知っているようで、知らない!ほめると子どもはなぜ伸びるのか

知っているようで、知らない!ほめると子どもはなぜ伸びるのか

「子どもはほめると伸びる」とよく言われます。それもあり、ほめることを積極的に取り入れているご家庭も多いと思います。では、それがなぜなのかと聞かれたらどうでしょうか? 意外と知らない「ほめると伸びる」のカラクリについて、心理学を使ってわかりやすく説明していきます。

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ほめるとやる気スイッチが入る…でもどうして?

「ほめると伸びる」は、常識といってもいいくらいよく知られています。では「どうして伸びるのか?」と聞かれたら、その理由は何なのでしょうか。

・ほめられると嬉しいから?
・やる気スイッチが入るから?
・ポジティブな気持ちになるから?
・自己肯定感とか、自己効力感とか?

どれも合っています。ただ、”やる気スイッチ“なるものは、体のどこかについているボタンではなく、みんながなんとなく「ありそうだ」と感じている架空のスイッチです。そのため、親も手探り状態で、ある時は上手くいったのに、別のときはダメだったというようなことが起こります。

そこで今回は、巷で言われている「ほめると伸びる」の原理を子育て心理学を使って解説し、論理的に「ほめ伸ばし」を理解していきたいと思います。

ほめると伸びるカラクリは“強化の階段”

何かが伸びるという現象を表すのに最適なのがグラフです。身近なところでは子どもの身長や体重。赤ちゃん時代からの伸びは、折れ線グラフを用いると見やすいですよね。グラフ上では、パッと見たときの全体像が右肩上がりだと“伸びている”ということになります。

「ほめると伸びる」も同じで、子どものある行動を右肩上がりに伸ばしていくことを指します。正しくは、右上に伸びている階段を上っていくイメージです。

この階段の1段1段で、心理学でいう「強化」という現象を起こせると、その子は伸びていきます。その1つ1つの強化を起こすきっかけが「ほめ」です。これが俗に言う「ほめると伸びる」というしくみです。

詳しく見ていきましょう。

心理学では、自分が取った行動に対し、良いことが付随すると、その行動は繰り返されやすいことがわかっています。逆に、何かやって嫌な結果がくっついてきたら、その行動は減っていきます。何がおまけについてくるかでその行動が増減する現象、これはイメージしやすいのではないでしょうか。

簡単な図式にするとこうなります。

ある行動
 ↓
良いことが起こる
 ↓
次も繰り返す

このようなカラクリで結果として行動が増えたら、「正の強化が起こった」と心理学では言います。「ほめると伸びる」のカラクリでは、この良いこと部分=ほめになります。お子さんが取った行動に対し、しっかりとほめることで、次も繰り返す導線を作れるというわけです。

ほめているのに伸びないときはここをチェック

「いやいや、うちの子、ほめているのにちっとも伸びないんです」ということも聞きます。この場合、伸ばそう伸ばそうと先を急ぎ過ぎてしまうことが失敗の要因であることが多いです。

普通は、階段は1段1段上がるものです。がんばってもせいぜい1段ぬかしです。だれもいきなり1階から2階へ1歩で上がることはできません。それにもかかわらず、子育ての場面では、スーパージャンプを要求してしまっていることが多々あり、それがほめても伸びない、引いては、「うちの子、ほめるところがない」という要因になっていることが多いのです。

もし「ほめても伸びない」と感じていたら、子どもに促しているものが、スーパージャンプではないか、この点をチェックしてみましょう。

ほめ伸ばしの階段の作り方

ほめて伸ばすには、“強化の階段”を作ることがカギになります

たとえば、家での勉強やピアノの練習などの学びの習慣を身につけてほしいというとき。今現在、5分ならできるという子に、いきなり「1時間集中!」と課しても、脱線するのは目に見えていて、ほめるチャンスも得られずに、しまいには親子げんかに至るでしょう。

今の段階でどこまでならできるか、ここを起点として、「ほんの一段だけ上がったところ」を目標値にします。「ママと一緒に座って10分」のようなくらいです。そしてそれができたらほめる、次の日もできたらほめる……これを繰り返すことで、なんとか10分練習したり勉強したりする習慣が身につきます。そこでようやく次の新たな1段を設定できるのです。

「途方もない道のりだわ~」と思う方もいるかもしれません。でも、いきなり理想形を要求して脱線し、大声で怒鳴って自信をなくさせるよりも、結果的には早道です。

ほめて伸ばすのはちょっとしたコツが必要

なお、今回ご紹介した強化という現象は、起こしやすさの点で、あるコツがあります。それはほめるタイミングです。強化というのはタイミングが命で、つまり、お子さんが取った行動の直後にほめることがカギになります。なので、「あとでしっかりほめてあげよう」では強化としては起こりにくいのです。

今回は、「ほめて伸ばす」についての心理学をお伝えしましたが、もちろんほめは強化を起こすためだけに用いられるのではありません。ママの嬉しい気持ちを伝えたり、親子のポジティブなコミュニケーションや笑顔を増やしたりと日々の育児を明るくしてくれる円滑材でもあります。育児の様々な場面で用いることで、子どもたちはさらに大きく伸びていってくれるでしょう。

著者プロフィール

育児相談室「ポジカフェ」主宰&ポジ育ラボ代表
イギリス・レスター大学大学院修士号(MSc)取得。オランダ心理学会(NIP)認定心理士。ポジ育ラボでのママ向け講座、育児相談室でのカウンセリング、メディアや企業への執筆活動などを通じ、子育て心理学でママをサポート。2020年11月に、ママが自分の心のケアを学べる場「ポジ育クラブ」をスタート。著書に「子育て心理学のプロが教える輝くママの習慣」など。HP:megumi-sato.com

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