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「幼児期の先取り教育どうすべき?」中学受験にも詳しい子育てのプロ、教育家・小川大介さんがお答え!

「幼児期の先取り教育どうすべき?」中学受験にも詳しい子育てのプロ、教育家・小川大介さんがお答え!

教育に関心の高い親御さんたちは、幼児期からわが子の学びに余念がありません。でも「一体どこまで先取りすればいいの?」「わが子に合う学びとは?」と日々疑問に思う人は多いはず。そこで、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など、多数の著書を手掛け、これまで6,000組の親子を個別サポートしてきた中学受験のプロであり子育てのプロ、教育家・小川大介さんに、「幼児にしておくべき学び」についてお話を伺いました。最近の中学受験事情についても必見です!


小川大介さん
教育家・見守る子育て研究所所長
京都大学法学部を卒業後、中学受験個別塾を創設。コーチングと学習タイプ分析を融合した独自ノウハウで受験学習、幼児からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。塾運営を後進に譲った後は、執筆、講演、教育系企業への助言など幅広く活躍中。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。著書に、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)など20冊以上。
Twitter(https://twitter.com/kosodate_ogawa
YouTube「見守る子育て研究所」
https://www.youtube.com/channel/UCIAAel_Mm4fRHHgBsvMDcgw

日経DUAL記事

わが子にあった習い事の選び方とは?

【習い事のこと】

__計算や読み書き、英語など、幼児期の先取り学習について、小川先生はどのようにお考えですか? また、その子に合った習い事の内容や量はどう見極めればよいでしょうか?

あれもこれも与えるのではなく、成長を見守ること!
そもそも、先取りかどうかというのは、文科省が決めたペースに対してですよね。たとえば2歳の子が遊びながら掛け算を覚えて、4歳で漢字検定6級を取る子たちは先取り教育なのでしょうか? 私は好きで熱中した結果得たものであれば、それは先取り教育ではないと考えます。
習い事に関しても、例えば泳ぎを習得すること(HOW TO)を目的とせずに「泳ぐことが楽しい」「級が上がるのが嬉しい」「毎週通うことが楽しい」と思えているのであれば良いと思います。教育とは「家庭」「学校「地域」の3つが補いあって完成するものです。そして、習い事は地域にあたります。わが子の苦手や伸ばしたいことを補うために習い事を活用するのはいいことですが、大切なことは、あれもこれも与えるのではなく、わが子の心の成長を見守ることです。子どもたちにとって、「ぼーっとする時間」は頭の中を整理するために大切なのですが、特に幼児や低学年の子には不可欠な時間です。あれこれ詰め込みすぎて、「ぼーっとする時間」をなくしてしまわないようにだけは気をつけましょう。

中学受験を見据えた低学年の過ごし方

【中学受験のこと】

__首都圏の一部では4人に1人が、学区によっては8割以上が中受をする時代。近頃は席を確保するために1年生から塾に通う子もいると聞きます。過熱する中学受験事情について、先生のお考えを教えてください。

「なぜ?」「おもしろいね!」を低学年までに何万回言えたかどうかが、4年生以降の学力の差になる
塾側の早期囲い込み現象で、「低学年から塾に通わないと席がない」となっている地域があることは事実です。ただ、1~3年と4年生以降では脳の性質が異なるので、本格的な中学受験の学習は4年生以降でないと意味をなしません。多くの塾のカリキュラムを見ても、1~3年生のうちは学習の土台作りや遊びの要素が多いのはそのためです。脳の発達上、3年生までは物事を抽象化することが難しいので、具体的な学びが中心となり、4年生以降で初めて抽象化できる本格的な学びへとなっていくのです。
ですから、低学年のうちは、五感を刺激するさまざまな遊びを通して、具象化できる体験の数を増やすことが大切になってきます。これは何も山や川遊びだけに限ったことではありません。近所の公園でも道端でも十分です。ポイントは、幼稚園の帰りに子どもが「あ、ちょうちょ!」と言ったら、「そうだね」で終わりではなく「春になってきたんだね」と子どもの話を聞いて対話できるかどうか。幼児のうちに、「なぜ?」「おもしろい!」を何万回言えたかどうかが、4年生以降の学力の差になると実感しています。低学年で席確保のために塾へ通う際は、あくまで習い事のひとつと捉えるのがいいと思います。

家庭学習で勉強を好きにさせるコツ

【家庭学習のこと】

__教育熱心な子育てママやパパが陥りがちなNG 家庭学習法がありましたら教えてください。

記憶力も集中力がないと感じるのは、勉強が楽しくないから!

