子どもの「心理的レジリエンス」を高める3つのコツとは?

子どもの「心理的レジリエンス」を高める3つのコツとは?

最近よく聞くようになった「レジリエンス」という言葉。逆境への強さを表す心理学用語ですが、生きづらいと言われる時代だからこそ、この言葉が注目されるのでしょう。

先月号の『今年の育児のお悩みキーワードは「孤」&「心理的レジリエンス」心理カウンセラーが選ぶ、2018年のお悩み相談ベスト5』では、おすすめアプローチの中でレジリエンスのことを少し取り上げましたが、今回はレジリエンス自体をメインにし、それを高めるコツをお伝えしていこうと思います。

日経DUAL記事

メンタルの強さに直結する「レジリエンス」って?

テレビやインターネットなどで、「レジリエンス」という言葉を見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか? 最近、話題になっている心理学用語です。

レジリエンスは“Resilience”と書きますが、辞書で引くと、「困難や苦境からの回復力、復活力」などと載っています。

心理学では、
逆境に置かれたときに早く復活できる人をResilient(レジリエント)な人
傷つきやすく、なかなか立ち直れない人を、Vulnerable(ブルネラブル)な人

と表現します。

同じ状況に置かれても、反応は人それぞれ。いったんは落ち込んでも、その後、5分で回復する人もいれば、次の日まで引きずってしまう人もいます。そのような個人差はなぜ生まれるのでしょうか?

立ち直りが早い子と遅い子、何が違うのか?

大人でも逆境に強い人、弱い人がいますが、子どもたちも同様です。両者の何が違うのかと言えば、“物の見方”が違います。よくポジティブ、ネガティブという言い方をしますが、それと関係しています。

だれだって、いつまでも抜け出せない長いトンネルの中にいたら、気が滅入るものです。前へ進もうと思えるのは、「先に行けば外に出られるはず」と思えるからです。

ポジティブ発想の子は、逆境に置かれたときに、「この状況は長くは続かないし、広がりもしない」と考える傾向があるので、「先に行けばトンネルの外に出られるはず」という発想に至りやすいのですが、ネガティブ発想だと、「この状況は延々と続き、どこまでも広がっていく」と捉える傾向があるため、「お先真っ暗」と映ります。

この先行きの見通しの明暗が、レジリエンスと大きく関わっているのです。

ポジティブ発想がレジリエンスの土台に

このポジティブ度、ネガティブ度は生まれつきではありません。小さい頃の親の関わりが大きく影響することが分かっています。

話は単純で、親がポジティブな関わりをすると、その子もポジティブ発想を吸収しやすく、逆に、ネガティブな関わりをしてしまうと、ネガティブ発想を身につけてしまう傾向が高いのです

では、その「ポジティブ側」に行くには、どうしたらいいのでしょうか?

先ほど、ポジティブな人は、逆境に置かれたときに、「この状況は長くは続かないし、広がりもしない」と捉える傾向があるとお伝えしました。それを応用していきます。

たとえば、ママ自身がイヤなことに巻き込まれたときや、子どもが逆境に立たされたときに、
「大丈夫、なんとかなる」
「この程度で済んでよかった」

のように、「長引かせない+広げない」の発想で捉え、それを言葉として発していきます。

そして、「もうダメだ」「最低最悪」のような悲観視する言葉を慎むこと
「○○すると怖いよ」「○○したら大変なことが起こるよ」と脅さないこと
もポイントになります。

とくに、「学習性無力感」と言って、すでに“無力”を学んでしまっている状態だと、「どうせダメだ」「ムリに決まっている」とはなから決めつけてしまうことがよくあります。

「無力感」は学習の部分も大きく、レジリエンスの低さの決定打になりますので、もしママ自身が思い当たる節がある場合は、意識的に悪いことを「短く+狭く」捉えるクセをつけていきましょう。

私がそもそも、「ポジティブ育児メソッド」というものを考案した背景には、親ができる働きかけで、子どもたちの発想をポジティブに持っていければ、その子自身が生きやすくなると考えたからです。

子どもの思考スタイルは、親の関わりで変わっていきます。意識的に、ポジティブにする働きかけをしていきましょう。

レジリエンス強化3つのコツ

前号でお伝えした「人助けの経験」や、上記の「ポジティブな声かけ」以外にも、レジリエンスをアップする秘訣はたくさんあります。ここでは、意識すれば簡単に取り入れられる「レジリエンス強化のコツ」をさらに3つご紹介したいと思います。

その1 絆を再強化する

身近な人間関係がしっかりしていると、人は強くなれます。家庭内の絆や友だちとのつながりが強固だと、もし傷ついたり、落ち込んだりするようなことがあっても、復活が早くなります。

1人では立ち上がれないことでも、周りの温かな支えがあれば復活しやすくなるのです。まずは、家庭内の絆を見直し、「いるのが当たり前」の空気になっていないかを確認しましょう。そして同時に、友だちを作るコツも伝授していきます。

共感できる子、相手の痛みを理解できる子は、友だちが自然と集まってきます。その力が身につくように、親自ら、共感力を示すと、お子さんの学びにつながります。

その2 先回り行動をやめる

親は、わが子可愛さに、思わず先回りして、あれこれとやってあげたくなります。

しかし、本当に親がやってあげるべきなのは、子どもがつまずきそうなデコボコ道を先回りして平らにしてあげることではなく、それにつまずかないような力を身につけさせたり、つまずいてしまったときにどう対処したらいいかを教えてあげたりすることです。

親は、子どもが「負の感情」を持つことを、できるだけ避けたいと思ってしまうものです。でも、負の感情を経験せずに、大人になることは実際にはありえないですし、それを自分でなぐさめ、処理する方法を知らずに大きくなったら、それこそ「打たれ弱い子」になってしまいます。

怖いのは、失敗することではなく、その後の解決法を知らぬまま育ってしまうことです。あえて先回りしないことで、レジリエンスアップにつなげていきましょう。

その3 自分力を促す

赤ちゃんから子どもへと成長する過程で、だれもが「自分力」を身につけていきますが、その度合いには個人差があります。

もし親が、子どもの行動を管理しすぎてしまうと、その子の自分力はなかなか育ちません。子どもの頃、自分で決断をする機会が多い子は、将来、大成する傾向が高いということも分かっていますので、親がリードしつつも、子どもにできる判断や決断は、できる限り委ねていきましょう。

自己管理が上手になると、レジリエンスがアップするだけでなく、スランプやストレスを未然に回避する力にもつながっていきます。まずは、何で遊ぶか、何を着るか、何を持っていくかなど、自分の身の周りの簡単なところから、決める習慣を促していきましょう。

ポジティブな土台があって、そこに絆や自分力が備われば、くよくよと引きずることなく、自分を信じて立ち上がりやすくなります。

レジリエンスは、コツコツと積み重ねていくタイプのものですので、まだそばで見守れる小さいうちから、意識的に働きかけるのがおすすめです。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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