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子育て

「怒る」と「叱る」はどう違う? 子どもを傷つけずに叱る6つのルール

「怒る」と「叱る」はどう違う? 子どもを傷つけずに叱る6つのルール

親はわが子のことを真剣に考えるあまり、つい感情的になり、怒ってしまうもの。しかし、イライラした感情をそのままぶつける「怒る」と、子どもの成長を思って「叱る」のでは全く違います。

今日は、子育て心理学から見た「怒る」と「叱る」の違い、そして、ポジティブ心理学ベースの効果的な叱り方についてご紹介します。

日経DUAL記事

「怒る」と「叱る」の根本的な違い

・「怒る」とは、怒り手の感情を外に爆発させること
・「叱る」とは、相手によりよい方法を教示すること

似ているようで、全く違うことがわかりますね。「怒る」はネガティブ、「叱る」はポジティブな色味があります。

子どもの困った行動に対し、親がガミガミと感情的に怒ると、その場の雰囲気が険悪になるのはもちろんですが、ダメージはその場だけにとどまりません。

1.トゲのある否定語が、子どもの自己肯定感や自己効力感を低下させてしまう
2.親からその感情的な対処法を学んでしまう

という弊害も出てきます。とくに2は、その子どもの人間関係にまで影響を及ぼす可能性が!

例えば、

・親が大声で怒鳴ると、子どもは「そうか、困ったときはパパとママみたいに怒鳴ればいいんだ」
・親が叩くと、子どもは「そうか、困ったときはパパとママみたいに叩けばいいんだ」

と学び、お友だちとの日常に応用されやすいのです。子どもを叱る場面というのは、親の問題解決能力を披露する場。お手本になる対処法を示してあげたいですね。

では、実際にポジティブ心理学を利用した叱り方の例として、親子ともに心が揺らいでしまうNGの叱り方と子どもを伸ばす叱り方をご紹介します。

やってはいけない3つの叱り方

その1 過去を引きずる

叱るときに、過去の叱りネタを入れ込むことを言います。たとえば、

昨日も同じことで怒られたでしょ!
先週もそう!
・どうして毎回毎回、同じことで叱られるの!

このような叱り方をしてしまうと、親の心の中での叱りネタが増えるため、感情が乱れがちになります。

また、過去の叱りネタを一緒に混ぜて叱ってしまうと、結果として、今問題になっている子どもの困った行動から目線がずれてしまうことに。大きく叱っている割に、的が絞られていないため、子どもに伝わりにくくなります。

その2 叱る範囲をあれもこれもと広げる

叱るときに、あれもこれもと話題を広げることを言います。たとえば、

これもできていないし、○○もできていない
・ほんと、何をやらせてもダメなんだから!
何もかも、中途半端!

1つめのNG同様、この叱り方も叱る範囲を親の心の中で拡大してしまっているので、怒りスイッチが入りやすく、感情的な怒りに陥りがちです。

また、あれもこれも叱っていると、全体的にダメだけれど、何が具体的にだめなのかという論点があいまいになるので、子どもに伝わりにくくなります。1つめと2つめに共通するのは、叱りネタを心で増やしてしまうと怒りは倍増する一方、叱る的はずれていくため、親が使うエネルギーだけが大きく、その割には子どもへの効果が少ないということです。

その3 子どもを全体否定する

叱るときに、子ども自身の人格までも否定してしまうことを言います。たとえば、

・なんて悪い子なの!
・ダメな子ね
・あなたが悪い!

本来、叱る的は、子どもの行動のはずなのに、いつのまにか、子ども自身がターゲットになってしまっている状態です。

子どもに限らず、自分自身を否定されれば、自己防衛反応で相手への反抗心が出てくるもの。だれでもそうですが、反感を持っている相手の言うことになんて耳を傾けたくなくなってしまいます。これでは言うことを聞いてもらいたいのに、逆に問題解決からはどんどん遠ざかってしまいます。

子どもを伸ばす3つの叱り方

その1 今、目の前のことだけを叱る

叱る的は「いま」+「ここ」。そのとき起こっている困った行動だけを話題にするのがポイントです。

・いまの言い方はよくないよ
・いまの○○は良くなかった
・いまやっている○○をやめて

「うちの子、悪いことばかりするから、こんな言い方では効かない」と思われる方もいるかと思いますが、前に述べたように、過去ネタを入れて大きく叱っても感情的になるばかりで解決はしません。「いまの○○は…」という叱り方は、目線を「今ここで起こっている問題」に向ける効果があるので、ママのイライラや怒りを起こしにくくする心理的作戦でもあるのです。

その2 やってほしい行動を具体的な言葉で肯定形にして伝える

子どもに伝わりやすくするために、具体的な言葉で、何をすればいいのかを肯定形で示していきます。

・床にあるブロックを全部この箱に入れなさい
・ごはんだからテレビを消して
・ほら、座って食べるよ

「お片づけして」だと伝わりにくいので、「赤のクレヨンをケースに戻して」などと名詞を使って具体化していきます。また、叱るときに、「○○しちゃダメ」と指示しているだけだと、何をすべきかが子どもに伝わらないので、その代わりに何をしたらいいのかを肯定形で伝えていきましょう。その際、親が言葉と矛盾した行動をしてしまうと(例:座って食べなさいと言っているのに、立っている状態でスプーンを口に運んでいるなど)、言葉の効果がありませんので、矛盾をなくすこともポイントです。

