公開
学び

「学習障害やADHDでも長所を伸ばせる教育を!」とっとリンク平林景さん

「学習障害やADHDでも長所を伸ばせる教育を!」とっとリンク平林景さん

ご自身も発達障害のお子さんの父である平林さん。美容師から美容専門学校の教員、そして東京未来大学こどもみらい未来園の副園長などを経て起業。現在は株式会社とっとリンク(https://tottolink.jp/)代表として、 “福祉×オシャレ”をコンセプトに、福祉業界のイメージを変えるべく、発達障害の子も長所を伸ばせるマンツーマンの放課後等デイサービス「みらい教室」を関西で展開している。

平林さんの想いはもちろん、あまり知られていない「学習障害のこと」についても詳しくお話を伺いました。

平林景さん
株式会社とっとリンク代表取締役。発達障害の子も長所を伸ばせるマンツーマンの放課後等デイサービス「みらい教室」を4教室展開。福祉業界のイメージを一新すべく、コンサルタントや講演会活動も行っている。著書に『「とと」と「とっと」と「発達障害」』(ギャラクシーブックス)。一般社団法人日本障がい者ファッション協会代表理事も務める。
https://twitter.com/tottolink

 

日経DUAL記事

マンツーマンで寄り添える、発達障害児のためのオシャレな施設がなかった

__なぜ、ご自身で発達障害児のためのアフタースクールを作ろうと思ったのでしょうか?

ずっと美容業界で生きてきたので、正直「福祉なんて自分とは無縁の世界だ」くらい思っていました。それが、息子に障害があるとわかってから人生が一変しましたね。僕自身そうだったんですが、福祉や障害って、どこか薄暗く閉鎖的なイメージで、“蓋をしている感覚”があるなと。実際に、息子のためのアフタースクールを探そうとした際もそうでした。「発達障害がある子だって、もっと明るく華やかで楽しく通えるような場所があっていい!ないなら作ってしまおう」と決意し一念発起したのが、「みらい教室」です。実際に展開してみると、僕と同じような悩みを持たれる親御さんが大勢いることに驚きました。中には見学にいらして「こんな教室を待っていた」と涙をながして喜んでくれる方もいたほどです。

ポップな配色が目をひくこちらは、“カラフル”がテーマの本教室。

こちらは、“Honey”をテーマにした兵庫県尼崎市の立花教室。

全体的にブルーを基調とした南武庫之荘教室は、“未来”がテーマ。

__「みらい教室」のこだわりポイントを教えてください

まずは見た目が明るく華やかであること。“障害があるからこそ通える施設”にしたかったんです。僕自身の中で、オシャレの5大定義「明るい・華やか・憧れ・自分らしい・明るい未来を感じること」があるのですが、これを満たした教室にしたいと思いました。保護者の方は教室を探している時点から不安でいっぱいですから、たとえばHPを見ただけでも明るい気持ちになることって大事だと思うんです。

あとは、マンツーマン型の療育にもこだわりました。発達障害といっても個人差がかなり大きいので、「その子の長所を伸ばせる教室にしたい」と思ったからです。できることを増やして自己肯定感を養っていくので、不登校だった子が、ここに通いだしてから学校に通えるようになったという子も大勢います。家族以外の周りの大人が「そのままでいいんだよ」と現状を受け止めて寄り添いながら、一緒に成長していける関係がとても大事なんだなと感じていますね(対象は小学1年生~高校3年生)。ただ、現状は入室希望の待機者が100名を超えているので、そこは課題になっています。

IQとは関係ない! 読み書き計算が苦手な「学習障害児」が発達障害の6割近くいる!

