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子育て

2歳がカギ!スペシャルニーズ(発達障害)について親が知っておくべきポイントとは?(後編)

2歳がカギ!スペシャルニーズ(発達障害)について親が知っておくべきポイントとは?(後編)

インタビューの前編では、自閉症などスペシャルニーズの兆候や診断を受けるタイミングについて説明していただきました。後編では、アメリカで受けられる特別教育や親としてできることなどについてお話をうかがいます。

日経DUAL記事

子どもがスペシャルニーズと診断されたらどうするか、アメリカでの選択肢は?

――アメリカの場合、自閉症などスペシャルニーズの診断を受けた後は子どもにどのような選択肢があるのでしょうか?

スペシャルニーズがある子どもについて、アメリカでは公的資金で支える制度やプログラムがたくさんあります。生まれてから3歳までの子どもには早期介入プログラムが、3歳から21歳になるまでの子どもには一般教育を受けられるようになるまでの特別教育プログラムが提供されます。スペシャルニーズと診断された子どもには専門家のサポートが必要なので、21歳まではその公的支援を受けられます。

日本のスペシャルニーズ施策に関しては詳しくありませんが、先進国では民間のコンサルタントや心理士、神経科医に診てもらわなければならないというのが一般的です。私のおすすめは、地域の専門家はもちろんのこと、他の地域や他国の専門家にも相談することです。昨今のようなリモート生活下においては、遠方の専門家の意見を聞いて診断を受けることも可能となりました。診断後に子どもがケアを必要としている場合は、ケア方法やケアしてもらえる施設などについて、そういった専門家から提案してもらうこともできます。ただ、アメリカでも専門家の質に差があるので、事前に評判を調べることが重要です。

日本で診断を受けた後に親としてできることとは?

――日本では、特別支援教育機関がまだ十分に整備されていないのが現状のようです。子どもにスペシャルニーズが必要と診断されたとき、親として家庭で何ができるか教えて頂けますか?

自分や身近な人がからだに医学的な問題を抱えているのではないかと心配した時、最初は病院に行くと思います。医者はまずどのような病気か調べますが、診断を受ければその後どのように治療していくのか計画が立てられます。スペシャルニーズの子どもについても、それと同じなのです。

スペシャルニーズの子どもをサポートする主な目的は、現在発達段階にある子どもがどの位置にいたとしても、その子の発達を先に進めることです。身体的障害児に対しては、運動能力向上のために特別なおもちゃを与えたりすることも重要ですが、認知的な社会的発達や言語障害の場合は特別なアイテムは必要ありません。

例えば、あなたの子どもが2歳ぐらいで何か「ウォーター」に近い単語を呟いています。言葉で欲しいものを表現しようとしているようで、親は水が欲しいのだなとわかります。その時、すぐに水を手渡さずに、褒めながら正しい言葉が言えるように促していくのです。子どもが水を欲しがり、「ウォ」と言ったとします。そうしたら、「よくできたね!水はここにあるよ。これは、ウォーター」と言えば、子どもは大人の言った言葉を繰り返そうと少し前進して「ウォー」と言います。

そこでまた褒め、励まして、正しい言葉を伝えます。「すごいすごい、その調子。ウォーって言えたね。これはウォーター、ウォーターだよ」と言うと、子どもは「ウォー、ウォー」と言い続けます。この辺りで子どもにはフラストレーションがちょっと溜まります。水が欲しくて、自分では水と言っているつもりなのにもらえないからです。

そこで、大人が少し歩み寄って、「ウォーチャーって言えるかな?ウォーチャー」と言ってみます。もしも、ここでお子さんが「ウォーチャー」と言えたら、たくさん褒めます。「やった!ウォーチャーって言えたね!もうすぐ言えるよ。がんばれ!ウォーター、ウォーター」と、このように辛抱強くサポートします。

励まし、褒めて、正しい言葉を伝え、子どもが正しい発音をできるように導くという大抵の親は嫌がってしまう面倒で地道な努力を、ぜひ実行してみてください。辛抱強く教えないと、子どもはきちんと学べません。

ただ、後押ししすぎるとどうしてもフラストレーションを与えてしまいます。少しずつ子どもに合わせながら、少しずつ負荷をかけていくことで、発達を促進することができます。さらに、繰り返し行うことにより、子どももそのやり取りに慣れてくるのです。苛立った子どもの癇癪などに負けて親が要望を叶えてしまうと、子どもはその自分の行動が正しい方法だと感じてしまうのです。たとえ癇癪を起こされても、忍耐強く、子どもには譲らないと強く心に決めて踏ん張ってください。

親が過保護にならないために、子どもの自立を促す最適な方法

――スペシャルニーズの子どもを持つ親が陥りそうな一般的な行動はどのようなものですか?過保護にならないためにどういったことに気をつければよいのでしょうか?

