今年の育児のお悩みキーワードは「孤」&「心理的レジリエンス」心理カウンセラーが選ぶ、2018年のお悩み相談ベスト5

今年の育児のお悩みキーワードは「孤」&「心理的レジリエンス」心理カウンセラーが選ぶ、2018年のお悩み相談ベスト5

育児は、今も昔も大変な仕事ですが、ママの悩みの質はその時々で変わり、その時代を反映していることがよくあります。

そこで、今回は、今年多かったお悩みを5つご紹介し、そこから見える現代特有の悩みの傾向や、今の時代だからこそ心がけたいことをお伝えしていきます。

日経DUAL記事

今年らしいお悩みって? 2018年に多かった相談ベスト5

育児相談は、困ったときに利用するものですから、当然ながら、育児が楽しくてたまらないというママはお見えになりません。みなさん、毎日の育児で頭を抱えることがあって相談に来られます。

一番多いきっかけは、ママのイライラ。「○○だから、イライラする」というケースがやはり最多です。では、ママは何にイライラしていることが多いのでしょうか? ママのイライラの根源を分類し、多かったお悩みベスト5としてまとめてみました。

ママのお悩み第1位 「ゲーム、動画を止めない」

「テレビと違って、タブレットで動画を再生するとキリがない」
「ゲームをし出すと、何も聞こえなくなる。言っても止めない。最後は私が爆発」
「朝起きたらすぐにタブレット。食事中も、帰宅後も。どうコントロールしたらいい?」

参考記事)https://www.shinga-farm.com/parenting/dealing-with-amusements/

ママのお悩み第2位 「夫の理解のない言動や行動」

「私は何にイライラしているのか自問したら、一番の原因は夫だった」
「気がつかない、気が利かない。悪気がない分、対策が見えない」
「一日子どもと遊んでいていいよなだと! 子育てをラクだと思っているのがムカつく」

ママのお悩み第3位 「おねだり、物欲が激しい」

「買い物に行くと、必ずお菓子をねだられる。ダメだと言うと大泣き」
「あと少しで夕飯というときに、アメが欲しいと大騒ぎ。あげるまで泣き叫ぶ」
「お財布から小銭がなくなっていた。問い詰めても、取ってないの一点張り」

ママのお悩み第4位 「友だちとの関わりが下手」

「公園で他の子に砂をかける。どうしてイヤがることをするんだか」
「自分のおもちゃを貸せない、その割に他の子のおもちゃは勝手に使おうとする」
「仲良く遊んでいるときはいいが、こじれてくると、手で押してしまう」

ママのお悩み第5位 「うちの子は本当に育てにくい」

「いちいち反抗的で、本当に疲れる。私のことを試しているのかと思うほど」
「毎晩、夕食前が戦争。料理をする横で、あれこれ騒ぐので、つい怒鳴ってしまう」
「素直に言うことを聞くことがない。必ず自分のやりたいことを押し通そうとする」

以上が、今年あったお悩みでした。同じようなお悩みを経験されている方もいるのではないでしょうか。

悩みから見えてくること~現代の悩みの特徴

毎年、師走のこの時期になると、その年の世相を漢字一文字で表す「今年の漢字」が発表されますが、その育児バージョンとして、私の中に浮かんだのが「孤」という漢字。孤独や孤高の「孤」です。

子ども、ママ、そしてパパ、それぞれの抱える「孤」が絡まった悩み、それが今年のお悩みの特徴だったのではないかと思います。

まず、子どもたちの「孤」についてですが、これは遊び方の変化によるものです。

スマホやタブレットは、今どきの子どもたちの大好きな遊び道具。画面を相手に1人で遊ぶことが増え、逆に子ども同士がたわむれて遊ぶ機会が減ってきています。遊び方が「孤」に偏ることで出てきた諸問題、これが子どもにまつわる「孤」です。

次に、ママはというと、これは言わずもがなかもしれません。自分の母親に聞くには遠い、周りに頼れる人もいない。目の前にはやることが山積みだから、手当たり次第自分でやるしかない……。ワンオペ育児に象徴されるのが、ママの「孤」です。

