学校教育でのIT化はどんどん普及しているのに、保育ではまだまだ進んでいないのが現状なんです」と語るのは、VEVOを開発した㈱social solutions取締役の石塚康志さん。先日、大津で痛ましい園児の交通事故がありましたが、今回は、改めて保育園を取り巻く現状の課題や未来の保育についても考えてみたいと思います。

日経DUAL記事

保育園園長を経験した社長自らがVEVOシステムを考案

㈱social solutionsは、2014年にChild Care System(CCS)という保育業務支援サービスをNTT東日本とともに社外向けCCSとして開発し、自社で運営する約60の保育施設に導入している。そのシステム開発のきっかけは、社長が園長を経験したことが大きいと石塚さんは言う。

「社長が保育園の園長を経験してみて分かったのは、施設長など役職が付けばつくほど、園は書類仕事が想像以上に多い(認可園は特に多い)ということでした。スタッフのシフト管理、役所に提出する園管理書類、園児たちの登園降園管理、体調管理に発達記録、保育日誌…。本来ならばもっと子どもと関わりたいし、いい保育内容を考えたいと思っていても、先生たちはこうした事務仕事にかなりの時間を取られてしまう。そこで、これらをわかりやすく楽に管理できるシステムを開発したということなんです。他社でもこうしたシステムを開発している会社はありますが、社長自らが園長になり、現場の実情を把握しながらシステム開発している点が、私たちの強みだと思っています。その一部を見える化したのが今回開発した保育ロボVEVOというわけです」(石塚さん)

保育ロボVEVOがあると、どんないいことがありますか?

「まず、声を大にして言っておきたいのが、今も昔もこれからも保育するのは人間であるということ。保育ロボといっても、決してVEVOが抱っこしたり子どもと遊ぶのではなく、VEVOは先述した事務処理やデータ管理といったシステムが得意な部分をやってもらうということです。その分、保育士には人ができることにもっと力を注いでもらいたいというのが私たちの考えです」(石塚さん)。

VEVOができることは大きく分けて4つ。1つ目は登園・降園時の言葉がけ、2つ目は登園・降園時の時間管理、3つ目はVEVOとの会話、4つ目が午睡チェック。

「子どもたちはそれぞれがVEVOをモチーフとしたキーホルダーを持っていて、登園時にVEVOにかざすと“〇〇ちゃんおはよう、今日もいい天気だね”と話しかけてくれます。これが楽しくて保育園に行くモチベーションになっているという子もいると聞いています。
また、降園時にかざすと、“〇〇君、さようなら、今日の給食はチキンカレーライスと玉子サラダとオレンジで、お昼寝は2時間したね”というデータもVEVOが個別に教えてくれます。ママにとってお昼のメニューは夕飯の献立の参考にもなるし、お昼寝時間は体調管理のバロメーターになりますから、降園時は特にバタバタする保育士たちを待って聞かなくてもVEVOが教えてくれるのは助かる(保育士も、もっと重要なことを親に知らせられる)と導入園の保護者の方たちからの報告もあります。午睡はVEVO専用のセンサーを子どもにつけておくことで、体の向きや体動を数秒おきに測れ、うつぶせ寝などの場合はアラートで知らせるシステム。もちろん保育士も今まで通り、行政が推奨している0歳児は5分に一回、1歳~2歳児は10分に1回チェックを行いますが、Wチェックで管理することで事故防止や安心度があがるというわけです」(石塚さん)。

こちらがVEVOキーホルダー。

こちらが午睡センサー。

一番苦労したのはVEVOのデザイン

もっとも苦労したのはVEVOのデザインだったという。

「人間型のロボットではどうしても違和感がでてしまいますから、あえてくまという動物モチーフにして、色や声は近未来型のロボット風にするなど工夫しました。もちろん、安全面は第一ですので、足は固定し上半身だけ動くようにしています。とはいえ、子どもたちは手を垂直にあげたくなったりするようで(笑)、予期せぬ故障もあります。2019年秋以降の商品化に向けて、どういった形状が一番いいのかは今も微調整している最中です」(石塚さん)。

これからの保育はどうあるべき?

2018年4月に改正された保育所保育指針。これまでは文科省(幼稚園)、厚労省(保育園)、内閣府(認定こども園等)と管轄している省庁が別だったものを一緒に考えようとしたこと、養護の重要性を強調する一方で、幼児教育の重要性についても叫ばれるようになり、保育士は今まで以上に一層の専門性や質の向上が求められるようになってきました。

こうした背景を考慮したこれからの保育の在り方をお聞きすると、

「AI技術やさまざまなテクノロジーの進化と社会が急速に変化しているのに対し、保育の仕方は昔とほぼ変わっていないんです。むしろ保育にITは馴染まないと言う人もいる…。もちろん、新しいものをどんどん取り入れて頑張っている意識の高い園はありますが、そうでない園との格差もあると聞きます。私たちの園では定期的に各園の施設長を集めた勉強会やスキルアップのための先生たちの研修を行っていますが、これらを日々の保育で忙しい園のみに任せるのはとても難しいでしょう。ですから、VEVOのようなITシステムを使いながら、外部からサポートする機会が日本に2万7000あるといわれる保育園にもっともっと普及していくことを願っています」(石塚さん)。

VEVOの課題や今後の目標を教えてください

最後に、VEVOの課題や今後の目標をお聞きしました。

「実はVEVO=保育ロボットのことをいうのではなく、保育ロボットを含めた保育業務支援システムのことを指しています。現在、東京都の保育園では20代の保育士が40%以上を占めるというデータもありますが、彼らにベテラン保育士のような長年の経験や勘を求めるのは酷です。経験の少ない若い保育士方にどんどん活躍してもらうためにも、VEVOのような管理システムを活用することで、新しい形の保育ができる余裕が生まれると思っています。また、保育園よりもさらに細かく丁寧なデータ管理や個別ケアが求められる障害児保育や介護施設への活用も視野に入れています。私たちは、親も子どもたちも保育士もハッピーになるさらなるサービスを提供していきたいと考えています」(石塚さん)。

現在VEVOは仮予約を受け付け中。興味のある施設の方はこちらまで!

https://socialsolutions.jp/contact/

いかがでしたか。お話を伺って、保育園の先生たちの働く環境が改善され事務処理業務が軽減し、子ども一人一人の成長に寄り添ったワクワクするような保育サービスが増えるためには、保育園×IT化は必要不可欠なのではないかと感じました。皆さんはどうお考えですか?

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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