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子育て

子どもがウソ、そのときの親の心理とできるウソ対策

子どもがウソ、そのときの親の心理とできるウソ対策

成長とともに、子どもはより高度なウソをつくことがあります。「子どものウソが見抜けなかった」「信じていたのに……」と親はショックを受け、自分を責め、傷つきます。

このように、ウソはいったんつかれてしまうと、その後、気持ちを引きずりがちなため、やはりウソに至らないようにするのがベスト。ここでは、徐々に巧みになってくる6歳前後の子のウソにフォーカスし、それを防ぐためにできることや、お互いが傷つかない声かけについて見ていきます。

日経DUAL記事

何よりショックなのが子どものウソ

子どもを育てていると、本当に色々ありますよね。一難去ってまた一難、悩みはつきません。お友だちと上手く遊べない、ごはんをなかなか食べない、宿題をやらない、ゲームばかりやる……。

どれもママの悩みの種であり、私も日々このようなご相談を受けますが、その中でも、ママの精神面に与える影響が飛びぬけて高いお悩みがあります。それは、子どものウソに関すること。

「うちの子がウソをついたんです」というお悩みは、宿題問題、ゲーム問題などよりも、ずっと親が精神的にショックを受けている気がします。

育児の悩みは多岐に及びますが、ウソというのは、親にとって、「許せない」と思うものだからでしょう。「人としてどうなのか」と考えてしまうのだと思います。

そこで、今回は身近に起こりうる事例を設定し、そこから見えてくる子どもの心理、親の心理、それを踏まえて親ができることについて見ていきたいと思います。

事例~6歳の男の子・A君の場合

先日、A君が幼稚園から戻るなり、園バッグの中から取り出したのは1つの消しゴム。「先生にもらったんだ!」と得意げにママに見せました。こんなこともあるのかと思いつつ、新品だったこともあり、ママは連絡帳に、「消しゴムをいただいたようですが、大丈夫でしょうか?」と書き記しました。

翌日、園から戻った後に連絡帳を見ると、その欄がぐちゃぐちゃに黒く塗りつぶされていることに気づいたママ。これはおかしいと思い、「どうしたのこれ?」と聞くと、「消しゴムはもらったのではなく、床に落ちていたのを持ってきてしまったこと」を認めました。

そこで、消しゴムを翌日返すことにしたのですが、A君は、「自分で先生に説明できるから大丈夫。だからママは言わないで!」と主張。ママはA君を信頼し、その後を任せることにしました。

その後、こんなこともあったからと、ママは自らも先生に一応伝えておこうという気になり、A君にその旨伝えると、「絶対やめて!」とかたくなに抵抗しました。

「なんでそんなに反発するの?」とママは訳が分からず混乱していると、横にいたパパが、「本当は言ってないんでしょ」とひと言。そこで、実際には、先生に言っておらず、こっそり戻していたことが判明しました。

翌日、ママも同席する中、A君は先生に泣きながら謝りました。

子どもに分かりやすい教示で、ウソを未然に防ぐ

ここで、この一件は終わり…のように思えますが、ママの気持ちは大混乱のまま。

・なぜ消しゴムを持ってきてしまったのか
・ウソは悪いことだということが分かっていながら、なぜウソをついたのか
・自分は、6歳の子のウソも見抜けないのか
・先生に謝った後、ケロッとしているようだが、実際に反省したのか

ウソが他の問題よりも、ずっとママの心にずしりと来るのは、この部分です。子どもを信じたいという思い、それが覆された思い、傷ついたショック……。それが重なって、気持ちを引きずってしまいます。

ですが今回の件、事の発端は「ウソ」ではありません。A君が消しゴムを持ってきてしまったことです。それがきっかけで、ウソをつくことになってしまったわけです。では、そもそもなぜ持って帰ってしまったのでしょう?

