気持ちをセルフコントロールして「自分で泣き止む子」はどこが違う?

気持ちをセルフコントロールして「自分で泣き止む子」はどこが違う?

おもちゃが壊れた、お菓子を買ってもらえない、遊具を貸してもらえない……。こういう場面で、子どもがぐずって不機嫌になり、それを引きずってなかなか気持ちを切り替えられず、ママが困り果ててしまうことはよくあります。

そこで今回は、自分で自分の気持ちを切り替えられる子になってもらうために、親はどんな工夫ができるのかについて、発達心理学を交えてお伝えしていきます。

日経DUAL記事

“泣き止ませてもらう”から“自分で泣き止む”へ

生まれたばかりの赤ちゃんは、”泣く“というスキルを使って、自分の欲求を周りに伝えていきます。

この時期は、ウィニコット博士の言う「絶対的依存期」に当たりますので、パパやママに100%依存をしている状態。感情の切り替えも、基本は他力本願的で、あやしてもらったり、おっぱいやオムツのお世話をしてもらったりして、泣き止ませてもらいます。

しかし、成長とともに、子どもたちは周りに泣き止ませてもらうのではなく、自分で泣き止む術を身につけていきます。ただ、それには個人差があり、同じ年齢でも自分で気持ちを切り替えるのが上手な子もいれば、まだそうでない子もいます。

一般的に、赤ちゃん時代から3歳くらいまでは、気持ちが切り替えられずぐずり続けることも多いですが、幼稚園に入って以降、ばらけてくるように思います。

もともと切り替えが苦手な子がいる

その違いがどこから出てくるのか。きっと多くの方が、「親の育て方?」「しつけ?」と思うかもしれません。もちろん、それもありますが、もともとの気質による部分も大きいです。

お子さんを2人以上育てているママは実感していると思いますが、同じように接していても、兄弟姉妹で全然違う反応だということはよくありますよね。

もともと持っている気質が違えば、感じ方、受け止め方も当然違ってきます。気持ちの切り替えについても同じことが言えるのですが、もともと切り替えが上手な子、苦手な子がいるのですね。

「うちの子は気持ちの切り替えが下手」と悩んでいるママの中には、幼稚園などで周りの子が気持ちを上手に切り替えられている様子を見たりすると、「どうしてうちの子は……」と落ち込み、ときにご自身のことを責めてしまう方もいるようです。

でも、同じようにやっても同じようにならないのが子育て。持って生まれた気質で、もともと切り替え下手な子はいるということは頭の中にとどめておいてほしいと思います。

それを踏まえて、そこから親に何ができるかということを見ていきましょう。

いい気分でないわが子を受け入れる

気持ちを切り替えるためには、自分の気持ちや思いをある程度抑制できる力が必要です。

・世の中には思うようにならないことがあること
・我慢しなくてはいけない場面があること

このことを大人は知っていますが、子どもたちはまだまだ理解できません。できることなら、好き勝手にやりたい思いの方が強いものです。

なので、ママが、「世の中には思うようにならないことがあるんだよ」と口で説明するだけでは、残念ながら十分には学べません。子ども自ら、思うようにならない経験をしていくことで習得するのです。

その過程で、子どもたちは機嫌を損ねるかもしれません。でも、そういう経験で学ぶことは非常に大きいということは理解しておいてほしい点です。

アメリカ心理学会の元会長だったセリグマン博士も、「子どもはいつもご機嫌でいる必要はない」と言っているように、親が子どもの負の感情をぬぐいすぎないことは、とても大事。子どもの機嫌を損ねてしまうことを“悪”とせず、伝えたいしつけ、守ってほしい約束には毅然とした態度で接することがポイントです。

「ここは我慢しなくちゃだめなんだ」ということが分かってくると、そういう場面で負の感情を出すことが減ってきて、結果的に切り替えも上手になってきます。

どこまで手を出すかを見直す

育児は、昨日の延長で今日があり、今日の延長で明日があり、ずっとずっと切れ目なく続いていくものなので、関わり方を見直すことなく、知らず知らずに、年齢不相応に手を出し過ぎてしまっていることがよくあります。

何でもママがやってくれる。ついでにイヤなこともママがやってくれる。子どもにとってこんなに楽なことはありません。でもこれが続いてしまうと、「何とか1人でがんばる」という経験が不足してしまいます。

親が先回りし過ぎて、子どもが感じるべき不安感やフラストレーションを取り除いてしまうと、取りこぼす成長があるということは知っておいてほしい点です

どこまで親が面倒を見てあげるのかという範囲を、年齢が上がるごとに見極め、自分で何とかできることは自分でやるように自立を促していく。これは、気持ちの切り替えの上でも非常に大事なことです。

その過程で思うようにいかないことも多々あり、イライラしたり、癇癪を起したりすることもありますが、そういう感情を持ちながら、「何とかできた!」という喜びを味わえると、気持ちのアップダウンを身をもって経験できるので、気持ちの切り替えスキルにつながるのです。

もちろん、乗り越えたときには、「がんばったね」「自分でできたね」としっかりほめていきましょう。次回につながりやすくなります。

物質的な欲求に慎重になる

私のこれまでの育児相談などの経験から見ると、物質的に満たされ過ぎると、気持ちの切り替えが苦手になっていく傾向が高い印象があります。どういうことかというと、

・スーパーで「このチョコ買って~」と言ったら、買ってもらえる
・家で「あのチョコ食べたい~」と言ったら、夕食直前でももらえる
・「おもちゃが壊れた~」と言ったら、買いなおしてもらえる

このようなことです。子どもにとって、親の存在は、「自分のことを全面的に受け入れてくれる人」であることは間違いないのですが、これが物質的な欲求を満たす形で出てしまうと、

・買ってもらえるまで泣き続ける
・もらえるまで不機嫌を突き通す

のような状況に陥りやすく、しかもエスカレートしてしまうこともよくあります。子どもにとっては、チョコレート1つより、2つの方がいいからです。

また、あげることで途端にご機嫌になり、泣き止んでくれるので、つい頼ってしまう。このような親側のエスカレートも起こりがちです。

はじめの頃はそれで丸く収まることが多いのですが、それがその家族の解決法になってしまうと、数年後に親子のバランスが崩れ、「手に負えない!」と困ってしまうこともよくあるので、子どもの物質的な欲求には慎重に対応していくことも大事です。

「買ってほしいけど買ってもらえない」という経験でまた1つ我慢することを学び、それがセルフコントロールにつながっていくからです。

以上がおすすめの働きかけとなりますが、全般的に子どもの自立を促すアプローチとも言えるでしょう。自分で気持ちを切り替えられること自体が自立を表すので当然と言えば当然かもしれません。

年齢が上がるごとに、子どもが親と離れて過ごす時間は増えていきます。そうなると、学校、習い事、遊び場などで、湧き出る負の感情を、ママになぐさめてもらうのではなく、自分でなぐさめられることは非常に大事なスキル。0歳の赤ちゃん時代は、親に完全に依存している絶対的依存期なので、愛情を注ぐことだけを考えていけばいいですが、1歳以降、自分で積極的に動いて世界を広げるようになったころから、少しずつ意識していけるといいと思います。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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