「放任主義」と「放置」はどう違う!? ほったらかし育児にしないポイント

「放任主義」と「放置」はどう違う!? ほったらかし育児にしないポイント

子どもを伸ばす放任主義、潰す放置主義。ネット上でこのようなキーワードが飛び交っているようです。「放任と放置ってどちらもダメじゃないの?」「2つはどう違うの?」という方も多いはず。ここでは、放任型、放置型、過管理型、それぞれの特徴を解説し、ほったらかしとは違う放任とは何なのかを整理をしていきたいと思います。

日経DUAL記事

「放任主義」はいいイメージ?悪いイメージ?

「うちは放任なの」
「あのお家は放任主義だから」

これを聞いてどんなイメージを持ちますか? 子どものことを尊重した接し方だと感じる人もいれば、子どもをかまってあげていない印象を持つ方もいると思います。

私はどちらかと言えば、後者のイメージがありました。ですが、今は放任主義は子どもを伸ばす距離感の育児ということで、良いお手本として語られることの方が多いようです。そして、その対極として、放置主義やほったらかし育児という言葉が用いられているようですね。

このように、どちらにでも取れる育児用語は、実は要注意。
たとえば、放任主義は子どもをほったらかしておくことだと思っている人が、「子どもを伸ばす放任主義」「放任で有名大学合格」というネット記事のタイトルだけを見て、「そっか、放任主義は子どもにいいのね♪」とイメージのままに実践してしまったら大変です。そこで今回は、SNSなどで飛び交っている今どきの定義に則って、放任主義、放置主義について整理をしていきたいと思います。

子どもへの干渉の度合「放任型」「放置型」「過管理型」あなたはどのタイプ?

今回のテーマである「放任」は、子育てで言うなら、どこまで子どもに干渉するかという管理の側面になります。ここでは、その切り口で、放任型、放置型、過管理型 についてそれぞれの特徴を見ていきましょう。

■放任型

特徴:子どもの意志を尊重するところと親が毅然とした対応を取るところの線引きがきちんとなされている。社会で生きていく上でのモラルなどの基本的な家庭教育をした上での見守りができている状態。

子どもへの影響:子ども自身で選択したり、決断する経験が積まれることで、自分の人生への責任感や物事への自主性が身につきやすい。

■放置型

特徴:放任の意味を掛け違えてしまい、子どもに必要な家庭教育の部分まで放棄してしまっている状態。きっかけとしては、子どもへの関心が低いことや、育児の仕方がわからないなどの知識不足のことも。

子どもへの影響:親から学ぶべき社会のルールなどが欠如しているため、集団行動が苦手だったり、友達とのけんかが多いなどのトラブルをかかえやすい。親との関わりが少ないことで愛情の欠乏感を感じることも。

■過管理型

親の思うように子どもを動かしたいがために、子どもの行動を管理し過ぎてしまっている状態。自分の子育ての理想があり、それに当てはめるべく、日々をコントロールしてしまう。俗に言う“ヘリコプターペアレント”はこのタイプ。

子どもへの影響:小さい頃から決断の経験が少ないため、自分で決められない、自主性に乏しい傾向の子も。管理する親、管理される子どもという共依存の関係になると、大人になって自立できないなど問題になりやすい。

なお、ここに当てはまらないながらも問題になることが多いのが、親が放棄しているつもりはないものの、結果的に放棄型になっている場合です。よく見られるのは、「子どもをのびのび育てたい」という信念がエスカレートしたケース。子どもに何かを指示したりするのは、その子の自由を奪うことと捉え、注意すべきことでも黙認してしまいます。何がダメかを教えておらず、問題が学校などの現場に丸投げされてしまっていることもあります。子どもに関心が高い点が、上記の放棄型とは大きく異なります。

以上、放任型、放棄型、過管理型、そしてタイプの違う放棄型、この4つをお伝えしましたが、この中で親との距離、親の干渉度合いで適切なのは放任型です。

子どもを伸ばす「放任主義」で押さえておきたい6つのポイント

いざ実践しようとすると、難しいのが「ちょうどいい放任主義」です。愛を持った放任でなければ、きっとどこかで不具合が出てきてしまうでしょう。ここでは、「気づいたらほったらかし育児になっていた!」ということにならないために、おさえておきたいポイントをまとめてみました。

ポイント1:自己防衛

適切な放任主義で子どもの自主性を育みたい。でもそこには土台が必要です。小さいうちは何が危険で何が安全かも自分ではわからない状態なので、まずは自分を守るために、自らを危険にさらさないことを教えていきましょう。とくに、車、包丁、コンロ、高い所、たばこなどは、伝わるまでは目を離さないつもりで。ほったらかしは命取りになります。