そして、パパ。ママが意図していることが上手く読み取れなかったり、家にいる時間が少ない分、我が子のことで知らないことも多かったり。家族なのにちょっと立ち位置が違う……、これがパパの「孤」になります。

それぞれの「孤」が絡んで悩みが深くなっているのが、今年の特徴だった気がします。

よく、「昔はよかった」とかつての子育てを引き合いに出す人もいますが、大家族で住んでいて、ゲームもスマホもない、物もあふれていない中での子育てと単純に比較するのは難しいと思います。

「渡す方が悪い」「タブレットを与えなければいい」という意見もあるでしょうが、なければないで悩まなくて済むものも、あると悩みが増えることはよくあります。

今の育児は、ゲームや魅力的なおもちゃがたくさんある中で、「じゃあどうする」と考えなくてはならない……。子育ての新しい時代が来ていて、今のママたちは、その先駆者として奮闘しているとも言えるのです。

育てにくい現代、私たち親ができる2つの対策

そんな時代の変わり目だというのに、次から次へとやることがあり、毎日をなんとかこなしていくのが精いっぱいという状況です。最近は、働いているママも増え、ますます時間的にタイトになってきています。

こういう中で、何ができるのか。私が日々カウンセリングをしていて感じるのは、

・甘えと甘やかしの線引きを間違えないこと
・心理的レジリエンスを高めておくこと

この2つが、難しい現代育児を乗り越える力になるだろうということです。

対策その1 甘えと甘やかしの線引きを間違えない

「甘やかすけど、甘えさせない」これだと子育ては急速に悪化します。逆に、「甘えさせるけれど、甘やかさない」これだと、子育ては確実に好転します。

2つとも「甘い」ので、区別がなかなか難しいのですが、ざっくりと分けるとすれば、

・甘えさせる=非物質的対応(例:抱っこをする、スキンシップを心がける)
・甘やかす=物質的対応(例:泣かれたのでクッキーをあげる、ねだられておもちゃを買ってあげる)

と言えるでしょう。物が豊富な今の時代、甘やかす材料が簡単に手に入ってしまうので、この部分の引き締めがとても大事になってくるわけです。もしこの2つの「甘さ」を混同し、

・仕事が忙しくてかまってあげられないから⇒おもちゃを買ってあげよう
・寂しい思いをさせているから⇒おやつくらい自由にしていいだろう

のように、気持ちの代償を、物で満たそうとしてしまうと、甘えと甘やかしのバランスが途端に崩れてしまいます。

親子関係で物質的な対応を習慣にしてしまうと、甘やかしが加速され、どうしてもゲーム依存やおねだりグセなどの方向へと行ってしまいがちなので、現代育児ならではの注意点として挙げておきたいと思います。

参考記事)https://www.shinga-farm.com/parenting/makegraces-or-pamper/

対策その2 心理的レジリエンスを高めておく

あと大事なのは、心理的レジリエンスです。レジリエンスとは、心の筋肉のようなもの。ちょっとイヤなことがあったり、しんどいこと、心が折れそうなことがあったりしたときに、それに負けずに跳ね返せる力を言います。

子どもたちはもちろんのこと、ママ自身のレジリエンスも高めておけると、今の時代の子育てでも少し楽になると思います。

レジリエンスの高め方については、次回1月号で詳しくお伝えしていく予定ですが、そのプロセスに辛い思いは伴いません。

たくさんの試練を乗り越えた子だけが、逆境に強くなれるわけではなく(もちろんそれもその子の強さになりますが)、ポジティブな経験を積むことでもレジリエンスは育まれます。

今月はその中の1つをお伝えしておきます。それは、「人助けの経験」です。だれかを助けたり、他の人の役に立ったりすることが、「ボクはどうせダメだ」「ワタシにできっこない」というあきらめ思考から脱するのに役立つのです。

年末年始はご実家に帰省したり、家族で過ごす時間が増えたりと、お手伝いをしてもらうにはとてもいいタイミングです。年齢に合ったお手伝いで、家族の大事な一員であることを実感してもらい、一緒にレジリエンスも高めてしまいましょう。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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