とても単純な話ですが、そこには、「いいな」「ほしいな」という気持ちがあったからです。人間は成長とともに、自分の欲求を上手く抑制できるようになってきますが、子ども時代は、その瞬間の「いいな」という思いが勝ってしまうことがよくあります。

そしてその後、つじつまが合わなくなると、ウソで逃げることになってしまうのです。今回は幼稚園内のことでしたので、事なきを得ましたが、これがお店で起こってしまっては大変です。

ママは小さいうちから、「お店のものは買わなくちゃダメ」「人の物は取っちゃダメ」と教えているものですし、6歳であれば、子ども自身もそれを分かっているでしょう。

ただ、日々の生活の中には、お店で試食品を食べられたり、テスターを試せたり、ファミリーレストランでおもちゃをくれたりと、子どもの理解があいまいになるような状況がたくさんあります。

A君のママも、新品の消しゴムということで、はじめはサンプルでもくれたのかなと思ったそうですが、あいまいな状況で、「いいな」という欲求が重なると、どうしても子どもは自分にいい方へと解釈したくなります。

子どもに教える際は、こういうボーダーにある物品の取り扱いも含め、教えていく必要があるのでしょう。「試食品はOK、でもその横にある商品はダメ」だと、子どもにとっては分かりにくいので、

・どんなに小さな物であっても、勝手に自分の物にしてはいけない
・迷ったら必ずそこにいる大人に訊くこと

これを浸透させていくのがいくことで、結果的にウソで逃げなくてはいけないような状況に陥りにくくなります。

「いい子でいたい」という心理とウソの関係

今回のケースのように、自分で故意にやってしまった場合は、ウソ云々よりも、まずは、“持ち帰ってしまった”という行動自体に目を向けていくことが大事ですが、中には、声かけの工夫で、ウソを未然に防げるような状況もあります。

たとえば、今回のA君の例を使えば、「うっかり消しゴムを持ち帰ってしまった」という場合がそれに当てはまります。

本人にそのつもりはなく、「“うっかり“○○してしまった」という状況では、自分のうっかりミスを認め、「間違っちゃった」と認められる子もいる一方で、中には、「まずい」と感じ、ウソをついてしまう子がいます。

間違いを極端に嫌がる子がこのパターンに陥りやすいのですが、その場合、「自分は間違いをしてはいけない」と過ちや失敗を自分のものとして受け入れられないため、その場を切り抜けるために、とっさのウソが出てしまうことがあります。「いい子でいたい」という思いがもたらすウソとも言えます。

大人である私たちは、できれば間違いはしたくないけれど、それでも人間は失敗もするということを知っています。ましてや忙しいママであれば、日々、「あ、忘れた!」「しまった!」ということも多いのではないでしょうか。

子どもは、その子の性格により、臨機応変さや柔軟さが足りず、不器用な対応になってしまうことがあります。その点を理解して、間違いに対することの恐怖心を緩和してあげるのが望ましいと言えます。

ウソは初めが肝心

たとえば、今回のA君の例を「うっかり持ち帰ってしまった」というパターンに置き換え、ママの声かけのコツを展開させてみましょう。

バッグの中の消しゴムを見つけた段階で、
「あれれ、幼稚園の消しゴムをうっかり持って帰ってきちゃってるよ~」
「明日、先生に一緒に返そうね」

ママの方から、うっかりミスを肯定し、正しい行動を示してあげることで、ウソで自己防衛をしなくて済むようになります。

この「肯定」の部分がカギで、ここで、「イヤだ、これ幼稚園の消しゴムでしょ」や「これどうしたの?」だと、子どもによっては、「責められている」「怒られるに違いない」と思ってしまい、結果つきたくもないウソで逃げることになります。

大人と子どもの力関係は、どうしても大人の方が上になるため、自分を守る手段として、ウソが用いられがちなのです。

これまで子どものウソに関する相談を受けてきた経験で感じるのは、ウソというのは、1つめのウソの段階で何らかの回避ができなかったかを検討することが大事だということです。

子どものウソはママの悩みの種ですが、子どもを追い込むと、逆に嘘を増やしてしまいがちです。1つのウソが、2つめのウソを生まないよう、声かけに気をつけていきましょう。

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