ポイント2:社会的ルール

これは、「相手の権利を奪うようなことをしてはいけないよ」という教えです。小さい子で言うなら、公園で横入りしない、おもちゃを勝手に取らない、公共のものを汚さない、など。他者に迷惑をかけるような行為を許容してしまうのは、ほったらかしになってしまうので要注意です。

ポイント3:社会的マナー

上記のルールにプラスαし、より気持ちのいいコミュニケーションや時間の過ごし方ができることを指します。たとえば、「どうぞ」「ありがとう」といった貸し借りのやりとり、日常のあいさつ、公共の場での年齢相応のふるまいなどが挙げられます。

ポイント4:生活リズム

いくら子どもに決めさせた方がいいとは言え、生活リズムを崩すような自由度は心身の発達の上で望ましくありません。起きる時間、寝る時間、食事やお風呂の時間など、生活リズムを保つ上でカギになる時間は親の導きで幼少時に身につけるようにしましょう。

ポイント5:生活習慣

これもポイント4と同様で、子ども任せにしてしまうのはNGです。たとえば、歯みがき。子どもは嫌いな子が多いものですが、だからと言って、その思いをリスペクトしたら、虫歯だらけになってしまいます。生活習慣には子どもが嫌いだったり面倒だったりすることが多いので、てこずるご家庭も多いですが、ここはきちんと見ておいてあげるべきポイントになります。

ポイント6:学習習慣

小学校に上がると本格的に授業が始まります。これまでの私の経験を踏まえると、学習習慣は小さい頃からリズムを作っておいた方があとあと助かることが多いと言えます。これは、親が望みの学校に行かせるために、学習内容を完全管理した方がいいと言っているのではなく、あくまでリズムのことです。低学年のうちから、放課後に15分でも食卓に座って勉強をすることが習慣になっていれば、その後もそれを当たり前と思えるのですが、いきなり高学年になって習慣づけしようとすると、「それよりゲームがいい」のようになってしまいがちです。15分を1時間にすることはできても、0分を30分にするのは難しいので、親が一緒に付き合ってベースとなる習慣を築いておけるといいと思います。

放任主義にするために幼少期にしておきたいこと

放任主義と言っても、ちょうどいいバランスの放任は、幼少期のうちに意外とたくさん手をかけなくてはいけないことがお分かりいただけたでしょうか。では、どんなところを”放任”すればいいのかと言えば、小さいうちは遊びや趣味の場面が中心になるでしょう。

小さい子は、折り紙やブロック、その他のおもちゃやゲームでも、その子流の遊び方をすることがよくあります。折り紙は必ずしも角と角をくっつけなくてはいけないわけではないですし、ゲームもルール通りでなくたって家族の中だったら問題はありません。それなのに、そういう場面で、親がつい、「そうじゃなくて」と口を挟んだり、「こうやるんだよ」と子どもから折り紙を取って見事なツルを折ってしまったりしてしまうことがあります。

あとは、「これを着たい!」と選んだ洋服が、上下ちぐはぐだったり、センスがイマイチだったりすると、そこでも「そうじゃなくて」が出てしまいそうになります。

こういう場面で、子どもの着想や創造性を大事にし、見守ってあげることが、幼少期にできる放任と言えます。この時期は、上に書いたような生活習慣のベースを作る大事な時期のため、どうしても子ども任せにしておけないことが多いので、このような遊びやその子の趣味趣向が出る場面では、あえてあれこれ言わないのがおすすめです。

家庭教育ができているからこそ放任ができる

そして大きくなってきて、上記のポイントがしっかり身についてきたら、子どもに任せて大丈夫」と感じられる場面が増えてきます。「うちは放任で有名大学合格」というご家庭も、上記に挙げたルールや習慣にしっかり取り組んだからこそ、子どもの自主性に任せて伸ばせているのです。そこを勘違いして、家庭教育をおろそかにした“ほったらかし育児”をしてしまっては、進学どころか、もっと手前でつまずいてしまいます。

上記の6つのポイントは、一朝一夕でできるようになることではありません。毎日毎日取り組んでも、何年もかかるでしょう。放任とは言っても、しっかりコツコツと子どもを大枠で支え続けているので、ほったらかしとは対極と言えます。

俗に言う「叱らない子育て」でも同じことが言えますが、育児で使う用語を、その言葉が放つイメージだけで実践すると失敗してしまうことはよくあります。あとで後悔しないためにも、放任主義にするならば、しっかりと学んでから行うことをおすすめします。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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