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自尊感情とは?アメリカ式教育に学ぶ、高めるためのヒント【後編】

自尊感情とは?アメリカ式教育に学ぶ、高めるためのヒント【後編】

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日経DUAL記事

親自身が変われば子どもの自尊感情も自然に上がる

後編では、自尊心を高めるためにアメリカ人はどのように子育てをしているのか、また、下がってしまった自尊感情を無意識に上げていくことができるアメリカの環境のよさを紹介していきます。

生まれてから幼稚園に行くまでの間、つまり社会に属す前は、周囲が抑えつけない限り子どもはみんな自尊心が高いのです。初めてのことにも果敢に挑戦し、自信に満ち溢れています。

3歳くらいまでは、親も祖父母も子どもをほめて伸ばすからです。ただ、幼稚園や学校に属したり勉強を始めたりした途端に、自尊感情は低くなっていきます。親が子どもに周囲と同じようにできることを求めてしまったり、自分たち自身についてもほかの母親や父親と比較してしまったりしているからです。

自尊感情を高めるためにまず有効なのは、自尊感情の高い人の側に身を置き、行動をともにすることです。子どもを取り巻く大人たちやまわり人の自尊感情が高いと、相乗効果によって子どもの自尊感情は上がっていきます。

自尊感情は、アメリカでは高い人が多くそのスパイラルに入っているので自然と高まりますが、日本では低い人が多いため学校や社会、家庭環境で自然に高まっていくことは困難です。ではどうしたらよいのでしょうか?

答えは簡単です。親である自分が子どものために変わるのです。ほかの記事でもお伝えしていますが、よい子育てのためには親のほどよい心がけが必要です。親自身の自尊感情が上がっていくと、子どもの自尊感情も上がりやすくなります。

では、何を変えたらよいのでしょうか?

まずは、弱い自分もダメな自分も自分自身である、あるがままでいいと、受け入れることが大事だと思います。外見、性格、特技、長所・短所、病気、ハンディキャップなどをすべてひっくるめて自分であると受け止めることです。

苦手な部分やうまくいかないことがあっても、自分には逆に優れているところや得意とするところもあるので、そういったよい部分を生かしていこうと考えてみてください。人がなんと言おうと、「自分が好きで自分の人生を好きなように生きる」ことを目指すのです。

自尊感情を高めるためにおすすめしたい10項目

それでは、そのための手法を紹介しましょう。アメリカでは以下のシンプルな10項目を心がけることが推奨されていますが、自尊感情が低くなってしまっている人が一人で続けるには難しいかもしれません。

まずはできそうな項目だけでも実行してみることが、自分に挑戦する大事な手法な一つです。

1. Stop comparing yourself to others(人と比べるのをやめる)

最近はSNSで人と比べてしまう人が増えているのではないでしょうか?思い切ってSNSを絶つのも手で、自分と他人を比較することやめましょう。

2. Compliment yourself regularly(日常的に自分をほめる)

自分をほめる日記を毎日つけてみて1週間したら読み返し、その後も1ヶ月後、1年後など節目節目で読み返します。1人で継続できない場合は家族や恋人、友だちと見せ合うなどして続けるのも効果的です。

3. Exercise consistently (継続的な運動をする)

歩く、走るなどの有酸素運動がよいとされています。これも1人での継続が難しい場合、サークルやコミュニティに属すのも一つの手法です。

4. Get the support you need to succeed(成功するために必要なサポートを得る)

良好な交友関係を築きましょう。家族、友人、同じ楽しさを分かち合える仲間との適度な距離感が大事です。人数が多い必要はありません。本当に困ったとき、助けてくれる友だちがいますか?助けたいと思える友だちがいますか?

