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子育て

2歳から小学生まで。「言うことを聞かない!」の年齢別特長と対処法

2歳から小学生まで。「言うことを聞かない!」の年齢別特長と対処法

「子どもが言うことを聞かなくて、困っている」このように感じる親御さんは、案外多いのではないでしょうか。ただ一概に「言うことを聞かない」と言っても、その状況、内容、頻度等、背景や状況が異なり、さまざまです。ですが親が「困っている」「子育てに疲れる」という気持ちは同じですね。

では、なぜ、子どもは親の言うことを聞かないのでしょうか。その原因からどのように接すれば子どもは親の言うことを聞くようになり、親のイライラを軽減することができるのか、子育て支援士の田宮由美さんにお聞きしました。

後半の、公認心理師の佐藤めぐみさんによる年齢アドバイスも必見です!

日経DUAL記事

子どもが親の言うことを聞かない原因と3つの対応策

その1 「話を聞く」習慣が身についていない

基本的なことですが、話を集中して聞く習慣が子どもに身についていないことがあります。これは、親の言葉を右の耳から左の耳へスルーしている状態ですから、言うことを聞いていないことがあります。

子どもの「話を聞く」力は、生活の中で、自然と身についていくものです。教えることも必要ですが、言葉で「きちんと聞きなさい」と言ったところで、出来るものではありません。

例えば、次のような状況はないでしょうか。振り返ってみてください。

・赤ちゃんの頃から、いつもテレビがつけっ放し、おもちゃが出しっ放しで、話をしていても、テレビやおもちゃに気が散っている。
・親が子どもと話す時、家事などをしながら、片手間に話している。
・親が子どもの話に、しっかり耳を傾けていない。

いつもそのような状況でしたら、子どもは話しを聞いて行動に移すという意識が低く、聞く習慣がついていないのかもしれません。いつも話している環境を見直してみましょう。

その2 親の関わりが少ない

親に関わってもらいたくて、わざと言うことを聞かない場合があります。これは弟や妹が誕生し、親が上の子に接する時間が減った時、よくある状況です。

親の言う通りにしていると、お兄ちゃん、お姉ちゃんはどうしても親からの関わりは減ってしまします。その為、親の気を引こうと、わざと言うことを聞かず注意させるようなことをするのです。

もちろん子どもは、注意されたり、叱れることを望んでいる訳ではないのですが、手っ取り早く親に関わってもらえるのが、この方法だからです。このような場合は、上の子に接する時間を意識して作ったり、言うこと聞いた時は、必ず認めて、大げさなくらいハグして褒めてあげるとよいでしょう。

対応①決めたルールを守る!

子どもとの約束事や決められたルールが守れなかったり、いつの間にか曖昧になっていることはないでしょうか。例えば

・「毎日、お片付けがきちんとできれば、週末は遊園地に行こう」と約束しても、その約束が守れない。
・「5時までに帰って来なければ、明日は遊びに行ったらダメ」と言いながら、翌日になるといつものように遊びに行かせる。

そのようなことが続くと、子どもは「親の言うことは聞かなくてもいい」と思う場合があります。

子どもとの約束を親が守れないということは、言ったことを実際に行動に移さなくてもOKと、子どもの心の中にファイルされていきます。ですので、子どもと約束したことや決めたルールは守りましょう。

また止むを得ず守れないことや「今回だけは特別よ」と認めてしまう場合があると思いますが、それは、あくまでも「今回だけ」にするようにしましょう。親自身が守れることが難しいような約束をするのではなく、必ず守れる約束を心がけるといいですね。

対応②「言う」内容のハードルを下げてみる

「子どもが言うことを聞かない」というのは、「言ったとおりにしない」「言った指示に従わない」ということです。子どもは親の言ったとおりにしようとしていても、その指示内容のレベルが子どもには高すぎて、出来ない場合もあります。