子どもを観察するのはよいことではありますが、あまり気にしすぎてもいけないと思います。気遣いは大切なものの、手助けのしすぎは問題です。「干渉しすぎず、放置しすぎず」ということなのですが、子育てにはマニュアルがなく、親として学ぶことばかりで興味深いです。私は幼児教育に関して経験が豊富でしたし、結婚して3人の子どもに恵まれましたが、それでも親になるのはチャレンジをすることだと思っています。

子育てで何か疑問を持ったら、本やネットで探したり、もっと深刻な悩みであれば心理学者や経験値が高い教育の専門家に相談したりすることをおすすめします。小児科医は医学的な訓練を受けて身体的な病気を扱う仕事をしていますが、発達の遅れや障害を扱う訓練は受けていません。ですから、スペシャルニーズのお子さんについては、悩みを共有してくれ、理解してもらえるような知識を豊富に持つ専門家を探すべきです。彼らは他の親にほかの子どもの話をすることはありませんし、他の親との間で悩んでいることがあれば助言をしてくれるかもしれません。

最後に、受診を躊躇してしまう保護者へ博士からのメッセージ

―― 最後に、診断結果を恐れて受診を躊躇してしまいそうな保護者の方にアドバイスをお願いします。

受診したことや診断結果を人に知られてしまうことに不安を覚える保護者の方もいるでしょうが、医師や心理学者といった相談先の専門家は他言するようなことはしません。そのような心配は無用ということを、まずは知っておきましょう。

子どもを大事に思っていて子どもが必要としているのならば、親はスペシャルニーズに対応できるサポート体制を整えてあげることが重要だと思います。結果に怯えて診断を受けずに後で後悔するよりも、まずは事実を受け止め、その後、子どものために親は何ができるかを考えることです。

時間は戻せないので、気がかりなまま放置したりタイミングを逃したりしてしまえば、後々子どもたち自身が問題を抱えて生きていくことになります。わが子について少しでも疑問を抱いたら、専門家の診断を受けて問題があるかどうかをはっきりさせましょう。ともかく、兆候やサインに気づいたら二の足を踏まず、少しでも早くスタートすることが最もよい方法です。

スペシャルニーズだと診断された後は、先ほど挙げたような公的支援も含めさまざまなサポートやプログラムがあります。もしも受診した医師など専門家の判断に納得がいかなかった場合は、遠慮せずにセカンドオピニオンやサードオピニオンを受けましょう。いろいろな専門家による多くの意見を聞くことで、よりよい方法が見えてくるかもしれません。

幼児期の子どもの脳の成長は驚くほど早く、とくに自閉症の場合は3歳から5歳までの時期を逃さずにサポートしていくことがとても重要です。6歳を越えると見極めが難しくなるため、早めの2歳前後にまずは受診してください。診断後は迅速に専門的なサポートを受けることにより、お子さんのその後の人生を変えられる可能性が生まれると思います。

おわりに

このインタビューからもわかるように、スコット博士は自閉症などスペシャルニーズの子どもに関しては早期に診断を受け、専門家の指示を仰ぐように推奨しています。2歳前後に診てもらいサポートを受けることで、症状が緩和されるなどのケースもあるからです。兆候やサインに気づいたらまずは恐れず迅速に診断を受け的確に対応していくことが、お子さんやご家族のためといえるでしょう。

【スコット・メッシュ博士 プロフィール】
ミシガン大学心理学専攻卒業ののち、セント・ジョンズ大学で臨床心理学の博士号を取得し、25年以上にわたり家族との関わりを深める。臨床心理学者として、子どもの特別なニーズの診断やメンタルヘルス教育に携わってきた。自閉症や広汎性発達障害の子どもの発達と心理的評価を専門としている。著書に「Assessment in Early Childhood(幼児期のアセスメント)」、共著に「A Practical Guide to Psychological and Developmental Evaluation in the Early Intervention Program(早期介入プログラムにおける心理学的および発達評価の実践的ガイド)」など。また、自閉症や特別なニーズを持つ2,000人の幼児にサービスを提供し、ニューヨーク市で受賞歴のあるLos Ninos Servicesの共同設立者兼CEOでもある。
著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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