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子育て

「ペットを飼いたい」注意点と命との向き合い方

「ペットを飼いたい」注意点と命との向き合い方

「ペットを飼いたい!」5~6歳くらいになると一度は通る道なのではないでしょうか。とはいえ、愛犬は可愛いだけではなく、毎日のお世話で生活が一変しますし、人間よりも先に老いていくので、いつかは死と向き合わねばなりません。そこで今回は、保護犬だったあーちゃんを家族に迎え入れ、子どもたちと成長しながら、愛犬を看取り、命と向き合っていったライター西村さんに、ペットを飼う際の注意点と命の向き合い方を記事にしていただきました。

日経DUAL記事

保護犬「あーちゃん」との出会い

私たち夫婦は結婚当初より「犬を家族に迎え入れたい」と考え、インターネットで情報収集をしました。ペットショップやブリーダー、里親と選択肢は多々ありますが、我々は「里親」になることを決めました。まず初めに、ペットOKのマンションへ入居し、保護犬活動をされている方にコンタクトを取りました。そこで最初に紹介されたのが後にわが家のアイドル犬となるアメリカンコッカースパニエルの女の子、名前はアリシア、通称あーちゃんでした。人懐っこくて愛嬌のあるかわいい子だったのを覚えています。トライアルの際、ボランティアさんから「この子はお見合いに幾度となく失敗しているので、断ってもらっても構いません」と言われました。なぜかな?と思いながらも2週間のお試し生活がスタート。その間ソファにおしっこをしたり、いたずらされたり…原因はコレか!と思い悩みましたが、彼女はすでに私たちの大切な子になっており、正式に譲渡の申し入れをしました。そして2012年1月11日、晴れてウチの子になったのです。

犬が居ながらの子育てで「家族の絆」が深まった

私たちが、あーちゃんを引き取って程なくして第一子、第二子の妊娠~出産をしました。

産後は慣れない育児で私がてんやわんやで、あーちゃんには子育てで沢山助けてもらった事を思い出します。例えば、赤ちゃんが泣いていると真っ先に私を呼びに来てくれたし、随分静かだなぁと思えば、赤ちゃんにピッタリくっついて添い寝してくれていました。ハイハイ期には追いかけられたり追いかけたり、この他にもあげればキリがないです。そして共に成長してきた子供たちは動物が大好きになり、特に8歳の兄は犬が好きすぎて家族の中で一番犬について詳しくなりました。個人的には、もし犬を飼う経験がなかったら、私は子育てでもっと苦悩していただろうし、大きな失敗もしていただろうと思います。わが家の場合、良いことの方が多いのですが、やはり大変な事もあります。犬は朝晩2回のお散歩が必要です。ご飯や、排泄物のお世話もあり、スケジュール通りにいかない事もあります。子育て中、ましてや働くママが全てをこなすのはとても大変で、やはりパパや子供の協力が必要です。ちなみにわが家はパパが散歩と朝ごはん担当、子どもが夜ごはん担当でした。子どもたちが愛犬のお世話をする事で自然と絆が産まれ、言葉がなくてもコミュニケーションをとっていたように思います。

犬がいることで、毎日が規則正しい生活に

6時の起床と共にあーちゃんも起きるので、早朝に散歩へ。(パパ担当)

帰宅後、家族みんなで朝ごはんを食べます。子どもたちを送った後は、あーちゃんタイム。雨の日はおもちゃで遊び、晴れの日は庭で遊びます。匂いをクンクンしたり、排泄したり忙しそう。ランチタイムは足元にピッタリ張り付いて食べ物が落ちてこないか待っています。私が何かしていると、基本的にはお気に入りのおもちゃで遊んで寝ています。合間に私はあーちゃんのブラッシングをしたり、マットを洗ったり、トイレシーツを変えます。子どもが帰宅したら、みんなでおやつタイム、夕方散歩へ行き、夜ご飯を食べて、あーちゃんは一足お先にリラックスモード、そしていつの間にか寝ています。

愛犬が歳を取ることで生じる悩み

推定3~4歳の時にわが家へ来たあーちゃんも10歳を超えシニア期になりました。それまで大病なくきましたが、この辺りから甲状腺の病気が発覚し、お薬を服用する生活になりました。そして歳を重ねるごとに尿漏れ、視力・筋力低下が始まりました。やはり犬も人間同様、日々のケアと定期的な検診が重要となります。あーちゃんは甲状腺の持病で、毎月通院して身体チェックをしておりましたが、シニア期は特に愛犬の些細な変化に気づいてあげることが飼い主の使命だと思います。また、昼夜問わず介護が必要になるケースもあり、仕事や育児とのバランスが難しくなることもあるかと思います。ママ一人で抱え込まず、動物病院に相談したり友人に相談したり、家族一丸となってペットのケアが出来たら、心に残るもの、それは何物にも変えられないペットとの大切な思い出になると思います。

