14歳でカーネギー・ホールデビュー!イギリスの天才少女音楽家を育てた英才教育と家庭環境

14歳でカーネギー・ホールデビュー!イギリスの天才少女音楽家を育てた英才教育と家庭環境

最近では、音楽界のさまざまな神童による演奏がYouTubeなどを通して注目を集めています。そのなかでも、イギリス人のアルマ・ドイチャーは5歳で初めて作曲を手掛け、今ではピアノから始まってバイオリン、弦楽四重奏、オペラまでの楽曲を作曲します。昨年末には14歳にして、満員のカーネギー・ホールにて自分の作品でデビューを飾ったという例をみない天才少女音楽家です。現在15歳になる彼女を育てた音楽教育や家庭環境などの背景について、紹介したいと思います。

日経DUAL記事

4歳で作曲を始め、18世紀のイタリア音楽メソッドを通じて学ぶ

アルマはイギリスのロンドン近郊の街で生まれました。2歳からピアノを習い始め、3歳でバイオリンを始めています。誰かが強制したわけではなく、自分から好きで楽器に触っていたことから、両親は彼女に音楽の先生をつけることにしました。

その後はメキメキと上達し、4歳頃から即興の作曲にも興味を示して自分の楽曲を作り始めます。さらに数々のソナタ、オペラ、チェンバーミュージック、コンチェルト、シンフォニーを完成させ、類をみないその才能が国内の音楽界著名人たちの目に留まったのです。SNSでそれが拡散され、主要メディアでも大々的に注目されるようになりました。

イギリスでの主流な音楽教育システムは英国王立音楽検定の試験を受けることですが、アルマの両親は米国ノースウェスタン大学の教授とスイス人の音楽家に教えを請いました。18世紀のイタリア音楽メソッドを活用し、テクニックと楽典の知識をオンラインで彼女に学ばせたのです。ただ、彼女の音楽教育は自分自身が即興を通して独学で学んだ部分が多く、作曲に関しては正式な音楽教育は受けていません。

義務教育に合わずホームスクールで秀でた学力を習得

イギリスの義務教育は5歳から始まります。アルマも5歳の9月に学校に通い出しましたが、自由のない学校生活にひどく辛さを感じたようで、次の日から登校を止めてしまいます。彼女の気持ちを理解した両親は、すぐにホームスクールを開始しました。アルマはあるインタビューで、学校で5時間かけて学ぶことを家では1時間で学べると、ホームスクール学習を称賛しています。

朝は勉強と作曲、楽器の練習などに取り組み、午後には同じくホームスクールをしている家庭の子どもと体育やバレエをして、放課後に当たる時間以降は自由に過ごすという普通の生活をしていたようです。

音楽だけでなく語学にも秀でており、ドイツ語、英語、ヘブライ語と3つの言語を話すことができます。相当な学力を身に付けていて、興味があるさまざまなジャンルにわたるたくさんの本を読んでいます。こういった背景もあり、彼女の会話力は実際の年齢以上ということが多くのインタビューからもすぐにわかります。

天才少女を生み出したアカデミックエリートの両親による教育方針

イスラエル出身の数学者でオックスブリッジ大学の語学研究者である父と、オックスフォード大学の英語教授である母という両親は、名門ケンブリッジ大学で学生時代に出会いました。アルマは、世界でも一流のアカデミックな両親の元に生まれたといえるでしょう。両親ともアマチュア音楽家で、母親は大学時代にオルガンの特待生でもあったというほどのハイレベルです。

イギリスの富裕層の家庭では、将来音楽課程に進まなくても、楽器の演奏はたしなみとして必要であると考えられています。一般の受験にも有利とされていて、1つのソロ楽器に加え、可能であればもう1つのオーケストラ楽器を演奏できることが望ましといわれています。

アルマの壮大な創造力を維持するため、両親の意向から家庭内にテレビは置いていません。一般の家庭が家族団欒でテレビを見るように、ドイチャー家ではアルマが幼い頃から家族で楽器を演奏して時間を過ごし、父親が楽譜の読み方を教えていました。緑が多いロンドン郊外の邸宅に住み、木の上にはツリーハウスがある広々とした庭を歌いながら駆け回るなど、創造力が解き放されそうな環境で天才少女は自由に育ったようです。

現在はウィーンで活躍中

アルマは現在ウィーンに移り住んでいて、作曲活動に力を入れるかたわら多くの音楽賞を受賞しています。スポンサーも獲得し、コロナウイルスが蔓延する前は世界各国で公演活動を行っていました。

コロナ禍で公演の自粛や規制があるため、今は自らのYouTubeチャンネルで活動しています。YouTubeではカーネギー・ホールでのパフォーマンスをはじめ、小さい頃の演奏風景やインタビューも見ることができ、彼女の天才ぶりがよくわかります。

まとめ

これからも偉大な可能性が感じられるイギリスの天才少女アルマですが、本人の才能だけでなく、エリートの両親からある種のオリジナルな英才教育を受けた結果ともいえるでしょう。両親の理解と知識に加え、経済的な余裕がなければ成功は難しかったかもしれません。学校に通わないという選択なども一般家庭ではなかなか困難ですが、さまざまな背景から才能を最大限生かせたアルマの今後の活動に注目したいと思います。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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