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アメリカの「ギフテッド教育」に学ぶ、我が子の才能の見つけ方・育て方

アメリカの「ギフテッド教育」に学ぶ、我が子の才能の見つけ方・育て方

近年、日本でも「ギフテッド教育」が注目を集めています。突出した才能を持つ子どもたちに高度な教育を行うこのプログラムは、一部の天才だけが対象と思われがちですが、それはちょっと違います。早い時期から子どもの多彩な才能を見出し、ふさわしい環境を整えて育てていく。それがギフテッド教育の存在意義です。今回は、アメリカにおけるギフテッドの認定方法や教育内容を紹介するとともに、わが子の才能の見つけ方・育て方について解説します。

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アメリカのギフテッドはどのように認定される?

ギフテッドの選定は、5~6歳という早い時期から始まります。アメリカには全国の小中学生が毎年2回受ける「MAPテスト」というものがあり、キンダーガーテン(年長)の子どもたちも英語と算数のテストを受けます。

このテストで高い成績を収めると、ギフテッド選考試験を受ける権利を得ます。MAPテストで振るわなくても、担任から「この子には突出した才能がある」と推薦を受けるケースもありますし、なかには子どもの親が立候補してギフテッド選考試験にのぞむケースもあります。

ギフテッド選考試験では、子どもの認知能力や知能指数を測ります。試験の種類や数は地域によって異なり、私が子の学校では言語・非言語・数量・創造性の4科目の試験が行われました。すべての試験が終了すると結果が選考委員会に送られ、数か月後に合否が親に通知されます。

きめ細かいギフテッド対応プログラムの内容

ギフテッド・プログラムの内容は、全般的にペースが早く、内容もハイレベルです。同学年では習わないテーマを扱いますし、より深くまで掘り下げます。教師と生徒の間で活発なやり取りが行われ、小学1年生からディベート、プレゼンテーション、ジャーナル作成、時事問題などにも取り組みます。

この教育プログラムには、個人の得意な分野や学習ペースに合った内容や教材で進めるという、きめ細かな対応力もあります。ギフテッドと認定される才能は、知性や学問だけでなく、リーダーシップ、創造性、芸術性、運動能力など多岐にわたります。アートの才能がある子には美術系のプログラムを、数学が得意な子にはより難易度の高い数学プログラムを提供するといったやり方です。

実施方法は地域や学校で異なる

ギフテッド教育の実施方法については下記のようなものがあり、地域や学校によってそれぞれ異なります。

・プルアウト方式

普段は通常のクラスに在籍しつつ、定期的にギフテッドの子どもたちだけを集めて授業を行う方法。ニューヨークなどの大都市では、ギフテッドのみで構成された学校もあります。

・エンリッチメント方式

通常のクラスに在籍したまま、個別にギフテッドの子どものレベルにあった課題を出す方法。生徒数が少ない、予算が少ないといった学校でも柔軟に対応できます。

・アクセルレイト方式

上の学年に飛び級する方法。そのまま上級生と一緒に進学していくパターンと、本来の学年に在籍したまま特定の授業だけ上の学年のクラスに参加するパターンがあります。

わが子の場合は、通常のクラス内で指導を受けるエンリッチメント方式でした。この学校では全教師がギフテッド教育指導の資格を持っており、個別学習の時間帯にギフテッド専任の教師と担任からギフテッド教育を受ける形式がとられています。

わが子にも当てはまる? ギフテッドの特長とは

多くのギフテッドの子どもたちには、共通する特長があります。たいていの場合、好奇心が強く独創性に富んでいます。並外れた記憶力や理解力を持ち、新しい知識や技術を1~2回で習得する子も少なくありません。ただ、興味があることに対して高い集中力を発揮するあまり、周りの音が一切耳に入らなくなってしまう場合も多いです。

また、高い知能を持つからこそ、簡単な授業や単純作業にすぐ飽きてしまう、集中できない、興味のあること以外やりたがらない、協調性がないといった面もあります。友だちと遊ぶよりも大人と話すことを好み、ひとりでいることが気にならない子も多いです。

「うちの子は協調性がないから、学校生活が心配」と感じるなら、それは子どもの抜きん出た能力が原因かもしれません。困った性格と判断してしまう代わりに、「高い才能を持つ子にみられる特長」と捉えると、全く違う景色が見えてくるはずです。

親だからこそ気づけるわが子の才能と育て方

アメリカでは、MAPテストで高点数が取れなくても、先生の推薦がなくても、親が自分の子どもはギフテッドだと申告して選考試験を受け、認定されるケースがあります。このことから分かるように、自分の子どもの才能にいち早く気づけるのは、一番近くにいる親をおいてほかにありません。あなたの子どもがギフテッドである可能性もおおいにあるのです。

まず我が子が何に情熱を感じていて、何に夢中なのかを知りましょう。そして、子どもが興味を持っている世界をより広げるために、どのようなサポートができるかを検討してあげることです。

実体験できる場所に連れていったり、地図や図鑑を使ったり、方法はたくさんあります。パソコンの検索方法を教えれば、子どもが自分自身で知識を増やしていく手助けになるでしょう。

おわりに

ギフテッドの才能を伸ばすために親がすべきことは、「子どもに何かを教え込む」のではなく、「興味ある世界を思う存分探求できるツールを紹介し、サポートしてあげること」です。ぜひとも我が子の才能を見つけ、大きく育ててあげてください。

著者プロフィール

世界35か国在住の250名以上の女性リサーチャー・ライターのネットワーク(2019年4月時点)。
企業の海外におけるマーケティング活動(市場調査やプロモーション)をサポートしている。

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