動物病院の医療費や保険のこと

愛犬を迎え入れたら、まずはかかりつけ医を見つける事になると思います。獣医さんとの相性もあるので複数通院してみるといいかもしれません。実際あーちゃんも、飼い始めの時に軽度の皮膚疾患があり、たくさん通院して最終的に何でも相談できる温かい獣医さんにお世話になりました。しかし、動物の医療費は場合によっては高額です。治療1回1万円以上かかることも多く、入院手術となれば10万単位でお金がかかり負担も大きくなります。そこで最近はどの病院でもペット保険があり、年齢制限はありますが、わりと簡単に加入出来るようです。

わが家は保護犬という事もあり、積極的に保険を勧められることなくターミナル期(末期)を迎えましたが、最後は本当に病院のお世話になったので、保険に加入していたら……と考えたこともありました。ですが、わが家の場合はあーちゃんがこれまで大きな病気もなく来ていたこともあり、生涯で考えると加入してもしなくてもトータルの出費はそんなに変わらないものでした。

わが家の看取り方~子どもたちが愛犬の死とどう向き合うかを考える~

2021年5月、あーちゃん推定13歳。血管肉腫という癌で虹の橋を渡りました。

闘病生活2か月弱でした。余命宣告後、私たちは残された一日一日を奇跡の日にすべく、家族一丸となって病気と闘いました。子どもたちがあーちゃんのフォローをしている様子を見ると勇気づけられましたし、何よりもあーちゃんが今を一生懸命生きているので自然と皆が笑顔になり、結束力が増したように思います。しかし、ある日を境に元気がなくなり、私たちは、いつか来ると分かっていたその日が近いと感じ始めます。わが家はクリスチャンではありませんが、息子が学校(カトリックのインター)で祈りを唱えた際に頂いてきたロザリオに最後の願いと想いを込めて、皆で毎日お祈りました。元気がないあーちゃんに寄り添い、あーちゃんもそれに応えてくれていましたが、1週間ほど過ぎた明け方、体が辛い中、最後の力を振り絞り「クーン」と鳴いて、最愛のあーちゃんは逝ってしまいました。寝ていた息子は異変に気付き起きてきて、泣きながらあーちゃんをたくさん撫でていたのを鮮明に覚えています。息子は8歳で、愛犬の死を理解していたようで感情が溢れていたのですが、娘は5歳なので、「寝ちゃったの?」と状況を理解出来ておらず、火葬場へ連れて行くことを悩みましたが、私たち夫婦は、皆で最期を見送ろうと決めました。そして娘と同じ目線で「お空へ行ったらあーちゃんがどのように過ごしているかな?」「どんな場所かな?」などたくさんお話をしました。

翌日、あーちゃんの棺に子どもたちが絵を描いて、折り紙を貼って、とても可愛くデコレーションしてくれました。そこに、たくさんのおやつとおもちゃ、お友達から届いたお花を入れて、皆で火葬とお骨上げを行いました。子どもへ事実を隠すことなく見せて、話した事で彼等も徐々に状況を把握し、気持ちの整理がついていったのか、今では娘もお友達に「あーちゃん死んじゃったの。今はお空で痛い所もなく遊んでいるよ」とお話するようになりました。今回、子どもへ「死」の概念を教えることに迷いもありましたが、全てを理解出来ていなくとも、偽りなく伝えて良かったと今は心から思います。

あーちゃんは、たくさんの人に支えられた犬生でした。子どもたちも、そんなあーちゃんと生活することでたくさんの経験をし、一回り成長しました。

あーちゃんが最後まで生き抜く様を近くで感じ、息子は獣医師になりたいそうです。娘もまた保護犬を飼いたいと言っております。

改めてペットを飼うということ

ペットを飼う、それは何があっても投げ出さず、その子の一生を面倒みる事。その為には、今ある環境とこの先の見通しをしっかり立てて迎え入れる必要があります。子どもの成長より早いスピードで動物は歳を取ります。可愛いだけではなく、介護が必要になるかもしれない。ですが、ペットと過ごす日々は幸せなものです。犬は自らの死をもって子どもに命の尊さを教えてくれるといいますが、まさにその通りだと思います。わが家では子どもたちが、あーちゃんの祭壇に折り紙やおやつをお供えして大切にしてくれていますし、あーちゃんの思い出話をしては笑っています。やっぱりペットとの生活は最高です!

最後に……あーちゃん、亡き後もこんなに温かな気持ちにさせてくれて、そしていつか必ず向き合う「死」について、家族で考える機会を作ってくれてありがとう。いつまでも大好きだよ。

著者プロフィール

カナダ留学後、バックパッカーでアメリカ大陸とヨーロッパ、中東を旅して英語の必要性を痛感。現在は息子7歳、娘5歳をともに1歳からインターナショナルスクールへ通わせ、どっぷり英語漬けの日々。

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