よく、「うちの子記憶力が弱いんです」「集中力が足りないんです」という親御さんがいらっしゃいます。でも、大好きなポケモンのキャラクターは全部暗記できたり、小さい頃の話を詳しく覚えていたりしませんか? 好きな分野なら覚えられるのは、記憶力や集中力が足りないわけではありません。勉強が楽しくないだけです。勉強が嫌いな子は、やり方を知らないだけなんです。
勉強が好きになるには、日々の学習の中で小さな達成感を味わい「これもできそう!やりたい」と思えるかどうかで決まります。そのために、親御さんにしていただきたいことは、毎日褒める理由を探すこと。そして今のお子さんの姿をそのまま認める、受け止めること。たとえば、テストが60点で落ち込むわが子に「40点ミスしたダメ出し」をするのではなく、「60点は取れたんだよね」と今を認めます。さらに、「あなたなら80点も取れるんじゃない? こことここの計算ミスがなければ80点取れたよね!」と、本人にできる理由を渡していけば、「これなら出来そう!」という思いが生まれてきます。そして、本人が計算に気をつける様子を見せたら、「意識できているね。エライ!」と褒めるのです。
また、その子によって伸びやすい時期が異なるということも理解していただきたいですね。私は勉強とは、やった分だけ伸びる公平なものだと思っています。正しい記憶のプロセスを親子でたどっていけばきっと大丈夫。詳しくは、1月に発売した新刊著書「自分で学べる子の親がやっている『見守る子育て』」(KADOKAWA)を!

わが子を伸ばしたい親がまず、意識すべきこと

【子育てのこと】

__「わが子を伸ばしたい!」と日々奮闘する親御さんが、子育てをする上で意識すべきこととはどんなことでしょうか?

教育を考える前に、自分たち家族が大事にしていることを夫婦でよく話し合って!
まず、ママでありパパであることに自信をもってください。子どもは自分で育つ力がありますから、親は子どもを信頼してあげることがわが子を伸ばす大前提となります。
世の中に子育てや学びの情報があまりに溢れているために、追い立てられるような気持ちになっている親御さんもいらっしゃいますが、情報は使うものです。不安があるとあれこれ与えたくなってしまうものです。ですから、子どもの教育を考える前に、自分たち家族は何を大事にして、どんなことに幸せを感じるかをよく考えてみて下さい。そうすることで、安心感や絆が生まれ、自分に合った情報が選べるようになってきます。
そして、大事なことは一人では決められませんから、夫婦でたくさん会話をしてください。

また、長年多くのご家庭を見てきた私の経験から申しますと、ママが家族から「ありがとう」と言ってもらえる機会を増やすと、ママの心が落ち着き、子どものあるがままを認める目になり、子どもも安心して伸び伸びと学習できるようになるものです。さらに、パパが教育熱心すぎる場合は「与える」ことに偏りがちなので、少し注意が必要です。特に、理屈や理論が好きで「エビデンス」という言葉をよく使うパパはなおさら。子育てを理想のセオリーに当てはめるのではなく、わが子を主体で考えていきたいですね。

頭のいい子の親がやっている「見守る子育て」とは?

【見守る子育てのこと】

__小川先生の著書『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』をまだ読んでいない親御さんへ、概要を少し教えていただけますか?

わが子は自分とは別人格。将来の自立を考えて見守る子育てを!
私が提唱している“見守る子育て”の対極が“与える子育て”です。学習を楽しみながら難関校に合格していくようなお子さんの親御さんたちを見ていると、皆共通してわが子を見守りながら、日々子どもの成長に幸せを感じながら子育てをしているなと感じます。
さらに、見守る子育てをしているご家庭は、わが子への理解度が深まっているため、信頼関係ができ、結果として思春期以降に子離れしやすくなるのです。
一方の“与える子育て”を幼児からし続けて、親が思う通りのことだけをやらせてきたご家庭は、わが子をずっと手元に置いておきたくなるので、いつまでも子離れできていない印象です。
将来、どちらの親になりたいですか? もし子どもの自立を願うなら、小さいうちから、わが子を自分とは別の人格だと思って子育てすることも大切なのです。
もちろん、あれもこれも期待したくなる親御さんの気持ちはとてもよくわかります。私も一人息子の父親ですから。でも、たくさんの習い事やお金をかけた体験だけが子どもを伸ばすのではなくて、「親の日常こそが子どもにとって体験の宝庫となっている」ということは頭においていて欲しいなと思います。
さらに、これからの時代を生きる子どもたちの能力は、「とことん、いびつでいい」と私は考えています。お子さんを見守りながら、何か好きなことを一つでも見つけられたら、素晴らしい子育てと言えるのではないでしょうか。

大人気、小川先生の見守るシリーズの最新刊もぜひチェックしてみてください!

著者プロフィール

ライター・エディター。出版社にて女性誌の編集を経て、現在はフリーランスで女性誌やライフスタイル誌、ママ向けのweb媒体などで執筆やディレクションを手がけている。1児の母。2015年に保育士資格取得。

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