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アメリカの小学校が重視する「セルフコントロール力」。そのプログラムやルールは?

アメリカの小学校が重視する「セルフコントロール力」。そのプログラムやルールは?

才能、努力、好奇心、継続力など、子どものために伸ばしてあげたい要素はたくさんありますが、アメリカではとりわけ「セルフコントロール力」が人生を成功に導くためのカギとされています。家庭ではもちろん、学校でも低学年の頃からセルフコントロール力を養うための取り組みが積極的に行われているのです。どのような方法で子どもたちのセルフコントロール力をトレーニングしているのか、小学校で取り入れられているプログラムを紹介します。

日経DUAL記事

成績にも大きな影響を及ぼすセルフコントロール力

セルフコントロール力とは、望ましくない感情や衝動が沸き起こった際に、自ら感情や行動を抑制しコントロール下に置ける能力のことです。セルフコントロールできる子どもは、遊びたい衝動を抑えて宿題に取りかかる、テレビを見る時間を制限できる、大学の授業の出席率が高い、といった傾向が見られ、学業成績にも大きく影響を及ぼします。感情に振り回されることが少ないので気持ちも安定し、良好な人間関係をつくりやすくなります。

幼い時期はかんしゃくを起こしたり、待つのが苦手だったりしても、トレーニングを重ねていくことにより、セルフコントロール力を身に着けることができるのです。

アメリカの学校では、早い時期から生徒がセルフコントロール力を得ることを重視しています。身につけるための明確なルールがあり、守れない場合にはそのレベルに応じた罰則が設けられています。例外なしの一貫したルールがあることで、生徒たちは低学年のうちからセルフコントロール力が鍛えられ、成功する人生へと近づけるとされています。

「セルフコントロール・プログラム」の4ステップ

実際に、わが子が通うアメリカの小学校で実施されている「セルフコントロール・プログラム」をご紹介しましょう。ただ、このルールはあくまで筆者の子どもの小学校で取り入れられているプログラムであり、学校によって導入されているルールは異なります。

第1段階:口頭での注意

好ましくない行動や言動に対し、まずは口頭で注意します。授業中におしゃべりする、廊下を走る、ほかの子にいじわるをする、危険な遊びをする、先生の指示に従わないなど、内容は多岐にわたります。なかでも、故意に他人を傷つけるなど悪質とされる行為では、初回からいきなり第3、第4の段階に進むケースもあります。

第2段階(イエローカード):親への連絡

第1段階で注意されたにもかかわらず、再度同じ行為が見られると「イエローカード」です。口頭注意に加えて親にメールおよび書面で連絡が届き、どういった内容でイエローカードになったのかの詳細が伝えられます。親は子どもとこの件について話し合い、書面にサインをして学校に提出しなければなりません。

第3段階(オレンジカード):クラブ活動への参加不可

アメリカの小学生にとって、クラブ活動はもっとも楽しみにしている授業のひとつです。スポーツ、料理、ゲーム、陶芸、音楽バンドなど種類も豊富なのですが、3回目の注意となる第3段階の「オレンジカード」に進んでしまうとクラブ活動に参加できません。第2段階同様、親へもメールおよび書面で連絡がいきます。筆者の子どもの小学校ではクラブ活動日前日になると、全生徒の何パーセントがオレンジカードで参加できなかったかということが、全保護者に報告されます。なお、ほかの生徒がクラブ活動に参加している時間、当人は自主学習となります。

第4段階(レッドカード):親呼び出し&校長との面会

第4段階の「レッドカード」になると、親が学校へ呼び出され校長先生との面会となります。どのような問題が起こっているのか改めて校長から説明があり、なぜコントロールできないのか、どうすればよいのか話し合いが行われます。第4段階になった後も問題行動が収まらない場合、義務教育であっても停学、留年、退学になる可能性があります。

子どもを将来の成功へと導くことが目標

日本の小学校と比べると、ずいぶんと厳しいルールだと感じた方も多いのではないでしょうか。しかし、アメリカのセルフコントロール・プログラムで大切なのは「罰する」ことではありません。

あらかじめルールを設定し、学校がその通りに実行することで、「今の段階で自分の態度や行動を改めておかないと、大変なことになるぞ」と子ども本人がまず認識すること。そして状況に合わせて、自らの行動をコントロールできるようにしていくこと。大人でも難しいセルフコントロール力に幼いころから取り組むことにより、子どもを将来の成功へ導こうというのが、このプログラムの目標なのです。

<参考URL>
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0013164495055002002

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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