その3 誰のせいかではなく、どうすればいいかに着目する

叱る的は「行動」なので、今やっている困った行動を改善することに注力します。また自分の行動の責任を自分で取ることを学ばせることも大事な成長です。

・今の○○な部分はよくないよ。次はどうすればいいと思う?
・どこに置いたのか思い出してごらん。あなたは自分の部屋を探しなさい、ママはリビングを探すから

叱るとき、つい子どもに「あなたが悪い」と詰め寄ってしまいたくなりますが、子どもに自分のよくなかった部分を実感させ、反省を促すことも大切です。「あなたのせい」と言葉で言うのではなく、なくなったものを自力で探させる、こぼしたものを掃除させるなど、行動に移すことで年齢に応じた責任感を学ばせることもとても大事。この叱り方は、お子さんの心に「自分の行動には責任を持つ」ということもインプットできます。

叱りすぎてしまったらどうカバーすればいい?

とはいえ、叱ることは一筋縄ではいかないもの。きっとだれもが、「理不尽な怒り方をしてしまった!」と感じることがあると思います。そんなときは、まずは「ごめんね」と言って、年齢的に理解できる言葉で、思わず口走ってしまった過ちを謝りましょう。

小さい子には抱っこするなどスキンシップも伝わりやすいです。いずれにしても、できる限り時間を開けない方が効果的です。

親が子どもに頭を下げることに抵抗感がある方もいるかもしれませんが、この行為は悪い時はきちんと謝るということを子どもに伝えられることにもなります。子どもにふだん「悪いことをしたら“ごめんね”だよ」と教えていることを自らも行っていきましょう。

今日から実践できる! 叱りを学びに変えていく5ステップ

叱る場面というのは、親子ともにイヤなもの。できれば少ない方がいいですし、進歩のある叱り方がいいですよね。そこで最後に、叱りを学びに変えていく5ステップということで、親にとっては少しでも心穏やかに、子どもにとっても少しでも学びになる方法をご紹介します。

【叱りを学びに変えていく5ステップ】

1. きっかけを与える
2. 子どもに考えさせる 
3. 今ある事実のみを伝える
4. やってほしい行動を伝える
5. できている部分からほめる

1. きっかけを与える

子どもはまだ時間の感覚がなかったり、我を忘れて没頭してしまうことが多いので、親がきっかけをあげることは大事なポイント。たとえば、「○○ちゃん」「時計を見て!」ときっかけとなる声をかけたり、視線を向けて目を合わせたり、あとはタイマーなどでベルを鳴らすのもきっかけの1つになります。

2. 子どもに考えさせる 

そして「どうしたらいいかな?」と子どもに考えさせます。年齢にもよりますが、「お片づけした方がいい」「座って食べた方がいい」と理想形が言えることがあります。将来的には、自ら判断して自分をコントロールしていく力が必要なので、ここで気づける力を少しずつつけていくことは大事なポイントです。ただやるべきことはわかっていても、即行動につながるわけではないことが子どもは多いもの。1と2でできなくても、まだ仕方ないとしてください。

3. 今ある事実のみを伝える

実質上、ここからが叱りのポイントになりますが、先にご紹介したような「目の前の事実のみを伝える」のがこのプロセスです。ステップ2の段階で自分が何をすべきかがわかっているのなら、ステップ4,5へ。そうでなければ、「床がブロックでいっぱいだよ」「20時だから寝る時間だよ」のように今ある事実を伝えていきます。この段階で大事なのは、親が感情の脱線を起こさないように、意識的に言葉を選ぶこと。「もうどうしてあちこち散らかすの!床がブロックでいっぱいだよ」としてしまうと、イラっときてしまうからです。

4. やってほしい行動を伝える

私たち親は、「○○するのはダメ」と注意するのは得意ですが、その代わりにやるべき行動を示していないことは案外多いものです。子どもの年齢に合った具体的な言葉で「○○しなさい」「○○しようね」と伝えていきます。

5. できている部分からほめる

叱る場面でほめるというのは、起こりえない気がするかもしれませんが、たとえば、「床のブロックをこの箱に片づける」に対し、「ここに入れて」、1回でダメならまた「ここに入れて」と感情をフラットにしたまま繰り返し言うことで、1つめのブロックを入れる確率は高まります。そこで親が折れて、自ら片づけてしまうと、「やっぱりママがやってくれた」と学んでしまうので、行動を起こさせるしつこさも大事なポイント。そして、できている部分から声を出して認めていくことで、行動が前に進みやすくなります。

ゲームなどの依存性が強いものの場合、もっとしっかりした骨組みの行動改善が必要となりますが、生活習慣的なものはこのプロセスで学んでいけることが多いです。試してみてください。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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