5. Focus on your accomplishments(何事も成し遂げ完成させる)

何かを始めたら、最後まで頑張ってみてください。「成功した!」という気持ちは自尊心につながります。

6. Simply smile (笑顔で)

ともかく笑顔が大事ということで、とくに面白くないときでも自分から笑顔を作って人と接することが大切です。

7. Make a list of all your qualities(自分の特性や特徴をリストアップする)

自分が得意なことや苦手なことは何か、どのようなタイプの人間かなど、自分のことをよく知るためにまずは自己分析をしてみましょう。短所を思いついたら、今までとは別の視点で見直しよい方へ別解釈をするreframing(リフレーミング)をします。

たとえば「優柔不断」ならば「慎重に物事を考えて選ぶ」に、「はっきりと物を言いすぎる」は「自分に素直で正直」に、「あきっぽい」は「好奇心旺盛で気持ちの切り替えが早い」に、「臆病」は「繊細で人の気持ちを察することができる」というように、短所も長所へと言い換えて認識します。

子どもの短所に関しても、ネガティブな言葉からポジティブな言葉へと置き換えます。

8. Eat better, Sleep well(よく食べ、よく眠る)

よく食べ、よく眠ることはとても大切。食事・睡眠は人間の生活の基本といえます。

9. Explore a passion(情熱を探求する)

自分の好きなこと、得意なこと、長所は何かということを追求します。今やりたいことなど、自分の情熱についても探求してみてください。

10. Treat yourself something nice(自分を大切に扱う)

自分の心に素直に生きるようにしましょう。相手優先の人生を送っている人には難しいかもしれませんが、まずは1日のなかで自分のために使っている時間と、家族や人のために使っている時間を書き出してみます。

自分の時間がなかったり少なすぎたりした人は、その生活を見直し、自分ために使う時間や自分が楽しむ時間を少し増やしてみてください。

この10項目を実行して自分の自尊感情を上げていくと、子どもやパートナーへの接し方も変化していきます。子どもは親の鏡です。親が変われば子も変わる。家族の意識が変われば、接しているまわりの人も変わっていくかもしれません。

ほめられることが自尊心アップのカギ

最後になりましたが、社会的自己肯定感を通じて自尊感情を上げる方法として、「成功体験」があります。

アメリカの子どもたちは、学校や習い事でよくトロフィーやメダルをもらいます。1番から3番などの順位を決める賞だけでなく、最後までちゃんと通ったという頑張りに対する賞もあり、子どもたち全員が何かの賞をもらえるようになっています。

順番だけでなく、最後までやり遂げることの大切さや頑張りを讃える賞を与えることにより、ほめられるということを形で表して成功体験を感じてもらうのです。

さらに日常的なことでいえば、アメリカではほんの5分程度でできる親切を進んで行なうこともよいと心理学的にも考えられています。次の人のためにドアを開けてあげたり、先に譲ったり、階段でベビーカーを運ぶのを手伝っている風景をよく見かけます。

これは恩を着せるような大げさなものではなく、ごく短時間でできる親切です。見返りを求めて手伝っているわけではありませんが、最後に感謝の言葉をかけられることで自尊心もアップします。

ほめ言葉を素直に受け取ることも大切です。ほめられ慣れていない日本人には、誰かにほめられると恥じらいから謙遜する文化が根付いています。ほめられた子どもの前で謙遜するのは控えてください。これを繰り返されると、子どもの自尊心は下がってしまいます。

アメリカ人はほめられたら笑顔で、「嬉しい!」「ありがとう!」などの言葉を発します。それにより自分の自尊感情が上がり、ほめた相手の自尊心も高まるので、高い相乗効果が生まれるのです。

いかがでしたか?一見、難しそうにも思えますが、子どものため、自分のため、日本社会の未来のためにも、まずは自分を変えるところから、ぜひ挑戦してみてくださいね!

【参考URL】
10 Ways to Boost Your Self-Esteem

著者プロフィール

世界35カ国に在住の200名以上のリサーチャー・ライターのネットワークをもち(2017年12月時点)、企業の海外での市場調査やプロモーションをサポートしている。

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