__発達障害のあるお子さんのお悩みとはどんなものが多いでしょうか?

これは案外知られていないんですが、発達障害の中で一番多いのは6割近くがLD(学習障害)、3割がADHD(注意欠如・多動性障害)、1割が自閉症スペクトラム障害なんです。

学習障害というのは、読み書き計算のどれかに障害があるもの。ただ、ハリウッドスターのトム・クルーズやスティーブン・スピルバーグ監督なども公表しているように、IQとは関係ないので、授業も理解できるし、友達とコミュニケーションも問題なく取れてしまう。だから、親はもちろん本人も学習障害だと言うことに気づいていない例がかなり多いんです。

__学習障害とは具体的にどんな症状があるのでしょうか?

たとえば、「30分で終わる程度の漢字や計算の宿題に毎日3時間かかってしまう」「3年生以上でも字がマスからはみでてキレイに書けない、鏡文字になる」「音読が上手くできない」。こういった症状も学習障害が原因であることがあります。実際に、学習障害の子たちにどんな感じなのかと話を聞くと、「数字が踊って見える」「文字が2重に見える」ことがあるそうです。そんな状態で書き取りや計算をさせるのは苦痛でしかありませんよね。ですから、「みらい教室」では、その子にとってベストな量や方法を一緒に探っていきながら、学校側にも合理的配慮の働きかけをするアドバイスを行ったりしています。

“福祉×オシャレ”で業界のイメージを変えたい!

__福祉の業界について平林さんが今思うことはどんなことですか?

憧れの職業トップ100に介護や福祉が1つも入っていないのはヤバいぞと。やはり、まだまだ福祉業界は3K(きつい、きたない、きけん)のイメージが強いと思うので、3I(イケてる、生きがいがある、いい仕事)にしたいですよね。福祉を憧れられる仕事にするためには、人材確保の面でもオシャレなイメージであることってすごく大切だと思っています。

そのひとつの取り組みとして昨年、一般社団法人日本障がい者ファッション協会というのを立ち上げまして。たとえば、障害者でも健常者でも関係なく着られる洋服のブランド(bottom’all)をプロデュースをしたり、福祉のイメージをオシャレで華やかにするさまざまな活動を行っています。目標は「車いすでパリコレに出て障害者がランウェイを歩くこと」。実際に関西コレクションにも出演できるよう準備を進めておりました。最近では、障害やマイノリティーのあるモデルさんを個性として起用するハイブランドもありますから、この流れは来ていると思っています。

__学校や地域で、発達障害のあるお子さんやそのご家族に、私たちができることはありますか?

一番は障害に関して正しい知識を持ってもらうことだと思います。先生方には、できないことを叱るのではなくて、障害特性によってできないことを理解し、できることをしっかりと見てあげてほしいです。ある小学校で、ときどき療育クラスに通う子に対し、生徒が「〇〇君はどこに行って何をしてるの?」とたずねたのですが、先生は「みんなともっと仲良く話しがしたいから、苦手なこと(みんなとコミュニケーションをとること)をできるようにするための勉強をしにいっているんだよ」と話したそうです。すると、周りの子どもたちは「じゃあ僕たちももっと話しかけてみるね」となったそうです。つまり、障害と決めつけるのは周りの方なんです。発達障害は凸凹の個性。そんな見方がもっと浸透してくれたら嬉しいですね。

__平林さんの今後の野望を教えてください!

「福祉業界や障害への偏見を、オシャレの力で僕らの世代でなくしたい」本気でそう思っていますし、できると信じています。僕自身も、身近な非常識や思い込みを変えるべく、スカートをファッションとして履いています。スカートは私にとって世の中の偏見に切り込む戦闘服だと思っています。ツイッター(https://twitter.com/tottolink)でも日々さまざまな活動や思いをつぶやいていますので、ぜひ知ってほしいですね。あとは、僕がもっとメディアに出て、こういった活動や想いをどんどん発信していきたいと思っています。

__最後に、発達障害でお悩みのご家族にメッセージをお願いします

親御さんにはよく、「お子さんのありのままの姿を見てあげてください」とお伝えしています。「友達がいない」「落ち着きがない」「〇〇ができない」といった親が思う困りごとって、実は本人は困っていないことも多いんです。「今のお子さんの困りごとは何か」をちゃんと見て、一緒に未来の線路を作ってあげてください。障害があるからといって、困難は人より多いかもれしれないけれど、明るい未来がないわけではありません。障害があっても「ありがとう」や「ごめんなさい」がしっかり言える、生きる力のある子に育てていきましょう。そして、親も子も周りに頼れる人になってほしいです。生きることは頼ること。僕も一人では何もできません。一緒に子育てを楽しみましょう!

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

  • twitter
  • はてなブックマーク
  • LINE
300_250

関連記事

新着記事