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教育の原点を取り戻すためのイベント「超職員会議2016」が問いかけるもの【後編】

教育の原点を取り戻すためのイベント「超職員会議2016」が問いかけるもの【後編】

「教育現場のブラック労働化」問題をテーマに専門家や現場の教師、保護者たちが語り合うシンポジウム「超職員会議2016」。部活動問題を中心に議論が行われたパネルトーク第1部の様子は、前編でお伝えしたとおり。

▼前編はこちら
教育の原点を取り戻すためのイベント「超職員会議2016」が問いかけるもの【前編】

つづく後編では「教育の原点を取り戻す!」をテーマに、学校へのクレーム問題や事務作業量の削減方法などについてレポートします!

クレームの背景にある、「社会」と「保護者」それぞれの余裕のなさ

続くパネルトーク第2部では、大阪大の小野田先生が登壇。内田先生と「学校と保護者の協力」というテーマで語り合いました。

学校のクレーム問題の専門家である小野田先生は、「2000年以降、保護者が学校に苦情を持ち込むケースが急増している」と指摘。さらに苦情の原因や内容は年々、多様化しており、学校としても対応や解決が難しくなっているそうです。

苦情が増えている原因としては、社会全体が余裕を失い、配慮がなくなっていること。そして子育てに失敗できない保護者たちの学校に対する期待値が上がっていることが挙げられました。

また、極端なクレームや子どもの問題行動の背後には、家庭内の不和や親自身のメンタル面の問題が隠れているケースも少なくないそうです。これらを背景に「要望」がいつのまにか「苦情」になり、学校への「無理難題」になっていくのだとか……。

個人的には、学校を「学び舎」ではなく「保育所」と勘違いして「勉強からしつけまでまるっと面倒みてよ」と考える親の増加が背景にあるのかも、と感じました。義務教育として長年、当たり前のように教育が提供されてきた弊害かもしれませんね。

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↑ パネルトーク第2部。金髪がトレードマークの内田准教授と、派手な特注ジャケットで登壇した小野田教授。

保護者を「モンスター」と呼んで排除してはいけない!

小野田先生によれば「1000件の苦情があれば、そのうち100件はトラブルに発展する」とのこと。ただし、そのうちの98件は「解決できる」と言います。

その秘訣は「初期対応」と「両者の密な話し合い」。とくに初期対応に失敗すると、問題がこじれやすいそうです。

「学校は問題が起きたときの適切な情報開示が苦手。最初に情報を出さないと、その態度が学校側の保身と取られ、保護者からの不信を招く。

大事なのは、クレームを持ち込む保護者を「モンスターペアレント」と決めつけて排除しないこと。彼らも子育てに悩むひとりの「人間」です。だから、学校や現場の教師たちが保護者と真摯に向き合い、話し合う『対応力』を身につけること。それが最も重要なんです」(小野田先生)

内田先生も「部活中の重大事故」で、学校が速やかに情報を開示し、真摯に対応した結果、保護者とスムーズに和解できたケースを紹介。保護者と学校の「インタラクション(対話)の大切さ」を強調しました。

一方で、学校へのクレームの中には、明らかに学校側に非がない不当な要求もあります。

「そういうケースでは、医療機関や法律の専門家など外部の第三者の力をどんどん頼るべきでしょう。その際は事実を淡々と、緻密に記した記録が非常に重要になります。

もちろん通常のクレーム対応にも有効です。学校の先生たちには、この客観的な記録の重要性をもっと知ってほしいですね」(小野田先生)

小野田先生のお話で印象に残ったのは「学校の先生はクレーム処理の専門家ではない」ということ。保護者としっかり向き合いながらも、業務範囲を超える対応については外部の力をしっかり借りることが、結局は早期の問題解決につながるのでは、と思いました。

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↑ 今回のイベントを企画・主宰したミテモの森本さんと登壇者のみなさん。

業務削減のカギは「区議会、都議会、教育委員会への働きかけ」

パネルトークの後は、グループに分かれてそれぞれのテーマについて話し合うセッションが行われました。私は「プロジェクト型学習」をテーマにした教室を運営する株式会社FREED代表・杉山史哲さんのワークに参加。「先生の多忙」についてレクチャーを受けました。

大阪市の小学校で民間の教頭補佐を務めたこともある杉山さんは、日本の教師たちの労働時間が世界的に見ても長く、部活動や事務作業などの「授業外業務中心型」であることを指摘。例として、教頭の元に届いた書類が年間2100通もあったことを挙げ、こうした業務の効率化の必要性を強く訴えました。

そのための具体的な取り組みとして「区議会・都議会などに訴え、教育委員会に働きかけることが有効」と言う杉山氏。財源を確保し、業務のICT化・文書のペーパーレス化を進めることが、事務作業削減への早道であるとの見解を示しました。

「無駄な業務がなくならない原因は、『前年度もやっていたから』という現場の事なかれ主義が根底にある。まずは組織で業務改善に取り組む風土を作ることが大切です」(杉山氏)

このように、さまざまなテーマで議論が行われた「超職員会議2016」。質疑応答やグループセッションを通じて、一般参加者からも活発に意見が飛び交いました。今回、議論された内容や提言は、主催者側が報告書にまとめて文科省に提出する予定だそうです。

「誰か」が動き出さない限り、学校現場が抱える問題は今後も変わらないでしょう。だからこそ、現場の先生たちや問題意識を持つ人たちが集まり、声を上げた今回のイベントは、その改善に向けた大きな第一歩になったのではないでしょうか?

今回イベントに参加して、私たち保護者もこの問題を「他人事」にせず、もっと真剣に考えていかなければ、と感じました。というわけで、次回の「超職員会議」も参加しようと思います!

「超職員会議2016」のウェブサイトはこちら

著者プロフィール

ライター/親子留学アドバイザー。インタビューを中心に雑誌、Web、書籍等で活躍後、フィリピン・セブ島へ移住。2012〜2015年まで3年間、親子留学を経験。現在はライター業の傍ら、早期英語教育プログラムの開発・研究にも携わる。明治大学サービス創新研究所・客員研究員。

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