例えば、

・「毎朝6時に起きて、朝食を自分で準備して、部屋の掃除をしてから、学校へ行きなさい」
・「しっかり勉強して、テストは全て満点取ってきなさい」

と言ったところで、子どもは続けて出来ないでしょう。それは親の一方的な押し付けです。今一度、親は子どもの立場に立って、言っていることの内容を考えてみましょう。

対応③子どもが行動に移しやすい言葉で伝える

子どもに言う時は、「理解しやすい」「行動に移しやすい」言葉で「具体的」に言うことを心がけましょう。

例えば、「おもちゃを片づけさない!」と言うより「おもちゃがお家に帰りたいって言ってるよ」「お母さんとどちらがお片付け、早いか競争しよう」という言い方すれば、子どもは言うことを聞いて、片付けるようになっていくでしょう。

親が「子どもが言うことを聞かない」と悩む前に、親は子どもの言葉に耳を傾けてください。そして一方的な押し付けになっていないか、振り返ってみましょう。親という立場で抑圧して、一時的に言うことを聞かせても、それはやがて聞かなくなります。

「言葉」だけで子どもを変えることはできないものです。変えられるのは親自身の言うことと子どもの環境です。そのことを心に留めながら、子どもと過ごす日常を振り返ってみましょう。そうすれば子どもが、今より言うことを聞くようになり、親自身のイライラも軽減されることでしょう。

 

以上が、子育て支援士の田宮由美さんによるアドバイスでした。

ここからは、公認心理師の佐藤めぐみさんに、発達心理学の観点から、年齢別で「言うことを聞かない」子の心理発達の特長と接し方のポイントをお聞きしました。

言うことを聞かない!「2~3歳」の場合

【心理発達の特徴:自我が芽生える時期】

この年齢は、自我の芽生えの時期として知られています。そのため、「ワタシが!」「ボクが!」と自分アピールが多くなります。自分でやってみたいという気持ちも高まる分、パパやママが手を貸したり、代わりにやってしまったりすると、癇癪を起こして泣いたり、イヤイヤと反抗したりします。親の「○○してね」という指示には、とにかく「イヤ」と抵抗する子も多いのが特徴的です。

【接し方のポイント:子どもに決断を任せて気持ちを満足させる】

この時期は、いかに子どもの自立したい気持ちを満たせるかがポイントになります。イヤイヤ期というネーミングがついていますが、この時期の一番の目的は、「自立すること」であって、「イヤイヤすること」ではありません。

親が一方的に指示を出すと、頑なに言うことを聞かなくなりますが、たとえば、「青いTシャツと赤いTシャツ、どっちがいい?」「今日のおやつは何にする?」と子どもに決断を任せるシーンを設け、「自分が決めた!」「自分がやった!」という気にさせると、そこで気持ちが満足し、コミュニケーションが取りやすくなります。

難しい時期ですので、何でも言うことを聞かせようとするよりも、どうしても聞いてほしいキメの部分(例:寝る時間、歯みがきなどの基礎的な生活習慣etc.)を守らせることに集中し、それ以外は、「Tシャツは青だって赤だってどっちだっていいや」とメリハリをつけるとバランスが取りやすくなるでしょう。

言うことを聞かない!「4~6歳」の場合

【心理発達の特徴:自分中心に物事を考えている時期】

2~3歳で芽生えた自我がこの時期に活躍します。この年齢の子は“エゴセントリズム”と言って、自分を中心に物事を考えているのが特徴的です。よって、周りのことを考えて行動したり、空気を読んで動いたりするのはまだ難しいと言えます。

また、「言うことを聞く」という点から言えば、相手の話を聞くよりは自分から何かを発することを好むため、工夫が必要になります。

【接し方のポイント:子ども目線で具体的な指示をする】

相手の言うことを聞くことがまだあまり得意ではないとはいえ、そのままでは自分勝手な行動が増えてしまいます。イヤイヤ期もそうですが、親としてどうしても譲れない部分はどこなのかを明確にし、それをルール化することは非常に大事です。あれもこれも欲張って、親の思い通りに子どもを動かそうとするのは逆効果ですので、守るべきルールは少数精鋭にし、少ないながらもきちんと通すことがポイントと言えます。

また、自分を中心に物事を捉えているこの時期の特徴を踏まえ、子どもへの声かけは分かりやすく具体的にするのがコツです。

よく友だちとの間でもめごとになると、「○○ちゃんはどう思ったと思う?」「○○くんの立場になって考えてごらん」のような注意の仕方をすることがありますが、まだ他者の視点を獲得していないこの年齢の子には通じません。

「言うことを聞かない」と悩んだときは、大人目線で言っていないか、指示の内容が言葉として理解できているかを見直すことも重要です。「ちゃんとやって」や「きちんと片づけて」ではどれくらいが“ちゃんと”で“きちんと”なのかがあいまいなので、子どもが知っている言葉で表現しましょう。名詞を多く使うと具体的な指示をしやすくなります。

言うことを聞かない!「小学校入学以降」の場合

【心理発達の特徴:他者の視点を持ち始める時期】

それまでの自己中心的な物の見方を脱し、他の人から見たらどう見えるのかという「他者の視点」を持ち始める時期。また、頭の中で情報処理を行えるようになるなど、認知面でも大きく発達します。いわば、心の中の大工事が行われている状態です。

こういう時期は、日々の成長にとまどいを感じることも多く、それが負の感情として外に出ることもあります。親からすると、「親に歯向かっている」とか「言うことを聞かない」に映ります。

【接し方のポイント:指示は1回に1つずつ!】

小学校入学は子どもを持つ親にとって大きな成長の標です。「すっかり大きくなった」と感じる喜ばしい成長ですが、同時に子どもへの期待度が高まりやすい時期でもあります。たとえば、「時計が読めるのだから時間を守れるだろう」「小学生なのだから、もう言わなくてもわかるだろう」のような期待です。できるだろうと期待値を高めて、実際には子どもが動けていないと、結果的に叱る場面が増えることになります。

心理発達のところで、頭の中で情報処理ができるようになる時期とお伝えしましたが、このような成長は徐々に起こるものです。とくに低学年の子の認知発達を踏まえると、1回に1つの指示を出すことをおすすめします。「Aをやって、Bをやって、Cをやって、それが終わったらおやつにしよう」のような長い指示では、言うことを聞かない状況を生み出しかねないからです。面倒に感じることはあると思いますが、1つずつこなしていくことが結果的には早道でしょう。

【まとめ】
・「言うことを聞かない」場合、内面の成長の過程で起こっていることがある
・改善策は、親子で決めた無理のないルールを地道に守っていくこと
・言うことを聞かないが常駐化する前に、軌道修正は早めに行う

以上、年齢別にお伝えしてきましたが、子どもの内面の成長が言うことを聞きにくくしてしまうことは案外多いものです。ですが、これはだれもが通る成長の過程ですので、この部分は親がしっかり知識を持って、なんとか乗り越えていってほしいと思います。

その一方で、年齢ごとの成長とは別に、ただただ言うことを聞いてくれないというケースも見られます。それらの多くは、家庭のルールがあるようでなかったり、あっても守られていなかったりすることが原因です。親子でなんとか守れるルールを設定すること、そのルールを地道に守っていくこと、シンプルですがこれが改善のポイントになります。

日々育児相談をしていて感じるのは、小さいうちの方が軌道修正はしやすいということ。言うことを聞かないサイクルが常駐化してしまうと、2歳よりも3歳が、3歳よりも4歳がと年齢を追うごとに大変になってくることが多いものです。

「もしかしてうちの子が言うことを聞かないのは、この常駐化かも…」と感じたら、思い立ったが吉日、すぐに軌道修正をスタートすることをおすすめします。

著者プロフィール
田宮 由美

公立幼稚園、小学校での勤務、幼児教室を7地域で展開、小児病棟への慰問、子どもの声を聴く電話相談など、多方面から多くの子どもに関わる。そのような中、子育てに熱心な
故に、その愛情が焦りとなり挫折、絶望感を抱いている親子が多いことに心を痛める。
「子どもの自立」「自己肯定感」「自己制御力」を柱とし、真に子どもの能力を開花させる子育て法を広める活動を2010年から始める。
現在、息子は大学病院で医師として、娘は母子支援の職場で相談員として勤務。実生活に落とし込んだ、親の心に寄り添う記事に定評がある。「難しいことを分かり易く、ストンと腑に落ちて行動に移せること」を理念とし、現在は執筆、講演、幼児教室を中心に幅広く活動中。
資格:小学校教諭・幼稚園教諭・保育士・日本交流分析協会 子育ち支援士
著書:『子どもの能力を決める0歳から9歳までの育て方』(株)KADOKAWA

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